余談:繰り返される過ち ~我が輩は【あくま】で犬である~
こうだと良いな、という願望にしか過ぎません。
ナザリック地下大墳墓 第十層/玉座の間
アインズの傍らに謹厳で寡黙な様子で控えるコキュートスと比べ、一転して悪い笑みを浮かべ、至極楽しそうな様子のデミウルゴスが後ろ手に組み、直立している。
幾らか御機嫌で楽しそうなアインズの様子に対し、相好を崩し過ぎてデレデレで、ニマニマした笑顔のアルべドとシャルティアが侍る。内心は、アインズ様、マジカッケー! といった具合なのだろう。
アウラとマーレは別命を受け、今回は別室で待機している。
「クックックッ・・・セバス、流石に血は争えない様だね」
告発者たるデミウルゴスは、とてもとても楽しそうに口火を切った。
恐縮しきったセバスは何も言えぬまま、黙して語らず。今は御方の言葉を待つばかり。
そこから、玉座に座すアインズが後を続ける。
「セバス。また可愛らしいペットを拾った様だな」
「は、その・・・」
些かうろたえつつ、どう釈明するべきか戸惑うセバスを他所に、アインズはセバスの返事を待つことなく言葉を続ける。
「よい、その事については叱責するつもりはない。リュートが連れて来てしまったのだろう?」
ビキリ、と音のするような一瞬の硬直をみせたセバスは、辛うじて口を開く。
「誠に、申し訳ありません」
恐縮しきり、謝罪と共に深々と頭を下げるセバスに対し、アインズは鷹揚な頷きを見せ、続けて言葉を掛ける。
「では、そのペットをここへ。流石に見知らぬモノがナザリックをうろつくのは好ましくはない。それに、何かがあってからでは遅いからな」
アインズの内心としては、ここナザリックでは様々なモンスターが所狭しと跋扈しており、そのほぼ全てがゲーム時代由来の存在がほとんどを占めている。極僅かに現地採用した存在も居ることは確かだが、このナザリックの玉座の間に至り、至高の玉座の前に列する程の者は、ほぼ皆無と言えるだろう。
だからこそ、ゲスト認定など、必要な処置を行わなかった場合、それと知らずにナニカに食べられてしまった、なんて不幸な事故があってもおかしくはない。自己判断が出来る自我がそれぞれに有るとはいえ、周知の徹底は必要不可欠なのだから。
そんな事故が起こりえる可能性は皆無とは、決して言えない。知らず、気付かぬ間に、ありえないと思われる事が、いつの間にか起きてしまっているのが、事故というものである。
それがもとで、ナザリックの存在そのものが嫌われてしまったのでは、後々困るからな。
以前にも、リュートが持ち込んで、以後はエントマが預かる事になった危ない蟲の件もある。
そう、興味本位でなんでも持ち込んで来る、好奇心旺盛な幼子が居るのだから。
その時の事を思い出すと、笑いが止まらない。すぐに平静になってしまうが、それもこれも良い思い出と言えるだろう。
餡ころもっちもちさんも、一時期は【同棲相手】からの狩猟戦利品で悩んでいたと言っていたこともあったし。こんな事を感じていたのだろうなと思いを馳せながら回想する。
餡ころもっちもちの同棲相手=(=^・^=)。
狩猟戦利品=主に【恐怖公】と【ハムスケ】と【エクレア】に似ている。
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リュートがトブの大森林で見つけて拾って来たダンゴ虫に似た、【未確認生物】砲弾蟲/爆弾蟲。【命名・エントマ】
砲丸サイズ≪直径95~130mm/4~7kg以上≫のダンゴ虫 擬。
命の危険を感じたり、捕食されそうになると、真ん丸に丸まり、《リーンフォースアーマー/鎧強化》、《ハードニング/硬化》でその身を守り、最終手段として《フォース・エクスプロージョン/力場爆発》を順繰りに行使して脱出を試みるダンゴ虫擬。
その逃亡方法は、まさに大砲の如く飛んで逃げるといったモノ。
素の状態でもミスリルに匹敵する硬度を誇り、魔法の重ねがけによりアダマンタイトよりは劣る程度の防御能力を得る。
リュートが手にしていても、それらの異能が発動されなかった理由としては、周囲に蔓延る圧倒的な脅威と比べ、脅威とすら受け止められなかった所為と思われる。せいぜい、丸まってやり過ごすことが出来ると思われたためだろう。事実、コロコロと転がしたり、ボウリングのごとくストライクを繰り出そうとして、狙いを外し他所へ転がり続けてガターになってしまうのが落ち。
ある日、コロコロと転がって来た球体を、ロロロの頭の一つが何だろうと咥えた所を《フォース・エクスプロージョン/力場爆発》。ロロロ自身はビックリしたものの無事だった、余りの衝撃に吐き出したがその勢いでダンゴ虫は地面にめり込み、そこから脱出しようと更に《フォース・エクスプロージョン/力場爆発》。
臼砲の筒のような穴の開いた地面から、集約効果により、天井スレスレまで飛翔し、落下し地面に激突寸前に《フォース・エクスプロージョン/力場爆発》でピンボールの如く跳ねる行為を繰り返し、マーレが立ち構える方に砲弾の如く飛んで行った所を打ち返され、アウラに踏みつけられて、事態は沈静化した。
