8.日常:ベッドの下に潜むもの
先輩 男。自称純情派だが、目線がアウト。
ポウ 男。剣道弓道っていいものですね。
部長 男。美人で欠点なさそうだが、実は寂しがり屋。
トキ 男。学ばない下半身。性欲の怪物。
珍しく男ばかりの部室。クーラーの工事後、簡単な掃除をし終えた後である。
夜半を過ぎ、後は戸締まりばかりというところで、ふと、トキシラズ先生が口を開いた。
「みなさぁーん、好みのヒロイン属性ってありますぅ?」
特有の間延びした声だった。先輩は微妙な顔をして答える。
「んんんー、なんだ急に」
「いやあ、今度ね、追加するヒロインのね、参考にね、したいのですよ」
そう言ってはにかんで笑う。
一同はトロフィーにされてもなあ、と嘆息するが、答えない理由もない。
「姉」
部長は短くそう言った。
「姉ですか」
「そうだ。女性の持つ包容力、指導力を持つ。髪は長い方がいいな。絵になるだろう」
部長は綺麗な顔で笑った。
「特に床やベッドに広がる様はなんともいえないね。あと叱って欲しい」
「おおおう」
普段では見られない台詞と、美術品のような笑顔が浮かんでいる。先輩は微妙に引いた。
「叱ってほしいですかぁ、ンンッ、そういうのはぁー私の中にないですねぇー。いい、いいですよ!」
「そうか。確かに何を指摘する人物は君の作品ではみないからね。参考になって幸いだ」
まあトロフィーやドロップ品のようなヒロインではそういうのはおるまい。
気が付いて指摘したのか、それとも素か、この部長はよく分からないと先輩は呻いた。
「ポウはどうだい?」
「戦う女性かなあ。いいよねぇ。まー、あんまり参考にならないだろうけど」
武器持ち女性に対してのフェチズムというのは強いのだろう。ポウがちょっとゲームをしても、操作キャラにそれを選ぶことが多い。
「戦う娘はいっぱいだしたからねー」
まあ彼の小説には女騎士だの、姫騎士だの女戦士だのはいた。しかし武器だの立場だのを属性として持っているだけで、戦ったといえるのかだろうか。
「それでぇー、先輩は?」
「属性って言われても困る」
「またまたぁー、ポウさん、部長何か知りません」
「えーと」
「ふむ」
二人が考えはじめた。先輩はうんざりした顔をする。
「頼りになる妹分。言葉の凶器を持つ」
「なに、そんなヒロイン出した覚えない」
ポウの言葉を真っ先に否定する先輩。
「ポウ。あくまでここはフィクションでの属性だ。そうだな、とりあえず、儚げで守りたくなるタイプだな。それでも芯は強い、というタイプが好きだろう」
うっぐっと先輩は声を上げる。部長は長く彼を見ているからなんでもお見通しらしい。
「んん、いいっすーねぇ、その心は」
「彼はね、男性的、特に旧時代の男らしさというものに幻想を抱いているんだ。それを示したい、示すに値するキャラクターを求める。故に深窓の令嬢は彼の弱点となるんだ」
「おおー、なるほどー」
ポウが納得したようにふんふんと頷く。
「そんな、ことが、いや属性、なんて気にして話作ってないし! し!」
「そりゃあ、性癖というのはそういうものだよ。自分の根源的なものだ、動かせないから、無意識にそうしているんじゃあないかな」
「まっぐ、あ」
呻く先輩。
「さ、そろそろ締めるか」
「ですね。あっ、そういえば、トキ。君自身が好きな属性って?」
「僕を無条件に受け入れてくれる人、かな。褒めて伸ばしてくれるタイプ」
(((奴隷系ヒロインですね、知ってた)))
皆の心は一つになった。
終われ