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第21話 少女たちは提案をする。

去年以来の投稿です。皆さまお久しぶりです。年始早々ウィルス性胃腸炎&インフルにかかってお休みしていました。

皆さまも体調にはお気をつけてください。




「取り逃がしました。」

私は報告を部下から受けた。

全く、本当に無能な奴しかいない。


私は静かに叱責して、部下に指示を出して退席させる。一度頭に上った血を落ち着かせるために席に腰を下ろす。


紅茶を淹れて、書斎の中にフルーツティーの香りを充満させる。

領主のトップとなると自由な時間なんて無い。

若い頃はもっと外へ出ていた。

今だと内に篭ってばかりだ。

だからその現状を変えるために巫女を捕まえていたのに、この様だ。


神の寵愛を受けた者の力を使って私の生活をもっとより良くする。

その矢先に賊に盗られる。

さらに追い掛けても全滅。

これ程の失態はあってはならない。

落ち着いてきたら過去の怒りが頭をよぎってきた。


「茶葉の香りが薄くなってきたな。」

私は独りごち、紅茶を淹れなおす。

しかし外の香りが僅かに入っていることに気づく。

締め忘れていたのかと思い窓へ視線を向けると男が立っていた。

「…お前は!!!」


私は全く見覚えがない男と対峙する。

男の身なりはやつれていた。

私は机から小型の拳銃を取り出しそいつに向ける。

「…ふふ。」

そいつは警戒心も無さそうな笑顔を私へと振りまき、歩き出す。


何か仕掛けてくる前に私は発砲する。

当たった手応えはあったが私の想像してた音と違った。

そいつは自らの鋭利な剣を斜めに構えて銃弾を割るように防いだ。


そのまま大振りに私へと叩きつける。

私は恐ろしくなり逃げ出そうと背を向ける。

しかし、思うように動かない。

足元を見てみるとブーツに氷が纏い床から外れないようになっていた。

全く気付いていなかった。


得体も知れない鋭い痛みが私の身体を走る。痛みを感じる前に、視界が逆転する。

そして見えるのは普段使っていた部屋の床。

聞き慣れない会話が耳に入る。


「あんたが暴走して切り刻まなくて良かったわ。」

「えー酷いなぁ。でも君が止めてくれるでしょう?」

男と話してる相手は女のようだ。

段々と私の視界が暗くなる。


「目的は強盗にやられたように。金目の物もきっちり持ってく。」

「うん。分かってる。我が旅団はいつだって財政が圧迫してる。」

「依頼主に頼まれただけで潤わないからね。さ、仕事にかかろう。」


あぁ。呆気ないものだ。

私の視界はついに暗転した。



~~~~~~~~同じ時、山のロッジにて~~~~~


私たちはおじさんの話を聞いていた。

話しによると、オリバーは農民で、採れた農作物をこのおじさんへと渡して出荷するようだった。


「おれが最後にオリバーを見たのは1ヶ月くらい前だ。そこから途端に納期があったのに姿が見えねぇ。根が素直だからおかしいとは思ってたんだ。」

「そうだったんですね。彼はどうやら最近捕まったみたいなので恐らくそのタイミングと合うかと思います。」


私はおじさんの話に同調する。

オリバーは今意識こそしっかりはしていないが、こうやって彼を知っている第三者から話を聞くことで私たちも素性が分かりやすくなった。

そこにシャワーを浴びて髪が濡れたヘイマンが現れた。

「あぁースッキリした。」

満足そうに私たちが囲って座っている席へと着席する。

ヘイマンとおじさんは初対面だが、ヘイマンは普段通りのアレンへと一瞥して、害意が無いことを悟ったのかリラックスした雰囲気を纏った。


「この山を南に下って行くと、別の街がある。そこに行こうと思う。いいか兄貴?」

アレンがヘイマンへと尋ねる。


「いいけど、その彼はどうする?意識がはっきりしてないのに同行は歩くペースを遅めるよ。」

ヘイマンが分かりやすく足手まといな扱いをした。

当然おじさんは眉をひそめて怪訝な顔をした。


「心配いらない。山を降りるまでこのおっちゃんへと頼む。そして街で医者に診てもらう。」

アレンは私に相談も無しに話を進めていく。そもそもまだおじさんへと下山することすら本人へと話してない。


「おっちゃん、馬を従えてるだろ。そのゴツゴツした手にマメがある。普段から馬車に乗ってないと出来ない。この山に荷物を届けに来たのなら帰りは軽いだろう。ついでに乗せて行ってくれよ。おっちゃんもオリバーに無理に歩かせることは酷だと分かるはずだ。」


アレンはまたお得意の千里眼のような分析で相手のこと見定める。

おじさんは決め兼ねているのか唸っている。


「悩んでいるのか。万が一敵襲があったらおれたちで撃退する。双方にとって利益しかない。どうだ?」


アレンはさらに譲歩として提案をする。

敵襲?が山道にあるのかどうか私には分からないがここまでの道敵襲しか無かった。

1人より複数の方が安全なのを私は理解している。


おじさんはやっと利用されていないことを察したのか、表情が明るくなる。

「全く。見ず知らずの奴ならここまでしないが顔見知りがピンチとなったら協力しないわけにはいかねぇ。提案に乗ってやる。」


かくして私たちのいっときの脚が見つかった。



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