何事も滞りなく全て解決したと、重要度がもっとも低い報告に紛れて底積みされたため、報告書がアインズの手元に届いた時には、一週間は経過していた。
その頃には、リュートもその遊びに飽き、他の様々な存在の刺激的なおやつとして消える運命を辛うじて回避した経歴が在る。
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「確か、餡ころもっちもちさんも言っていたが、ペットは最初のうちに躾をきちんとしておかねば、後々面倒な事になるらしいからな。
最初の内は、アウラの元で躾の仕方を学ばせておくと良いだろう」
「は。では、連れてまいります」
・・・ ・・・ ・・・
我が輩は《《あくま》》で犬である。名前は・・・過去に憤怒とともに捨て、それからは偽り続けていた。
我が輩は、デミウルゴス様の格別の配慮により、生まれたと伝え聞いている。
我が父は、霜の女巨人・イアールンヴィズ=繁殖家が飼っていた月の狼。
我が母は、カッツェ平野に在ったと言われる墓地に住んでいた墓守犬。そこは既に放棄され、今はエ・ランテル郊外の大霊園に居を移して久しいと聞く。
我が輩は、独りっ子である。低級の魔獣であれば、多産であるが多死となり、その中で極一握りが次代を紡ぐ。されど、我が輩等は高位とはならずともそれなりの階位には位置せしものである。そのために、個体数は少ない。それだけ繁殖環境が限られるということでもあるらしい。
我が輩の住処は、元エ・ランテル領主館裏庭。もう一つの住居として、ナザリック地下大墳墓地入口の地表に据えられたログハウスの脇に据えられた小屋である。
ログハウスの規模に比べたら、正に犬小屋である。
ナザリックに配置された当初は、地獄の猟犬、墓守犬、黒妖犬などなど、様々な種族名で呼ばれる事も多かったが、最近は個別の名で呼ばれる事が多くなった。
それ以前は、夢の中で誰かに別の名で呼ばれている様な気もするのだが・・・とろとろとした眠気に誘われ、またあの夢を見るのだろう・・・か。
・・・ ・・・ ・・・
【う・・・こ、ここは?】
薄暗く、霧の立ち込めた場に、ただ一人佇む。
【えっと、みんなが・・・】
思い出すのは、最初にリーダーが て、レンジャーが逃げろって言って、ドルイドに庇われたけど・・・力及ばずに さん諸共、逃げる間もなく捕まってしまって・・・。
【そっか、死んじゃったのか】
だけど、この状況は・・・どうした事だろう。
その事を知りたくとも、この場には自分一人が立っていて、他に何かあるわけでも、誰かが居る様子もなかった。
あれ? リーダーって、なんて名前だったっけ? それに、レンジャーにドルイド・・・それに、忘れちゃいけない人が【まだ】居た筈なのに・・・。
それから、どれだけの時が経って、どれだけの距離をどう移動したのかも判らなくなった頃、ただ一つの違いを頼りに、延々と道なき道を進み続けた。
行けども行けども、近付いた様子はないが、離れる様に移動するとあっという間に遠ざかった。同じだけ引き返したはずが、明らかにそれ以上に引き離されていた。
ならば、せめて何もないとしても、変らぬものを求めるが如く、それを目指して進み続けた。
そして、気が付いた。何を探し求めていたのかに。
【ここに居たんだ。皆】
誰もいなかった場所から、応える様に声が聞こえた。
【やっと見つけたぞ、『―――』】リーダーが居る。
【随分、掛ってしまいましたね】いつもと変わらぬ笑顔を湛えているドルイド。
【おおい、気付くのが遅いぞ!】何時も通りに陽気なレンジャー。
【遅くなってゴメン、みんな。私の名前は本当は―――――だよ】
それぞれ思い思いに好き勝手なことを語り、ふと今気が付いたかのように4人が一振りの漆黒の剣を手にした者に振り返った。
その4人の内の一人、帯鎧を纏った戦士が4人を代表するかのように口を開いた。
【えっと、その漆黒の剣は、今は貴方の物ですか?】
その小さな人影が頷き、剣を掲げた。さも誇らしげに、自慢気に。
その姿を皆で見届け、誰からともなく笑顔になった。ただただ、嬉しかった。未練を残した筈の、自分達の跡に繋がっている証を見届け。
・・・ ・・・ ・・・
「く~ろ~!」
そう、我が輩の名は、クロ。正式な名はもう少し長い。
ナザリックの幼き者に名付けられたその名が、今の名である。
今日も、あの子がご飯を持って来てくれたようだ。本当は、あの子の母親が来てくれるのが、何とも言えずとても嬉しい。なぜだろうか? 何はともあれ、あの子を待たせるのは忍びない。
のっそりと、両開き扉を鼻先で押し開けると、目の前には・・・「きゃうん!」
「おお、流石にデカくなったな」
「くろ? おいで~! くろ・のわ~る?」
驚いた、あの御方が来ているなんて。
「きゅぅうぅん」=【や、止めて、戒めの革首輪を引っ張らないで!】
「きゃんきゃん」=【アインズ様の前に立つと食み食みしたくなっちゃうんだから!】
以前、初めてお会いした時、思いっきり甘咬みしちゃって処分されかかったんだから!
