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お話になりません  作者: 五部 臨
登場人物編
7/12

6.日常:パラダイスロスト

先輩 男。ワナビ。異性には幻想を抱きたいが、割ともう、すでにそげぶ。

後輩 女。ワナビ。自身が異性には求めるものが多いと理解しているので、諦め気味。妥協は大事。

アケ 女。読み専。二次元こそ正義。空想妄想が現実に劣ると誰が決めたの?


 神は死んだ。クーラーはやはり壊れたのだ。ポウが彼の死亡を確認すると学校側へ取り替えの申請した。十年以上、文芸部を守護した偉大なものは役目を終えたのだった。


「あ゛ー」

「う゛ー」


 故に部室には変わらずリビングデッドが転がっていた。

 入ってきたアケが呆れたように問いかけた。


「えー、なにしてるの」

「床に熱気を逃がしているのよ」


 後輩はしれっと答える。アケは息を吐いてから、部誌を一冊手に取ると、後輩の近くに座る。


「先輩~、この子に変なことばっか教えないでください」

「元からこんな感じじゃねーの」

「違います」


むぅっと反論するアケ。


「ほら、立って、あ゛ーあ゛ー、髪の毛が無茶苦茶じゃない」

「そうなの」

「そうだよ」


 後輩の体を起こして、無理矢理髪をすき始める。アケと後輩は中高からの長い付き合いだ。

 パーソナルエリアとかいうのが近いか、無いんだろうと先輩は見上げながら思った。


「トップブリーダー・・・・・・」


 親友というよりはその姿が、どことなく犬に構う主人のような印象だ。

 聞こえないようにつぶやくと体を起こす。構図的に女子大生を下から覗く変態めいた形だったからだ。

 二人ともハーフパンツなのでいろいろやばい。


「先輩が堕落させすぎたんですよ」


 すぐにブリーダーが噛みついてきた。その下で、後輩はのほほんと髪すきを楽しんでいる。


「もともと堕ちきってただろう」

「そんなことありませんよー」


 アケはぷぅっと反論すると、髪すきを止めて座った。


「まったく堕ちきったヒロインとか価値が半減です」

「ヒロイン?」

「はんげん?」


仲良く首を傾げる二人。


「ヒロインねぇ」

「締めますよ」

「やめろ」


 仲良さそうな二人に息を吐くアケ。


「そういえば、先輩ってヒロイン書くの下手ですよね」

「おおう、アケちゃん、いきなり横殴りしてくるなよ」


 思い当たる節はあるらしく、先輩はしおしおとへたれた。

 なお普通の物書きは激怒する可能性があるので言ってはいけない。


「ヒロインか、最近はトロフィー系ヒロイン、奴隷系ヒロインなんかがメジャーらしいけど」

「最近、ふふん、奴隷系は昔からあるよ。従順で自分を讃えてくれるというのは魅力だもの」

「欲望の象徴ね。支配した、自分が上に立ちたい、強くなりたいというのは根本的な衝動ですね。群れを支配して、猿山の大将こそ、男性原理ですから」


 男って馬鹿よねーっというノリの会話に聞こえる。事実というの得てして人を傷つけるのだ、と先輩は悟った。


「居づらいんだけど」

「我慢してください」


 女二人の歓談に微妙な顔をする先輩。女の子がこんな話していいのかという警鐘と、その女の子というのは貴方の空想の産物ではないでしょうか、というツッコミ。

 せやな、と納得した。


「やはり、ヒロイン屈服はロマンですよ、ロマン」

「さよか」


 アケが楽しそうに語るのを死んだように答える先輩。


「私はあまり共感できないけど。ヒロインと主人公はやっぱり苦労して、互いに認めてゴールインがいいもの」


 儚げな乙女のように台詞を吐いた後輩。


「おまえの苦労って、拷問みたいなもんじゃねーか」

「それで挫けない意思こそ尊いのです」

「ラスボスめ」

「もう! 綺麗なこの子を返してくださいよ」

「え、俺のせい?」


 ぷりぷりとするアケが話を引き戻す。


「いい、ヒロイン屈服はメジャージャンル。高貴なものが堕ちる、可憐で気高い意思が歪む瞬間、ああ」


 頬を押さえ恍惚とするアケ。


「友達は選べよ」

「昔はこうじゃなかったんですよ」


 頭を押さえる後輩。


「しかし、やはり堕ちきった後は微妙ですね。私としては、こう、砕けず牢の中で敵意を向けてくるぐらいまでがよいです。

 あ、今回も良かったよ、牢のシーン! 拷問って女の子よね」


 部誌の作品のことだろう。親指をビシっと立てるアケに後輩は微妙な顔をした。


「あ、うん。ありがとう?」

「できれば、あのあと×××を△▼△して欲しかったけど」

「お前の親友だろ、なんとかしろよ」

「え、無理」


 終われ。


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