プロローグ4
続きです。楽しんでいただけたら幸いです。
金八先生の受け売りですが、読んでくれた方に想像していただきたいので、登場人物の身体的特徴などは、必要な事以外、文字にしないようにしています。
部屋の隅で膝を抱えて、どれくらいの時間が経っただろうか。
不自然な体制で静止する二人。埃がつもり始めた床。腐敗した、いつかの朝食。
虚無感に支配された我々は、何か行動を起こす気にもなれず、冷めた瞳で、只々虚空を見つめる。
このまま、止まってしまおうか?
そうすれば、余計な事を考えなくて済む。
「それも、良いかもしれないな……。」
久しぶりに出した声は、酷く掠れていた。
しかし、そんな我々の声が可笑しくて失笑してしまう。
こんなくだらない事でも、まだ我々は笑う事が出来るとは。
先ほどまで、自殺を考えていたと言うのに、心と言うのものは不思議だ。
我々の身体を、いくら完璧に制御しようとも、心は制御することが出来ない。
「……片づけよう。」
自分たちに呆れつつ立ち上がったとき、こちらに高速で接近する反応を確認した。
速度や大きさ、何よりこの反応。間違いない……が、珍しい事もあるものだ。
「ケーンか。」
反応のある方に視線を向けると、何かが我が家の壁を貫いた。
自らが空けた穴から上半身だけ覗かせ、じたばたと取り乱している。
「あれ!? 嘘!? 抜けない!? なんで!? 」
無駄に肥大した胸肉とぼんじりのせいだろう。
「やだ……モモちゃんのエッチ! 」
「我々の心を読むな。」
細胞で繋がっているせいか、精神が不安定だと思考を読まれる事がある。
特にこのケーン。
頭が空っぽの故か、この能力に長けている。
「何しに来た? 」
「え? モモちゃんに会いに来たんだよ? 」
「……そうか。」
「うん! 」
ケーンが満足げに微笑む。
正直、我々には、こいつとまともに会話する自信がない。
いつもなら、シバかアイアイが一緒に……。
「ケーン? 」
「なーに? モモちゃん。」
「一人とは珍しいな。」
「えっとねー。私はモモちゃんに余計なこと言っちゃうかもしれないから、一人でモモちゃんと遊んだらダメなんだってー。失礼しちゃうよねー。」
なるほどなるほど。それで?
「あ! これ言っちゃダメって言われてたんだったー! 」
「安心しろ。我々は、何も聞いちゃあいない。」
「本当? 良かったー。アイちゃんに叱られちゃうところだったよー。」
「ところで、他に何か、アイアイに口止めされていることはあるのか? 」
「うん! あるよー。えっとねー。結社のザントウ? が何か悪い事企んでるとかー。私たちが逃げた時に、一緒に逃げちゃった仔たちが色んなところで暴れてるとかー。」
「聞き捨てならんな。」
「でしょー! それでねー? その……コンランニジョウジテ? 大陸の鬼が攻めてきてるんだってー。怖いねー。」
大陸の鬼だと?
大陸を圧倒的な暴で支配した強欲な蛮族どもが……。
しかし、辺鄙な小さい小屋とは言え、それほどの報せ、我々が耳にしていないのはおかしい。
「だって私たちが追い返してるんだもん。えへへー。すごいでしょー? 」
「だから心を読むなと……なに? 」
こいつらは何をしているのだ。
この国に義理などないだろうに。
確かに、戦闘能力は無駄に高いが……。収入を得るために傭兵でもしているのか?
「モモちゃんはー。私たちの命の恩人だからー。三人で恩返ししたいねって。それでねー? モモちゃんが幸せに暮らせるようにねー? 邪魔する悪者をやっつけちゃおうって! だからねー。言っちゃダメなんだよー。」
はん! 思ったより健全で献身的なことだ!
そんなことで恩を返そうなどど……。
まったく……余計なお世話だ。
髪の毛でケーンを掴み、力任せに引き抜く。
「いったーい! ちぎれちゃうかと思ったよー! 」
「……お前たちのような失敗作には任せてられん。」
「何がー? 」
「大陸の鬼どもが、二度とこの国に攻め込もう等と思えんようにしてやる。」
「えー!? 何で知ってるのー!? 三人で秘密にしてたのにー!? 」
「うるさいぞケーン。それと、鳥頭も程々にしろ。残念ながら養護できん。」
「んー? ヨウゴって何ー? 」
「アイアイにこっぴどく叱られろと言う事だ。行くぞ。」
「えー!? やだー! 叱られるのやだー! ヨウゴやだー! 」
久しぶりの外の空気。
一人遊びはしばらく休みだ。
先ずは、大陸の鬼どもを蹴散らす。
次に、逃げた失敗作どもを狩る。
そして、結社の残党も壊滅させる。
それからでもいいだろう?
友達に、感謝を伝えるのは。
まだ……旨く言語化出来ないのだから。
ありがとうございました。