第10話 兄弟たちは動き出す。
連日の投稿になりますが、本日分アップします!
毎日見てくださる方ありがとうございます!
私たちが夜眠る前に領館では
慌ただしく準備がされていた。
書斎にノックが響く。
「失礼します。例の人物をお連れしました。」
「通せ。」
扉が音も無く開く。領主の前に1人の若い男が立つ。
「あなたがここの領主、フェルナンド様ですか。お初お目にかかります。」
男はニヤニヤと笑う。機嫌をとるような笑みにしてはひどく不気味だった。
「そうだ。お前を呼び出したのは他でもない。
神託の子が賊に盗られた。多少無理をしてでも取り返して欲しい。
賊はアスパルへ向かったと部下が情報を伝えている。直ちに向かって欲しい。」
男は立膝をつけて頭を垂れた。
「仰せのままに。して報酬は?」
男は自分の仕事がこれに見合うのか額で決める。
最近は稼ぎがそこまで少なく。
ここで足元を見られるような値踏みをされるようなら仕事を放り出そうと考えていた。
「そうだな。報酬はこの屋敷の倉庫の5分の1ほどやろう。金塊から金貨まであるから選びたい放題だぞ。」
領主は報酬にかなりの色をつける。
それほどこの任務に重要性を見出していた。
しかしこの男はもう報酬を貰えるものと思い、浮き足立っていた。
「かしこまりました。報酬も十分でございます。敵襲をかけるのは、今から向かうのと人員を集めるので、朝方になるかと。」
男が言う。
「分かった。タイミングはお前に任せる。必ず奪還しろ。」
「かしこまりました。」
男はそれだけいうと部屋を立ち去った。
~~~~~~~~~
朝になった。
厳密にはまだ薄暗かった。
寝ているところをアレンに起こされる。
私はまだ朝になる前とあって微睡んでいた。
しかし2人はもう準備に取り掛かかっていた。
「敵さんは朝早いぞ。早く準備しなきゃ踏み込まれる。急げよ。」
アレンにせっつかれる。
私は一通りの身支度を済ませる。するとヘイマンから小さい固形物を渡される。
「これは…?」
「携帯食料。味は普通だけど、栄養価はあるみたい。何か口にしなよ。」
そう言われて一口食べてみる。…うん、確かに美味しいかと言われたら首を横に振るが、なにも食べないよりはいいかもしれない。
「今朝は何か視えたの?」
ヘイマンが私に聞いてくる。
「今朝は…ううん。特には。」
私は正直に話す。アレンが感情を読み取れるのなら嘘を言わない方が得策だ。
「そっか。分かったら教えてね。」
ヘイマンはニコリと微笑む。どうして兄と弟、似ているようでこんなに性格が違うのだろう。
アレンの方がもっとトゲトゲしい。
「問題は、ゲルダが囲まれていた状況はこれから確定した未来なのか、可能性の範囲内なのかがわからないことだ。」
アレンが荷物にある拳銃を手入れしながら喋る。
「以前から能力は使用していたんだろう?その時はどうだったんだ?」
私は過去に使ったことを思い出しながら話す。
「前は屋敷に篭ってばかりだったから、変わらない日常しか出て来なかったわ。あなたたちが来るのなんて知らなかったもの。」
「そうか。何にせよ敵はもうすぐ迫って来ている。早く出るぞ。」
私たちは宿屋の表玄関ではなく裏手へ向かう。
準備を終えてヘイマンを先頭に、真ん中に私、後方にアレンが列をなす。
ヘイマンが裏手の扉をそっと開ける。ヘイマンは外を窺うがOKのサインを出して先に外へ出る。
外へ出ると、宿屋の他に店が乱立しており裏の細道を通って出る手はずだ。
話ではここを突き進むと小さな広場があり、そこから馬を借りて行って移動すると聞いている。
私たちは細道を抜けられるまであと数10メートルというところまで急いだ。そしてその矢先、前方に影が見えた。
「止まって!!!」
ヘイマンが大きく声を出す。
すると前側から鎧を着た兵士たちがこちらを窺っていた。
みんな赤いシンボルのような形に細工が施された頑丈な鎧を着ている。
「待ち伏せか。それもこの細道でとは。」
アレンが睨みを効かせている。そしてヘイマンが私達に耳打ちする。
「ここの床は前と違って柔らかい材質だから床で銃弾は防げない。」
「げ。マジか。相手の装備を見る限り武器は前と違って自動小銃だ。パンチ力は前と劣るが精密さは上がってるはずだ。気をつけろ。」
アレンが早口で教えてくる。それが言い終わる内に兵士たちは私たちへと標準を定め前に出てくる。
「隠れろ!!!」
アレンが私の手を強く引っ張り、近くにあった店の箱の影に隠れる。
さっきまで立っていた場所に銃弾が走る。自分の背筋が凍るのが分かる。危な過ぎる。
ヘイマンは私たちとは違う箱の裏に隠れて身を防いだようだ。
よく見ると箱も所狭しとポツポツ置いてあり、銃撃から身を守れる配置になっていた。
「兄貴は前に進んで隠れながら制圧!!おれらは後退して別のルートで逃げ出す!!」
アレンが喋っている間にも銃撃は続く。アレンは腰から銃を取り出している。随分慣れた手つきだ。
アレンが愚痴る。そして私に囁く。
「警告も無しとは思い切ったことをしてくれる。銃痕から考えて、あんたの足元を狙ったようだ。怪我をしてまで連れてこい、そんなところだろう。危険だが警戒していたら怪我は防げる。おれの言う通りに行動するんだ。」
私は大きく頷く。死にたくはない。
アレンは注意深く前方を見ながら、後ろへと移動する。
歩きながら応戦して発砲した。
瞬間ズドンと大きな音が耳元に聞こえる。
撃った弾は1人の胸元に命中して絶命した。それを見ても私の心は冷え切っていた。
動揺している時間はない。
「怖いか?」
不意にアレンが尋ねてきた。
しかし私は淡白に答える。
「いいえ。後で怖がるわ。」
ふふっとアレンが笑う。
「殊勝な心がけだな。よしついてこい!」
アレンに連れられる形で私は別のルートへと走り出す。
これから物語が動き出します。それぞれの視点て話を書くので違った読み口にします!




