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異世界の剣魔法使い(ソードマジシャン)  作者: 蠣崎 茜
第1章 雨宮式剣魔法
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第11話 半魔

なんと一年近く放置…本当に申し訳ないです…

「半魔、混血か」


「いや、違うよ。種族的な魔物と人間の間に子は成せない」


おや、混血児では無いとすると。


「造られた存在、だな」


「そうなのではあるのだが、何故君は生命の創造、というさも冒涜的なことを当然かのように考え付いたんだい?」


「子は成せないなら、造るのが線かと」


異世界モノ知識です、とは言えない。


フルーネはその時に俺を見た。いや、視られた。今はっきりとその感覚が分かった。これは経験がある、それは、死んでしまった時にルクトが俺にやってきた、「何か」の感覚だ。


「記憶喪失故の極端な考え、としておこうか」


しかし、この女。恐らく俺がこの世界の人間ではない事を悟っている。正直な所、本当の事を包み隠さず話しても、害は無いだろうとは思っているが、余計な事にも巻き込まれたくはない。という考えそのものが筒抜けかもしれないが。


「さて、造られた存在である半魔だが。誰が造ったのか。それはな…」


フルーネは表情を変えなかった。変えなかったが、陰りが見えたような気がした。


「私だ」


一瞬、俺の思考は凍りついた。こいつは、狂人でも「根本的には害の無い類」だと勝手に高を括っていた。今後は頼れるヘンテコ女、という立ち位置でいて欲しかったが、本当に冒涜的な名状し難き魔法師である可能性もある。俺は沈黙を貫いた。


「と言っても、彼女は私が直接造ったのではない。いや、産み出したのではない」


フルーネは、自らの言葉を是正した。


「私を基にしたデータ、及び私の技術を勝手に流用し、水面下で非道な実験を行っていたどこぞやの組織によるものだ、恐らくだが」


「おい今、《私を基にしたデータ》と言ったか?」


「そうだ、かくいう私も半魔なのだ。と言っても、私自身が造ったのだがね」


どうやらフルーネは十数年前、適合しなかった召喚魔法の失敗による魔物との同化、という極めて稀な暴発を起こしてしまったという。召喚魔法は、召喚陣と呼ばれる魔法陣を魔力ないし己の血液や、鉱物の粉や時には動物のフン用いて描き、それに対応している魔物の魂を別次元から召喚し、肉体を再構築して受肉させて使役する、という魔法だ。


召喚魔法が成功すれば、ある程度の範囲なら任意の場所に魔物を召喚出来るが、肉体が構築されず魂が霧散する、任意の場所に召喚出来ない、等の失敗も数多く報告されているかなりややこしい魔法であるらしい。


フルーネは、魔物の魂を彼女と完全に同位相の場所へ召喚してしまい、魂が混ざり合ったのだという。


理論上では「大爆発を起こして死ぬ」という結果が予測されていたが、彼女は生きていた。


寿命の延長、魔力の異常な増大。そして、あまりに大きすぎる「デメリット」を伴って。


「私は言うならば試作第一号。湧き上がる力を抑えきれずに《魔物化》したのさ」


「魔物化?」


「そうだ、魔物とはどう言ったものを指すかは知っているな?そこに生物としての括りはない。つまり理性を失い、強大な力を衝動に任せて振り回す化け物となったのさ」


魔物の魂と同一化した人間は、底知れない魔力の増大によって理性を失う。


MPは精神に直結するステータスだ。それが本人のキャパシティを超えて増大した時、どうなってしまうのか。


答えは「人格の崩壊」である。


フルーネは続ける。


「まあ、その時は身を呈して止めてくれた者がいたから、私は奇跡的に再び理性を得るに至ったが、本来ならただひたすら暴れ続け、MPを枯渇させて死ぬ筈だっただろう」


彼女は一段と悲しそうな表情を見せた。恐らく身を呈した人物こそ…


「おっと話を逸らすわけには行かないな。すまない」


つくづく食えない女だ。やはり視られている。


「さて、私はその後自身の身体について研究を進めた。魔物の魂が結合している状態、これを《半魔》とし、原理を探った」


結果、彼女は自身の状態についてある程度把握する事が可能となった。


魂と魂が無理やり混ざり合い、反発し合っている不安定な状態である事。


この反発自体は、自身の魂の力、「本当の意味での精神力」である程度抑えられる事。


魂の反発が生み出す膨大な魔力によって本来あるべき肉体の状態からかけ離れる事。


そして、半魔の状態から元の人間に戻るのは不可能である事。


「私は元々の魂の力が強かったのだろう、だから今もこうして平然を保つ事が出来ている。だが、魂の力が弱い者は----」


暴走して死ぬ。


では、カノン、もといエレナは何故今も平然としていられるのだろうか。


「エレナはどうして魔物化しない?」


フルーネは顎に手を当て、考えるようにして少し間をおいてから、開口した。


「彼女は私が直接関与していない半魔だ。恐らく彼女自身の方の魂に何らかの調整が施されている可能性が高い。しかし、君も今朝感じただろう?あの禍々しい魔力を」


「そうだな、あれはこの世のものじゃない」


「彼女は恐らく何らかの手法で今のところ人格を保っているだけで、もう長くは持たないだろう。魔物化した本人の感想だ、アテにしてくれて構わないよ」


そう言われてしまうと、それを信じるしかない。


「彼女はじき、魔物化する。そして強大なMPを以て破壊活動を続けた後、死ぬ」


俺は、その言葉にどう返事をしていいのか分からなくなっていた。


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