プロローグ
最近筆を執ったばかりで遅筆ですが、読んでいただけたら幸いです。
ドラビアンナイトを見て、自分も色んな昔話等をごちゃまぜにしたいと思って書き始めました。
実際に、よくある話かどうかは兎も角、よくある話として聞いて頂きたい。
私が赤ん坊だった頃、そうだな……、ここは、悪の秘密結社とでも言っておこう。
その悪の秘密結社に、赤ん坊だった私は誘拐されたらしい。
それから私は、死なない程度に非人道的な人体実験を繰り返されながらすくすくと育ち、我々となった……らしい。
らしいらしい、と不確かな理由は、単純に記憶が無いからなのだが、何故、記憶が無いのか? の理由は、まるで拷問のような壮絶な人体実験。青少年が特殊な性癖に目覚めてしまうような、それはそれは不健全な行為による記憶障害。と言う訳ではない。
逃げ出す際に、復讐がてら悪の秘密結社を壊滅させるうえで、半からくり生物兵器‐混合獣乙型‐鵺と死闘を繰り広げた結果、記憶領域の約半分を消失しただけだ。
当時の我々が巧くお互いを制御出来ていなかったからなのだが、結果として、思い出したくもない記憶を完全に抹消する事に成功した訳である。おかげで実験を皮肉った軽口も叩ける。
ただ、悪の秘密結社を壊滅させ復讐を遂げたものの、我々の損傷も激しく、数日間の活動停止はやむを得ず、自己修復ため保護殻を形成し籠ったところで、私達の意識は途切れ、再び意識を取り戻した時、我々の目の前には、じいとばあの二人がいた。
ばあが言うには、川で洗濯をしていたら、川上から桃がどんぶらこしてきたそうだ。
どんぶらこ……? 言葉の意味がいまいちよく分からないが、ばあ、それは桃ではない。我々の保護殻だ。
「ほごかく? って名前の桃なんだねーえ。モモちゃんは物知りだねーえ。」
何度か説明を試みたが、ばあはそう言ってニコニコするばかりなので諦めた。
因みに、モモちゃんとは我々の事である。二人がつけてくれた名前だ。桃から産まれたからと安易な理由ではあるが、大変気に入っている。
我々に、試作型‐極小からくり群体式‐塵。などと命名した、どこぞの悪の秘密結社には見習ってもらいたいものだ。まあ、時すでに遅し。ではあるがな。んふふ。
「ばーさん、モモちゃんは桃じゃのーてモモちゃんの桃はじゃのー……。」
そうだじい! いいそ!
「……なんじゃったかのー? わっはっは! 」
そう言って、じいは我々の頭を撫でるばかりなので、こちらも諦めた。
じいとばあにとって、我々が何者であるかなどどうでもいい事なのだろう。
我々は、じいとばあの娘であり、じいとばあは、我々の父母。
つまり、家族なのだから。
「モモちゃんは物知りだねーってお話しですよーお。おじーさん。」
「おお! そうじゃそうじゃ! 物知りで別嬪さんで、モモちゃんは自慢の娘じゃ! 」
こんな平穏な日常が続けば良い。
そんな事を思い返しながら、畑仕事を終えた我々は、朝日を浴びながら大根を齧る。
「……うんまい。」
我ながら良い出来だ。早くじいとばあにも食べてもらたい。
後ろ髪を伸ばし形態変化させ、適当な大根を数本掴んで引き抜き籠へ。
「よいしょ……っと。」
我々は籠を背負い、足早に家路についた―――。
ありがとうございました! 楽しんでいただけたら幸いです。