第1話 少女は襲われる。
薄暗い街夜道に、1人の少女が歩いていた。
街道には薄暗い光のランプがあり、年季を感じるものである。
少女の肩にはカバンを引っ提げており、その中には乾燥した乾パンが入っている。
その少女の背後の先に後を追うように影があった。
影の形から男であることが窺え、手元には鋭利で年季を感じる刃物があった。
少女は大通りの道から小道に逸れたときに、男は動いた。
男は少女との距離を一気に詰めて、少女の頭へと刃物の柄を振るった。
「…!!!」
少女は声にならない叫び声を上げて倒れこむ。
男は少女のトートバッグに入ってたパンを掴む。
「おいおい、食糧を持ってそうだから追いかけたが程々に持っているな。」
男は倒れている少女の髪を掴み顔を自分の向きへと突きつける。
「それに女なのか、身でも売って金の足しにするか。…うん?」
男は掴んだ少女の首元になにかあることに気付く。鉄製の首輪であり、この首輪をしている者は奴隷の証明だった。
「お前、奴隷だったのか。既に身を売った身ってことか。2度もドジを踏んだことになるなんて滑稽だな。」
男は嘲笑う。
しかし少女は男に怒りと冷めきった感情が相反するような視線を突きつける。
それに一瞬男がたじろぐ。別になにも少女は声を発してはないが圧倒される圧を感じた。
「まぁただの奴隷なんだ。怖がる必要はない。お前を攫っていく。」
男は強引に少女を立たせて連れて行こうとする。
そこでようやく少女が口を開く。
「あんた、この文字が読める?」
不意にそんなことを言ってきた。
言われた男はなにを言われてるのかよく理解できなかったが、そう言われて愕然とする。
少女が付けている首輪の端に刻印がされていた。
その刻印はこの街の領主の名字の名前であった。
「…!!お前ここの長の奴隷か!!」
その名前は男でもわかるような、ここらで知られた領主の名前であった。
その領主の評判はあまりよくないことで主に知られていた。
男はこの少女を連れていった場合に起こりうる自身の最悪のことを考えた。
そして考えた末に
「ちくしょう…関わりたくねぇ。」
そう言い放ち男は走って去って行った。
「…はぁ。」
少女は身体についた砂を落として姿勢を戻す。
「…パンとられた。」
それだけ言ってまた歩き出した。