第29話 末っ子は少女に耳打ちする。
ヘイマンたちにそっくりな顔の少年が立っている。
その少年は首元にマフラーを巻いていた。
見た目は私より小さいが目つきは鋭く冷淡に私を見ている。
「お前…スーか。」
アレンが口を開く。
恐らく兄弟なのだろう。しかしアレンの銃口はそのままに彼へと標準を合わせたままだった。
「このひと、なに?やっとにぃちゃんみつけたのに。」
少年もといスー君が私へと分かりやすく悪態を吐く。
「なんだ。スーじゃん。」
ヘイマンが肩の力を落として彼に近寄る。
しかしスー君の手には鋭利なナイフが握ったまま。
「…ヘイマン危ない!!!」
私はヘイマンへと注意を呼びかけるがヘイマンは全く動じること無くそのまま彼へと近づく。
ヘイマンが彼へと手を伸ばす。
ヘイマンは暴力でも叱責でも無く、ただ彼の頭へと手を乗せる。
「久しぶりだねスー。見ないうちに背が伸びたね。会えて嬉しいよ。」
そう言われて、スー君は目に涙を浮かべてヘイマンに抱きついた。
「やっとあえてうれしい。にぃさんたちをさがしてた。」
張り詰めていた緊張が一気に弛緩した。その様子を見ていたアレンも拳銃を収める。
「流石兄貴だ。おれには真似出来ない。」
ヘイマンは続ける。
「僕ら2人を見つけるために苦労したんだろうね。見知らぬお姉さんが居たから驚いたんだね。大丈夫だよ、この人は僕らの仲間だから。」
「そぅなの?」
「うん。だからさっきゲルダに傷つけたことを謝るんだよ。」
ヘイマンは泣きついているスー君から私へと促す。
「さっきは、ごめんなさい。おねーさん。」
涙を流しながら私へと謝る。
私はまだ腰を地面につけたままだった。
「いえ…。驚いたけど傷は浅いから平気よ。」
私は彼へと笑ってみせる。
「私はゲルダ。ヘイマンたちと行動している仲間よ。」
「スーはスヴィン。スヴィンっていうよ。」
スヴィンは私へと手を差し出してくる。
私は少し腰をかがめて手を握り返した。
「スーは僕ら兄弟の末っ子さ。だからスー。覚えやすいでしょ。」
確かに。
なんて覚えやすい。
「しかし驚いたな。なぜここにスーが居るのか聞きたいことはあるが、無事に会えて良かったぞ。」
アレンも同調して彼へと近づく。
先ほどの空気が無かったように3人が再会を喜んでいる。
その様子を見ているとスヴィンが私に近寄ってきた。
ニッコリと微笑んで、私に耳元へ囁く。
「いい?にぃさんたちはみとめたけど、スーはみとめない。」
「っ!!!!」
私は見た目にそぐわない発言をするスヴィンに驚く。
しかし彼は笑顔のまま口元に指を立て「喋るな」の合図をする。そのまま後ろのヘイマンたちに戻っていく。
私は感情の整理が追いついていないが1つ分かったのがある。
スヴィンは2人の兄弟。
この腹黒さはどちらに似たのか。
そして私たちは宿へと戻った。
これで末っ子も揃いました。
ここから物語も盛り上がります。
スヴィンの会話の表現をひらがなに修正してます。




