羅生門の鬼2
続きです。楽しんでいただけたら幸いです。
アイアイ曰く、浜で拾った。
「お前たちが鬼どもを追い払う際に船から投げ出され、浜に流れ着いた。と? 」
「うんにゃ。拾ったのは、鬼が来るもっと前だぜ。」
偵察艇が事故に遭い……いや、王族自らがわざわざ、と言うのは考え難い。
島流しにでもなった罪人か? ハッ、馬鹿な。鬼どもの事だ、王族とはいえ罪人ならば、即刻処刑しているに決まっている。
仮に島流しになったとしても、流れに任せてたどり着ける距離ではないな。
だとすると一体……。
「おい、アイアイ。その時の状況を詳しく教え……。」
おっと、いかんいかん。
このお猿が、そんな昔の事を覚えていられるはずがない。
すまないな、アイアイ。
思いやりが足りなかったようだ。
「……モモてめー。なんだその顔? さては馬鹿にしてるだろ! そうだろ!? 」
とんでもない。
これは、憐れみと言うヤツだ。
「ならば、一応……一応尋ねるが、この娘を発見した時の状況を、出来るだけ……出来るだけで良いのだ。出来るだけ詳しく教えてもらえるか? 」
「おい、その顔ヤメロ。教えてやるから、街中で盛大にすッ転んだ奴見る時みてーな顔ヤメロ。」
ほう、言い得て妙だな。
そうだアイアイ。お前は可哀想な奴なのだ。
「……ちっ。まあ良い! えっとだなー、亀。でっかい海亀! 」
「は? 海亀? 」
「そう! こーんくらいの、でっかい海亀! 」
アイアイは興奮した様子で、大げさな身振り手振りを交えて当時の状況を語る。
しかし、少々誇張が過ぎるな。
なんだその出鱈目な大きさは? 鯨か。
「今夜は亀汁だあ! って捕まえようとして近づいたんだけどさあ、そしたら、何か甲羅に変な模様がついててさあ。」
「模様? 」
「うん。んで、シバが、あ、この亀病気だから食べられないね……。って言うんだよ。でもウチの腹はもう亀汁なわけ。だから、食べる食べないで揉めたんだよ。」
「……ん? 」
「しばらく揉めてたんだけど、そしたらケーンの奴が珍しく良いこと言ったんだよ。ちょっと齧ってみて、お腹痛くなったら止めとこう。って。」
「おい。」
「いやー、セイテンノ……レキレキ? 馬鹿と天才は紙一重とはよく言ったもんだよなー。たださ? 前々から薄々思ってたんだよ? ケーンはやれば出来る奴だって……。」
我々は、巨大な拳に変化させた頭髪で、アイアイに拳骨を振り下ろす。
自慢の羅生門の床に穴を空けてやると、そこから首を覗かせ、怨めしそうに我々を睨みつける。
「ってーな! いきなり何しやがる! 」
「お前たちの晩飯の話が聞きたいわけではないんだが? 」
「お前が出来るだけ詳しく教えろって言ったんだろうが! 」
「要点を纏めろ、馬鹿かお前は? ああ、すまん。馬鹿だったな。」
「ムッキー! もういい! もう教えてやんねー! 」
「結構だ。直接尋ねる事にじた。」
……気はすすまないがな。
我々は、アイアイとのやり取りを、警戒した様子で窺っていた鬼へと歩みよる。
「そう怯えるな。とって食おうと言う訳ではない。」
とは言ってみても、言葉が解らないのだったな。
まあ、直ぐに解るようになるさ。
我々は、あるモノを差し出した。
「食え。ばあの味を完璧に再現してある。稚拙な表現になってしまうが、ほっぺたが落ちる程美味いぞ。」
鬼の娘は、我々の顔と、差し出したモノとを交互に何度も見る。
しかし、食べるどころか、手を伸ばそうともしない。
「まあ、無理もないか。」
彼女の今の状況で、見ず知らずの者が差し出した得体のしれないモノなど、口に出来るはずがないだろう。
「アイアイ。」
「……んだよ。」
「すまなかったな。仲直りの印だ。」
「あっ! キビダンゴかあ!? 」
「まあな。」
「いいのか!? 初めて食わされた時はくっそ不味かったのに、モモのばあは偉大だよな! アレをめちゃくちゃ美味くしちゃうんだもん! 」
「余計な事を言うな。」
キビダンゴを放ってやると、アイアイは器用に口に向かい入れ、とても美味そうに食べて見せた。
我々は、再びキビダンゴを差し出す。
「安心しろ。見ての通り、毒など入っちゃいない。」
鬼の娘は、しばらく身構えたのち、恐る恐るキビダンゴを手に取ると、思い切ったように口に含んだ。
ありがとうございました。