第24話 少女は奴隷商人と出会う。
1週間ぶりの投稿です。
今回1番長いです。
山道を走っていたのは私たちだけではなかった。後ろから奴隷を乗せた馬車が走ってきた。奴隷は若い少女や子供が大半だった。
「こりゃ驚いた。あんた、奴隷商か!!」
おじさんが馬を扱いながら目線を後ろに向ける。
おじさんはしっかりと前を向いて操縦してほしい。
奴隷商の男も応じる。
「急に後ろから飛ばして驚かせましたか?これは失礼。私は急がなきゃならなくて。あなたも奴隷商ですかね?」
奴隷商の目線がおじさんから私に注目している。人を見つめているというより商品を見定めている。そのような視線を感じた。
「ほぅ。中々の上玉をお持ちのようだ。」
ポツリと評価を下す。
凄く不快な気持ちになる。
心が冷え切っていくような乖離した気持ちに。
おじさんが狼狽えている声が遠くから聞こえる。
横目にはアレンが寝ている。
奴隷商は馬に騎乗しながらも、スッと手を出して私へと触れようとする。
「おっと、この子は売らないよ。」
見兼ねたヘイマンが横に手を出して奴隷商の目線から私を阻めてくれる。
「"人の所有物には手を触れるな"。商人ならよく理解してると思うけど?」
奴隷商はヘイマンの言葉を聞いて冷笑する。
「そうですね。私としたことが。あなたたちに神のご加護があらんことを。」
奴隷商はそれだけ言うとさらに加速させて私たちの前から見えなくなった。
去り際に荷台の中の奴隷少女が私たちを最後までずっと見ていた。
その奴隷すら私たちから見えなくなってヘイマンが話す。
「…居なくなった。ごめんね。モノなんて言い方して。」
ヘイマンがごめんのポーズをして私へと謝る。
「ううん。ちょっと怖かった。ありがとう。」
私は素直に謝辞を述べる。
ヘイマンはパワーがあって頼り甲斐があるけど、しっかりと対話できる度胸もあって見直した。
「何か重なるものでもあった?」
ヘイマンが何かを察したのか聞いてくる。
「…ちょっとだけ。でも私が何か出来るわけじゃ無いから。」
私は呟く。
ヘイマンはそれを聞いてただ頷く。
普段優しい瞳で話すヘイマンから憂うような目に変わっていたのを私は見逃さなかった。
「心配してくれてありがとう。でももう平気。ヘイマンが悲しまないで。」
「…!!逆に気を遣われちゃったね。ううん、僕の方こそ。不安があったら気兼ねなく話して欲しい。」
ヘイマンは優しいな。
「う…疲れた。…なんでお前ら良い雰囲気になってるの?」
横からアレンが気だるい声と共に起きる。
「ううん。アレンって肝心な時に頼れないなって思っただけ。」
「なっ…。普段頭使ってるから疲れて休息をとってたんだよ!!」
「はいはい。うるさくしてオリバー起こさないでね。」
「このっ…!!好き放題言いやがって!!」
雰囲気が緩み3人で笑い合う。
こんなに笑って過ごしたのはいつ以来だろう。
私たちは下山のひとときを過ごした。
~~~~~~~~~
降りる頃にはすっかり暗くなっていた。
そのまま直ぐに街へと入る。
私達は手頃な宿へと泊まることにした。
おじさんは私たちとは別の場所で泊まるらしい。
「飯でも食いに行くか。」
宿に荷物を置いてから、アレンが提案する。
長いこと馬車に揺られて身体は疲れているが、お腹も空いていた。
私とヘイマンはすぐに了承して食堂へと向かった。
程なくして食堂へと入る。
店内は騒がしく、多くの人が飲み明かしてる。
店員に案内されるがアレンが端の方へと希望したので、私たちは端の方へと通された。
メニューを見たが私はよく分からないものばかりだったのでアレンたちに任せた。
少し待ってると、料理が運ばれてきた。
新鮮なポテトサラダとガーリックの香りが引き立つ鶏肉の照り焼き、さらにコンソメ風のあったかい野菜スープまで出てきた。
私は見たこともない料理に目を丸くする。ヘイマンが説明してくれるが全然頭に入ってこない。
「え、こんなにたくさんもあって高そう…。大丈夫なの?」
私は素直に心配するが、
「前に盗んだ金がまだある。人の金で飯を食うのは美味いぞ。」
道徳的に酷いことを言っているのは分かるけど、私は遠慮なく肉から食べ始めた。
「…!!!!なにこれっ……!!!!」
とても衝撃を受けた。口の中に今まで食べたことのないような風味が広がる。
鶏肉は十分に美味しいが、ガーリックがより旨さを際立たせている。
私の感激している様子を見て2人は笑う。
ヘイマンはニコニコと、アレンはニタニタと笑う。
「場違いな私が食べて悪い?」
私はお腹が空いていたこともあって皮肉を言う。
「そうじゃなくて、そんなに美味しそうに食べるからさ。連れてきてよかったよ。」
私の言葉を聞いて勘違いされたと思ったのかヘイマンが訂正する。
「…それならいいんだけど。」
ヘイマンがフォローしてくれるがアレンは変わらずに笑っている。
絶対私を馬鹿にしている。
オリバーには食べやすい粥を、私が掬って食べさせる。意識ははっきりしないが、食べ物を含んで一瞬目が潤んだ気がした。
気のせいだろうか。
「アレン、街に来たけど次はどうするつもり?」
私は食事が少し落ち着いたので思っていたことを口にする。
「そうだな。山を抜けてポルタットに着いたから、明日にでもオリバーを診てもらおう。様子を見て馬車のおじさんに後を見てもらうように説得したい。」
「説得…。私たちが今後彼を看病するのは難しいかしら?」
私はダメ元で聞いてみる。仮にも私達を救ってくれた人だ。
「ゲルダ。もう理解していると思うがおれたちは犯罪者の泥棒だ。望んでもないのに理性を失っておれたちの影響で保護も受けられないとなったら、オリバーは不憫じゃないか?」
アレンは私へと説得する。
もしかしたら説き伏せているのかもしれないが、私はそう思いたかった。
反論できる材料も無く私は頷く。
そのままに食事が終わり、私たちは宿をあとにした。
アレンはやることがあるからと言って別々に帰ることになった。
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