なざりっく魅食鬼行? 七品目 食罪の悪魔:アクマでも・・・食材です!
人間は、比較的なんでも食べる。
そういうものだと、知ることがないから。
このお話は、そんな【悪】の付く食材。
別段、非合法でもなんでもない、極ありきたりの食べ物で作成しております。
主義主張は、それぞれです。文化に関しても、それぞれです。
ただし、それは相手の文化を侮辱し、侵害して良いという事には、ならない。
食べられてしまう罪/運命を背負った悪魔たち?
見目は麗しくなく、醜悪でも、食べられます!
堕天使の胸鰭/悪魔の獄光
悪魔の尖った尻尾の先には毒針がある。
もともとは天使達の中でも、敵に対して獰猛なる捕食者たる一派閥だったが、主義主張の食い違いが端となって勃発した、権力を巡る闘争に負けたがために堕落したとされる天使達。過激思想派として天を追われ、陸へ、海へと千々に落ちた者達の末路が、堕天使=悪魔の始まりとされる。地の底へ、海の底に紛れ隠れねば生き延びることすら叶わなかった堕天使たち。
地に落ちた堕天使たちは、天からの追撃を逃れるために地を這い。地中深く、洞窟などに身を潜めるうち、必要な要素を欠く中、その環境に適応していくために、醜く変質していった。
海に落ちた堕天使たちも、天から見られるかもしれない海中よりもより深くその身を潜めることで、その天からの眼から逃れようと、長く長く足掻き続けた。そんな者たちの中には、過去の歴史を知らない世代が海底から浮上し、広き大海原に舞い戻ったものも多かったが、多くの者達は人間を捕食し、討伐対象となるものも。中には、人間によって捕獲され、死してなお腐ることが稀有な肉体のために、故郷たる海より遥か遠方の山中まで運ばれ、切り刻まれる事も多かったという。
されど、海に落とされし堕天使=悪魔といえども、移送手段の向上により、後々には見捨てられることのほうが多くなったという。
主に、捕食者の手足のみを珍重し、切り離した後は見向きもされなかったことも有ったとか。その手足とされている鰭は木乃伊=干物とされ、値千金の値が付くものとされている。=鱶鰭
また、堕天使を追うため、自ら望み下界へ降りた天使たちも、それなりの数で存在する。
されど、一歩先んじ環境に適応した堕天使達には及ばず、数でも劣り、さらには天使と悪魔の戦いに、本来は関わらざる者共が介入し始めた。その身体を資源と見なされたのだ。その歯/髭が女性のドレスを着飾る際のコルセットや腰の膨らみに最適だったという。または、その身に蓄えた力の源を搾り取るといった行いが横行した。更にはその肉をも食する者も数多い。
そのため、中には報復のために堕天して、船を沈めるといった行為を正当化する者も後を絶たなかったという。
その後、販路拡大を狙う競合事業の台頭により、徐々にその捕獲事業は衰退を余儀なくされ、廃れゆく様に差し向けられたという。
かの者達の言い分は、「かの生物は賢く、特別な存在なのだから保護すべきだ。それを穫ることは、大変残酷だ!」と言い募って、その積み重ねられた全てを否定する。己が行いは全て善と肯定し、それ以外の全てを悪と断ずる。その瞳に映るは、頑なに編み込まれ、組み合わされし、解かれることなき終の柵。
さて、そんな海の底を這い、気味が悪いと形容され、悪魔の名を冠する者達の翼の如くはばたかせる鰭を切り取り、漬け込まれて干物としたものを軽く炙るは酒の肴として絶好と評される。
他にも悪魔らしく、ぼこぼこと煮え滾る鍋の内で甘く付け上がらせた後に辛く煮付けたりと、なかなかに通好みな一品になるという。
その身をしゃぶり尽くし、【柔】軟性の高い【骨】の髄まで齧り尽くすさまは、まるでどちらが悪魔かを疑わざるを得ない。
デミウルゴスの執務室で、それは起こった。
「あいたたたたた」
ちっとも痛そうではないが、驚きの声を上げるデミウルゴス。
「む~?」むっちゃむっちゃと音を立てながら噛みしめるものの、思っているような味がしなかったために、それは開放された。
「リュート、いくら似ていても、私のはおいしくはなかっただろう?」
「うん。噛み切れなかった!」
「似てても、焼いても美味しくはないんだぞ」
声色だけはオドロオドロしく、怒ったように喋るが、全く怒ってはおらず。気前よく程よく焼けたそれを素手で裂き、小さく千切ったそれをリュートに与える。
リュートは受け取ったそれを、アチアチとお手玉しながらも手放さずに咥え、ガジガジ。
そのデミウルゴスの脇に置かれていたのは、【七大罪の輪】=燃え盛る嚇怒の炎を閉じ込めた通称:【七輪】とエイヒレにスルメ。ちょっとした休憩時間にヒレを炙って摘んでいたところをリュートに見つかり、いろいろと教えていたら、翼を出してと言われて言われるがままに出した結果、齧られてしまった。
デミウルゴスの翼には、小さな歯型がガッツリと残され、暫く消えずに残っていたとか。
【七大罪の輪】 七芒星の魔法環
憤怒 燃え盛る嚇怒の炎を閉じ込め、灼熱を放つ・・・煖房具?