それでもぐいぐい引っ張られれば、おずおずと、御方の前に進み出ると、ゴロンとひっくり返った。尻尾は又の間だ。これでも恥じらいは有る。
以前、この格好をした時は、アルべド様とシャルティア様に躾けられた。曰く、恥じらいを持て、御方の前に粗末なモノで御目を汚すなと・・・死ぬかと思った。
「ほほう、犬がこういう格好をするという事は、服従を意味するのだったな。それにしても、デカイな。ハムスケを軽く超えそうじゃないか。こっちの魔獣の類いは発育が良くなる様な要素でもあるのか?」
「わ~い! もふもふ!」
「きゃん!」=【ぐえっ! お腹にボディプレスは止めて! 苦しいから!】
ボフッと、飛びかかられたけど大丈夫。この位は・・・腹筋で跳ね返せる。幾度飛び掛かってきても。
「んっしょ!」
「くぅ?」=【え? 上?】
声がした方に顔を向けると、屋根の上によじ登ろうとする姿が見えた。
「わう! わゎん!」=【ちょっ、屋根から飛翔はもっとダメ!】
仕方なくムクムクと大きくなると、小屋の壁に前足を掛け、屋根の上でパクリ。
「リュート!」
御方に怒られるも、魔法を発動されようと身構える御方の前にぺっ! ふぅ、間にあった。
「ぶ~ぶ~!」
「がう、くぅるう」=【ぶ~ぶ~! じゃないの。苦しいから】
伏せた状態で、咥えた時に少し乱れてしまったリュートの服を整えてやる。そのまま抱え込んでこれで我慢して、とばかりに頬ずりしている。
その様子から、アインズは取り越し苦労だったと見てとり、仲睦まじいじゃれ合いを眺めながら、種族的な強制平静ではない心地に心を和ませていた。
「相変らず仲は良いようだな。クロ・ノワール」
名前の由来は、毛色はダークブラウンだが、見様によっては【黒々】しているからな・・・とアインズは思っている。
わしわしと頭を撫でられた。
「くぅ~」=【あうっ、き、気持ちいい! けど、食み食みしたい! で、でも、我慢! このもやもやはあの玩具で発散するんだから!】
嬉しそうに、でも我慢しているせいか、激しく尻尾をバタつかせて風を巻き起こしている。
・・・ ・・・ ・・・
ナザリック第一層
様々な武器と防具がぶつかり合う騒音のさなか、微かなそれは小さき牙元族長スーキュ・ジュジュの聴覚に捉えられた。
ちゃっちゃっちゃ・・・硬い物が石畳に微かに触れ合い擦れるような音を立てながら、徐々に大きくなる。この音は・・・
「キュクー・ズーズー!」「あぶない!」「がっはははは! ヨッシャ、こい!」「ゼンベル!」
立ち塞がったゴツゴツしたのが勝負を挑んできたが、パクリ、ぽいっと、放り投げ、目的の「白竜の骨鎧」を咥えて、ゴリゴリガリガリ。
「たぁすけぇ~てぇ~!」と間延びした声で助けを求める、鋭き尻尾元族長キュクー・ズーズー。
この、砕けそうで砕けない、絶妙な歯応えが堪らない! らしい。
死にそうな声を上げるキュクー・ズーズー。これまでは全身鎧の防御力に頼り切ってきたが、流石に間に合わず、避けたり逃げるのが上手くはなっているものの、最終的に捕まって玩具にされてしまう日々。
・・・ ・・・ ・・・
一頻りおもちゃで遊んで満足した。お腹もいっぱい、これでまた夢の続きをみるの・・・だろうか。
【ん、ん~! っし! じゃあ、そろそろ行っか!】
【そうだな、ここは居心地は良いけど、ずっとって訳にはいかない】
【そうですね。ずいぶんと長居をしてしまったわけですし、次へ向かいましょう】
レンジャーが伸びをしながら立ち上がった。
続いて戦士が切りよく続く。
ドルイドも立ち上がると、その意見に賛同した。
【ま、待ってよ! みんな! 何処へ】
私は慌てて引き止めるために手を取ろうとしたが、その手は触れることすら出来ずに、すり抜けた。
