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第18話 少女たちは危機を脱する。




ステッキを叩いてからすぐに地響きが聞こえた。

視界が暗転して砂埃が舞っているのか若干の息苦しさを感じる。


その体感も束の間、地響きが途絶え静かになる。

私は恐る恐る目を開けると景色が変わっていた。


「ここは…??」

目の前には遠くの街が見える。

「…うわ、土付いてる。最悪。」


振り返ると、後ろからヘイマンが身体の砂を払いながら喋る。

「急なことだったが上手くいったみたいだな。お手柄だゲルダ。」

遅れてアレンが私へと喋る。

ヘイマンとアレン、奴隷の男と金髪の男が所狭しと居た。


「これって…?」

「ゲルダが男を癒してくれたお陰でここまで脱出出来た。急だったがよく対応出来たな。」

アレンが素直に褒める。

私の行動でみんなの窮地を救えたのか。

裏の性格を知っているアレンに褒められるのはなんだかこそばゆい。


しかし、私はアレンの側に倒れている金髪の男を見て我に帰った。

私は金髪男の元に寄って脈を測る。もう冷たくなっていた。

「…ダメみたい。」

私は首を横に振った。


「…試しにそいつにさっきの呪文?唱えてなんとかできないか?」

アレンが私に聞く。

表情が険しいので本人もダメ元で聞いているのだろう。

「…うん、分かった。やってみる。」

私はさっき唱えた口上を述べる。

しかし先ほどの輝きを纏うことは無かった。


「なるほど…。死者には通じないのか。時間の素早さが大事になるんだな。」

アレンは納得した表情になっている。

私自身も詳しく分からないが恐らくそういうことだろうと察しはついた。


「…ありがとう。」

彼の機転でここまで無事だったのだ。

私はその一点に感謝を述べた。

そんな時、奴隷の男が目を醒ました。

しかし表情に覇気がない。


「気がついたようだな。状況が分かるか?」

アレンが腰を落として目線を合わせて尋ねる。

しかし奴隷の男の耳には届いていないようで呆気にとられている。


「こいつ何かされたな。おい、名前を言え。」

男は口をパクパクと動かす。

そしてやっと出てきたのは一言だった。


「…お、オリバー…。」

相変わらずどこを見つめているのか分からない視線だがしっかり答えた。


「まだ制限の名残が残っているみたいだな。単純な受け答えしか出来ないじゃないか。」

アレンはやれやれとポーズをとり、質問を諦めた。

「どう思う兄貴?」


話をヘイマンに振る。

振り返ってヘイマンを見てみると、血走った目で身体の砂を一心に払い続けておりアレンの話を聞いていなかった。


今までのヘイマンを知っているからこそ、普段と違う雰囲気に私はたじろいだ。

「とりあえず、泊まれるところを探すか。シャワーを浴びよう。」


アレンも察したようで、私たちは進み始める。



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