プロローグ3
続きです! よろしくお願いします!
幸い、我々を摂取していたおかげで、組織を作り替えることは容易かった。
肉体情報を頼りに、延々と細胞を作って、作って、作って……。
全てが我々となり、活動を再開する。
姿かたち、声に性格。伝わる温もりでさえも、変わることなくそこにあった。
しかしそれは、読み取った記憶と、我々の記録を基に、忠実に再現したにすぎない。
生命活動が停止した肉体が、朽ちぬように細胞を入れ替え続けても、死を超越することは出来なかった。
いや、正確には、魂を肉体に繋ぎ止めることが出来なかった。
じいとばあはもういない。
我々は、自分自身と言う人形で、現実逃避のおままごとを続けている。
シバの拘束を解いてやると、三半規管をやられたためか、着地がややふらついていたが、それでもまだ、何か言いたげだと表情は告げている。
「モモちゃん、でもね……? 」
「もういいだろ? いい加減ほっとこうよ! 」
頭上からの声が、シバの言葉を遮る。
屋根の上。少々取り乱してしまったせいで気づかなかったが、この反応……。
「……アイアイか。」
ドカッと胡坐をかき、心底面倒だと言わんばかりに頬杖をつく。
そして、我々を見下すように睨みつけている。
しばらく見ないうちに、ずいぶん態度が大きくなったじゃあないか。
「アイちゃん……そんな言い方……。」
「シバ! おまえはご機嫌うかがいすぎ! 」
「ご、ごめんなさい。」
「いつまでたってもじいさんばあさん……。きっと、死んだ二人も呆れてるよ。」
「黙れ……! 」
アイアイの周囲を囲むように、刃状に変化させた髪を展開させ、無数の切っ先を突きつけ睨みつける。
若干の動揺は見て取れたが、アイアイは物怖じせず我々を嘲る。
「や、やってみなよ!? ま、まあ? 甘ったれのヘタレたあんたには無理だろうけど? 」
「ほう? 」
アイアイ、オマエなど、ついでのついでで助けてやっただけだと言うことを忘れた訳ではあるまいな?
そこまで言うのだから、覚悟は出来ているのだろう。
お望み通り、やってやる。
我々は刃を引いた。
「ほ、ほーらな? やっぱ出来ないんじゃあないか! おまえは大人しく、ずっと人形で遊んでいるのがお似合いだ……。」
安定化、解除。
地獄の苦しみを味わえ。
屋根から転げ落ち、地面をのた打ち回る。良いざまだな? アイアイ。
「ぎ、ぎゃあああああ! ぁぐっ! フー……、フー……っ!? いぎゃあああああ! 」
混合獣の製造は、からくりを組み合わせることで成功した。
しかし、当初の計画では、人間に動物の細胞を移植し、完全に融合させることであったが、お互いの細胞が拒否反応を起こし、融合には至らなかった。
その過程で作られたのがこいつらで、いわゆる失敗作。
失敗作とは言え、薬で拒否反応を抑えつつ、実験動物として飼われていたので、薬の替わりに我々を打ち込み、細胞の拒否反応を抑制し安定化。我々をかいして、完全融合させることに成功。
そして、悪の秘密結社を壊滅させる際、利用したにすぎない。
「気分はどうだ? アイアイ。」
「や、やめてあげてよ! モモちゃん! アイちゃん死んじゃうよ!? 」
「……いいんだ……シバ……! 」
「アイちゃん!? 」
まだ喋れるのか。なかなかの胆力だな。
だが、そう長くはもつまい。
「……よかったな! 塵! 」
「その名で呼ぶな……! 」
「これで私が死ねば……また、一人ぼっちに近づいたな……! 次は……シバか? ケーンか? うぐッ……! フー……! 私たちの気も知らないで……そうやって閉じこもってればいいさ! 気づいた時には、おまえは本当の一人ぼっちになってるからな! 」
「……。」
……再安定化、開始。
「ぐっ……! ……? ……あれ? 」
「アイちゃん! 」
シバが駆け寄りキョトンとしたアイアイを抱き起す。
「……不愉快だ。」
我々は二人を一瞥し、一人家の中に戻った。
そして、静かに目を閉じた。
ありがとうございました。