【何処へって、決まってるだろ】
【俺達は何だ? 冒険者だろ】
【さよう、何処へ行くかと問われたならば、冒険へ行くのが目的です】
すり抜けた手に驚くばかりの私に、皆は口々に言う。
【危うく険しいと言われる未知を冒す、その手助けをしに】
【まっ! そんな細やかな願望だって】
【そう。ただ、そうしたいだけの我侭です】
三人が並び、それぞれが差し出した手を重ね、思いを言の葉に綴る。
【俺は、悔しいんだ。届かなかった手が。懸命に伸ばしても延ばしても、掠りもしなかったことが】
表情はあっけらかんとしていながらも、悔しかったことはその声から滲む。
【リーダーなのに、迂闊だったから。今度こそは】
護る筈だったのに、何も出来ないままだったことへの未練。
【活かせるならば、どんなことでも。この身体を盾にしてでも、活用できればいいですね】
力及ばずとも、せめて違う結果を出したかった。しがみつくことすらも、及ばなかったのだから。
それぞれの未練を、思いを一つに紡ぎ、三人がこちらを見た。
触れることすら出来ないながらも、その重なった手に触れること能わずとも、自分の手を上から重ね合わせた。
【わ、私は・・・私は、何をしたら】
口からは、迷いしか出てこなかった。その持てる知識を振り絞っても。
目的のためなら、どんなこともすると、決めた筈なのに。戸惑いと、騙していた後ろめたさ。
【決まってるぜ!】
レンジャーは無責任に。
【そう、すでに】
ドルイドは重々しく頷き。
【ニニャが、いや。クラウがしたいことをすればいい。今は、何をしてる?】
リーダーは極当たり前の如く、訊ねてきた。
【わ、私は・・・】
ふと、目が覚めた。・・・熱い。それに、重たい・・・何が?
不快というわけではなく、安らぎすら感じるその重みの原因を確かめた。またか。私のテリトリーに入ってきて、無邪気に眠こける幼子が、私を枕にしている。
寒いわけはないはずだが、無防備な様子でこちらにその身を無意識に擦り寄せてくる。
仕方がない、今日もこの子が起きるまでは、その眠りと寄り添える限り。
ふと、その小さな手が大事そうに握っている短剣が目に映った。
その剣には元々鞘はなく、今は柄から伸びる飾り房で刃を編み包まれ、傷付かないようにされている。
いざ使うとなれば、ひとりでに解け、その刃を露わにする。使用後は、またひとりでに巻き付き、元の編み上げられた姿へと転ずる、魔法の剣。
はて、この剣は、なぜか懐かしく思えるけど、今まではそんなに気にもならなかった。自身を喚ぶ依り代で、断ち難い繋がりがあることは漠然と理解しながらも、そばに或ることが当たり前だったからか。その事を不思議に思いつつも、己の尻尾をパタパタと振ることで微風を撒く。周囲に籠もった空気をそっと動かすために。
どれだけの間、そうしていたのだろうか。熱さと重みは変わらないまま。頭を、体の上を滑る何かを感じる。
身の危険を感じないまま、微睡みながら薄目を開く。鼻をピスピスさせながらなにか懐かしさを感じる匂いをたどり、その大元へ辿り着いた。
「くぅ~」=【ああ、ここに居たんだ】
もぞもぞと体を動かし、その膝に頭を寄せ、されるがままに昔のように毛を梳き梳かれる。
・・・懐かしいな。この感覚は。
・・・ ・・・ ・・・
名前/銘:【クロ・ノワール】
=フランス語で【漆黒の牙】を意味する。 croc=牙 noir=黒
アインズが【黒黒】しているからと命名、ティトゥスがその由来を独自に解明し、後付け。リュートはそのまま覚えやすいからと決定。
耳:垂れ耳
色:真っ黒に見えるダークブラウンな長毛系シングルコート。目は真っ赤。親譲りの燃える様な《《銀朱》》のオーラ=鮮やかな朱。
size:ハムスケを少し越えるくらい大きい。(体高と体長)