薬缶などを置いておくと、お手軽加湿器にも、簡易調理機器にもなる。
嫉妬 対象を焼き尽くす為だけの・・・焼却炉?
灰すら残さず焼き尽くすため、証拠隠滅と悪掃除がラクラク。
傲慢 あらゆるモノを切り刻み、使用不能とする裁断機?
再利用が容易になる細かさ。
怠惰 怠慢=変質することをも怠けさせる事で保存期間を延長?
生物をより長期に渡り保存可能。変質を防ぐ。
大食 裁断し辛いモノを噛み砕く粉砕機
ミンチメーカー 【キョフテ=羊肉のハンバーグ】を作るのに重宝している。
強欲 複製増殖
まんま、コピー機。
色欲 サキュバス/インキュバスの召喚
呼び鈴=インターホン。雑務を任せるための呼び出し用の鈴。
MADE IN NEARATA 仕務用機器
エイ/Ray=もともとはサメの一種だったが、海底での生活に適応。後に回遊生活に回帰したものがイトマキエイ/マンタなど。
サメもエイもその肉体にアンモニアを多く含むために腐り辛く、遠方へ運ばれ貴重なタンパク源として重宝していた。
後に、流通が発達したがために廃棄されることが多くなったという。
南洋に潜るダイバーに非常に人気のあるイトマキエイであるが、現地の人々からすると、日常的に口にするタンパク源であり、【食料】だった。
現在は、観光資源の一環として、捕獲することができなくなっているらしい。
お金に替えることは出来ても、お金そのものは食べられず、その分輸送費などで割増しされた食料品を買わざるを得ない状況に陥らされる・・・という話がある。
どちらのほうが良いのかは、当事者でない者からは、なんとも語ることは出来ない。
・・・ ・・・ ・・・
悪魔の実は、地中で育つ。
悪魔は、木の根の股より生まれいでる。
悪魔は、生命力が強く。切り離された一部分が小悪魔となることによってその数を増やす。(小悪魔の語源より)
悪魔の舌は、二枚仕込み。地獄(和風)では、嘘吐きは閻魔=釘抜き/ヤットコで舌を挟み拔かれてしまうことから、舌を抜かれても良いように、予め二枚目の舌を常備している。そして、舌を抜かれたら新たに舌を付け替える。
そのため、悪魔の舌には 価値はほぼ無い。
ほら、舌先三寸で言いくるめたりする時の舌先は、悪魔の舌を付け足しただろう人がいる証左でしょう?
舌を抜かれても痛みを感じないからこそ、心も体も痛むことがない。
悪魔の実は、幾年も掛けて地に潜み、時に地の底で腐り果て。時に人に見つかっては掘り出されるものもある中、幸運にもそのどちらにも当てはまらなかったものが、人々が忘れ去ったであろう頃を見計らい、地表に顔を出す。
なんとも言えぬ腐臭を漂わせながら。
人は、その悪魔の実から育った花を見て、嗅いで感じたままに字名を付けた。その字名を、屍の花と呼び表したという。
その花に、死臭に集るは、腐肉喰らい共。
たった一輪の屍の花に無数の腐肉喰らいが集い、我先にと地獄の亡者のごとく、ことごとくが底まで落ちて、そこから逃れんと這い上がらんと足掻き続ける。
だが、花はそれを許さじ。目的を達するまでは堅牢なる壁を築き、それを阻む。
目的を達するまでは、如何なことがあろうと、決して逃さずにその監獄に閉じ込める。
地獄に集う亡者のごとく、浅ましく逃れようとする者共を情け容赦なく閉じ込め続け、ある目的を達したとあらば、その場限りで己の全て、一切合財を腐らせるという。(事実)
そんなものを、これから掘り出すという。
場所は、トブの大森林に極秘裏に作られた、秘密基地・・・というか、秘密農園。その農園の名は、他人呼んでアルベド農園。
極々限られた作物を育てるために設えられたらしい。
そのアルベド農園は秘中の秘とされてきたわけだが、ナザリックに属するものにすらも秘密とされ、極一部の者たちのみで運営されていた。その中にコードネーム:遠離と寝夢という名も含まれていたとか。
それがナゼ、今になって知られるに至ったのか?
