第34話 兄弟は潜入の機会を窺う。
前の更新から遅くなりました。
最近は書くよりも読む方に生活がシフトしていました。
なろう系の作品は面白いものが多いですね。
34話ごゆっくりどうぞ。
夜になった。
アレンとヘイマンは支度を終えて今出るところだ。
「それじゃ行ってくるね。」
「もし敵が来たら逃げるんだぞ。」
アレンとヘイマンが私たちへと心配の声をかける。
「もちろんよ。アレンこそ気をつけて。細心の注意を払ってほしい。」
「あぁ。全力で生き抜くさ。」
アレンはいつも通り不敵に笑った。
「あ、わすれもの。」
唐突にスヴィンがアレンに物を渡す。
「おまもり。あーちゃんよわいから。」
笑顔でたどたどしく渡すスヴィン。
「ありがとうスー。…て重いなこれ。腹に当てる防具みたいだ。動きにくいぞこれ。」
率直な感想を吐露するとスーの瞳がたちまち潤ってくる。
「アレン、これは幸せの重さだよ。つべこべ言わない。」
ヘイマンが素早くフォローする。
「いやでも盗みで動き回る時に邪…」
「行ってきまーす!!!」
アレンが言い終わらないヘイマンがアレンを引っ張って出て行った。
…なんてさっぱりしたさよならだろう。
部屋が静かになった。
私たちはなにもすることがない。
2人は大丈夫だろうか。
行ってからしばらくスヴィンは静かになった。
スヴィンは大好きなヘイマンが居なくなった代わりに部屋を見回し、新しいおもちゃを見つけた。
それは…
「スーとあそぼ〜。」
…オリバーが捕まった。
オリバーは分かりやすく嫌そうな顔をしている。
私は小さい2人を見守りながら、アレンたちの無事を願う。
~~~~~~~~~~~
夜領館前に、時間通りに到着した。
僕とアレンが潜入することになり、今これから潜入する機会を窺っていた。
領館の規模でいうと四方に広がった建物で領主だと一般的な造りになる。
大きさでいうと縦横40メートルくらいはありそうな規模に、高さの階数でいうと3階ほど。
お金持ちほど高いところを好むっていうけどここの領館はそこまでの高さはない。実は庶民よりの感覚をお持ちなのかもしれない。
今回は裏からではなく門から侵入することになった。
泥棒が表から入るとかありえない考えだけど、裏口には番犬が複数居座っていた。
人間と違って犬は嗅覚に優れるので、痕跡が残ってしまう。それよりも油断している人間の方が脅威は少ない。そういう算段だ。
正門に門番が2人駐在している。
1人は立って辺りを警戒し、1人は簡易的な椅子で座りうたた寝をしている。
1人ずつ交代で見張りをしているのが分かる。
しかし見張りの表情に緊張感は無い。
片方はがっつり寝ているがもう1人もフラフラとおぼつかない様子だ。
「これは潜入が楽そうだな。偵察の時となんら変わりない。行こう兄貴。」
「うん、手早く済まそう。」
僕たちは門番が見ている方へと分かりやすく進む。
門に沿って背が低い木々が等間隔に並ぶ。
僕たちはこの木々に身を潜めながらゆっくりと近づいていく。
「流石に金を持っているだけあって綺麗に整えてあるな。」
「そうだね。他に隠れる所が限定される。」
僕たちはこの屋敷に忍び込む前に大まかな作戦を話した。
それは極略戦闘を避けるというものだ。
潜入するのにどんぱちしてはいけない。
潜入とはそこに潜入したことを悟られてはいけないのだ。
そしてゲルダの予知にあった通りアレンは戦闘が起こると絶命するかもしれないのもあるけど、なんて言ってもリスクヘッジだ。
僕たちはゆっくりと気配を殺して近づく。
門番の視界に入らないようにゆっくりと後ろへと回り込む。
今は慣れたように出来るけど、以前はこんなスムーズに出来るイメージはなかった。
僕が先にアレンより回り込み門番の後ろへとたどり着く。
そしてアレンへと視線を一瞥する。
「(どうする?)」
とアレンへとアイコンタクトを取るとアレンからハンドサインが示される。
アレンから口を押さえるようなハンドサインを送ってくる。
アレンの確実性を高めるところが分かる良い指示だ。
僕は後ろのポケットに入っていたハンカチを取り出す。
そのハンカチはここにくる前に部屋でクロロホルムを染み込ませたものだ。
アレンは僕に指示をしてすぐに動き出し、寝ている門番の椅子の後ろにあっさりと回り込み、同じものを取り出す。
そして、
「せーのっ」
僕の合図で目の前の門番は微動するがもう遅い。
敵にハンカチをしっかり当てて意識を持っていく。
アレンは思いっきりハンカチを寝ている門番へと押し付ける。
少ししたら2人は大人しくなり崩れ落ちる。
「ふぅ。」
僕は緊張を少し緩ませる。
「兄貴は慣れているな。横でやっているのを見るとおれよりも余裕があるように感じる。」
アレンが率直な感想をぶつけてくる。
「え?いや優しくしないと力あまって顔が潰れるかもしれないから加減しているんだよ。」
「物騒なことを言ってて怖いんだが。頼むからおれを抱き締めようなんて思わないでくれよ。」
「お望みならすぐ叶えてあげるのに。」
僕は分かりやすく残念そうな表情を浮かべるとそっぽを向かれた。
さて、門番を制圧したので門を開ける…いや開かない。
門を登っていこうかと考えたが、それを予測しているのか門の上には鋭利な返しがついており、僕の身体が裂けることが容易に想像出来た。おそろしい。
「こじ開ける?どうする?」
「一度鍵を探そう。こいつらが持っているかもしれない。」
アレンは言いながら慣れた手つきで門番の身体をチェックする。するとジャラジャラと鍵束を見つけた。
「ビンゴだ。いくつか鍵があるから中にでも使えるかもしれない。」
束の鍵をいくつか試してみると、鍵の施錠が解除される音が聞こえた。
さて、いよいよ潜入する。
どうか今回も上手くいきますように。