普段は省エネ仕様で子犬位 ・・・でも、オトナの大型犬size。
要は、真っ黒いフラットコーデット・レトリーバー風。sizeの変動有り。
ハムスケよりも【軽い】。
性格:暖かいからリュートがぬくぬくしている。偶に一緒に寝ているけど、熱い! と蹴飛ばされたりも・・・でも、気にならない。だって、私はこの子のお姉ちゃんなんだから。
ナザリックに属さぬ者には牙を剥く。その度に、めっ! と怒られたりするも、直らない、気にしない、けどその時位は言う事を聞く。
役職:聖王国の一角で両足羊を放牧していた際の、僕妖犬として活躍後、牧場の規模縮小のために引退していた所をエ・ランテルの訓練用【ダンジョンの番犬(仮)】として引き取られた。ダンジョンの難易度調整のため、βテスターが攻略中、じゃれ合いになって勝手に連れ出した。
強さ:素で13~15くらい? 速攻スキル
性別:女の子
種族:妖魔獣/冥月の犬
食性:霞や星幽/アストラル、七魄、ゴーストやレイスなど、霊的な存在も食す。
魔法吸収
ゴースト/レイス/ボギー(妖精) =いつものゴハン!
リッチ =ちょっぴり豪華なお菓子
~
オーバーロード =獄上な味がする
装備:革の戒め/首輪
装飾:黒剣=リュートの持つ剣と連結=召喚用の目標
小型水筒:非常時に備えて調整された【魔法薬】(原液)
リュートは一緒に遊んでいる内に、猟場の番人の職業Lv.1の資格を得ていたり。
猟場の番人
装備:弓矢/罠/銃器/釣り竿/槍/網/棍棒など、狩猟に携わる品が可能。
スキル:領域察知【常時】[小規模(10m圏内)]
ノマド=野外活動
魔法:召喚/スローター・ハウス=解体小屋など
要は、多様性の一助。ナザリックの執事への道は・・・まだまだ遠過ぎる。
・・・ ・・・ ・・・
【蛇足】
健やかな息遣いの音だけが耳朶を打つ。
至福の刻は音もなく、唐突に終わりを告げる。
「・・・ゔぅ~?」=【・・・誰?】
何も感じられない。何をしたとしても敵わない、圧倒的な力の差を感じ、身動きすら出来ない。目だけを懸命にその原因へ向ける。
辛うじて視界に収まったのは、力なく垂れ下がる腕。遠ざかる耳を打つ烈しい鼓動。隠し切れぬ緊張により強張りを見せる足。ぎこちなく臥し隠される顔は、相手の懐に。
太く逞しく、身動ぐ事なき大樹の様な両腕は、不慣れな様子が垣間見える。されど代え難い何かを大切に運ぼうと奮闘しているかにも見える。
片腕は膝下を通り、もう片方はその背中を支え。その姿を背け、立ち上がった。
「ぅゔ、ゎぅ!」=【嫌だ! また攫って行かないで!】
無意識に小さく吠えていた。未だ身動ぎ一つ出来ない身体。
頑然とした背中は、その抗議を意に介さず揺るぐ事はない。
ふと、気がつくと無力に揺れる腕に力が漲り、上へと動く。臥せられていた顔が静かに・・・そして、見た。
その小さな手が相手の首へ周り、もう片方の手が前に周り、相手の肩越しにこちらへ合図を送る姿。
その背中へ回された手が、口元へ伸ばされている。
【し~!】=お願い、静かにしてて。
声のない、ただそれだけの仕草。密かに無声のまま、雄弁に語る。赤らんだ頬が隠しきれていない。
すでに起床している事に、相手が気が付かないはずもない。それでも騙された芝居を続けているのだろう。
「ぅうるぅ~」低く低く唸る=【もう、義兄ちゃんに甘えて~】
全く、仕方のないお姉ちゃんだと内心呆れつつ、でも最後に見た連れ去られて行く姉の姿よりずっと、ずっと良い。
「ぁむぅ!」
ひゃぅっ! か、噛まないで! そこは! でないから! そろそろお~き~て~!
寝ぼけて齧られているが、無理に起こすことなく我慢する。
次回の予定
ジャッカロープの洗礼 ~とりあえず、生?~
冒険者登録はこれからです。