過度のダイエット事情により、些細な異変に気付いたデミウルゴスが監査に入り、密告者による密告によって摘発されたため。
そして、その農園の運営はアルベド達の手を離れ、食料事情を一手に管轄する料理長のもとに集約されるに至った。
なぜシャルティアが密告したのかは、吸血鬼たるシャルティアには固形物を食すことがないためと、その恩恵を享受する意味が不明だったため。
えっほえっほと、リュートは【暴食】(先割れスプーン)を手に地面を掘り返す。すると、赤ん坊の頭ほどのゴツゴツとした塊が掘り出される。それをそのまま「掘れた~!」デミウルゴスのもとへと駆けてゆく。
「フム、これはまだ小さいようだね。もう一回り。イヤ、二回りほど大きいものにならなければ適さないな」
「だめ~?」
リュートはガッカリしている。そんな様子でも、よく頑張ったと褒めそやすデミウルゴスは言葉を続ける。
「いや、これはこれで、あと二年ほど育てれば相応のものとなるだろう。そうだな、これは別にしておこう。これぐらいなら、一度保管しておいてから、時期をずらして再度埋めるのがいいのだろうね。そうだね? マーレ」
「は、はい! えっと、これは一年目くらいの大きさだから、できれば三年物がいいみたいです」
「だそうだ、頑張って芋掘りに励むとしよう」
「あ、あと、お芋は素手で触るとかぶれちゃうから! 手袋をしようね」
「は~い!」
そうして、蒟蒻芋掘りが行われた。
蒟蒻 =Devil's Tongue =悪魔の舌、とも呼ばれていた。
アルベド様達、幸せ太りだってさ。だから、ダイエット中?
収穫された蒟蒻芋は、コンニャクにされてそれぞれに供された。
コキュートスは刺し身コンニャクと、氷酢酸で味付けしたノウミソをタレにしていただく。
デミウルゴスはアツアツおでんと熱燗。
マーレは玉串こんにゃくにして煮込み。
鍛治長は味噌田楽、ノウ ミソをたっぷりと付けて、炉端焼き。
ピッキーは液状化させてドリンク仕立てにしたり、半固体状化させて低カロリーな飲み物作成に余念がない。
リュートは、たくさんは食べられないから、一口ずつ味見させてもらったとさ。
ちなみに、コンニャクにある黒いつぶつぶは、悪魔の皮の欠片・・・ではなく、古来はコンニャク芋の皮。現代は乾燥させて砕かれた【ヒジキ】を用いて黒くされている。
現代では、栽培方法が確立されたために非常に安価で供給されることも多くなったコンニャクであるが、かつてはその希少性ゆえに、超がつく高級食材でも有ったそうな。そもそも、日本に自生している野生の蒟蒻芋などは、日本では、見つけるのも困難であり、希少価値が高過ぎたため。
現代の高級食材である、鯨肉や松茸やカズノコやカラスミは、第二次世界大戦後は当たり前に食べられ、食べ飽きてまた出たと嘆かれるほどの庶民の味だったとか。
商品価値が下がったもの、逆に当たり前に手に入れることが出来た筈だったものが、とても手の及ばぬ希少な物となった物も非常に数が多い。
氷酢酸
=高濃度の酢酸 =コキュートスは酢味噌。
燭台大蒟蒻
=別名:スマトラオオコンニャク/お化け蒟蒻
インドネシア、スマトラ島の熱帯雨林に自生する、世界最大の高さ2mにもなる花を咲かせる【蒟蒻】。・・・とされるが、実際の花の本体そのものは小さい花の集合体。花そのものの大きさに限れば、ラフレシアが最も大きいとされる。
その臭いは強烈であり、独特の腐敗臭によって甲虫を呼び寄せることで受粉する。受粉が完了した後、直ちにその身を朽ちさせ、次代へとつなぐ。
その人間からすると、強烈な独特の臭いから、屍の花の異名を持つ。
・・・ ・・・ ・・・
悪実
かつて、それを食べさせた者達によって監獄送りとされた男達が居た。(事実)
その男達は、口々に訴えた。「そんなはずはない!」「誤解だ!」「冤罪なんだ!」と涙ながらに訴えた。だが、その言葉に耳を傾ける者はおらず。極悪なるBC戦犯として裁かれ、実刑判決。(実話)
その当時、それは貴重であり、それを自腹で与えた行為は、逆に利敵行為として囚われたかもしれない行いだったにもかかわらず、事実は歪められたものとなった。
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ナザリックへの定期報告を済ませ、アベリオン丘陵へ帰還したプルチネッラは、留守中の報告を受けていた。
「羊達の様子わどうですか?」
「はっ、どうやら食事に不満があるらしく、なかなか思うようには育っておりません」
その時のことを思い出したのか、わなわなとした怒りに震えるアベリオンの羊牧場の厨房長として、飼料の配合を任された【大食の悪魔】。
「せっかくナザリックより取り寄せた食材を、【木の根】とまで侮辱する有様です!」
「でわ、その様な舌が肥えた羊わ纏めて。せっかくの食材【悪実】をフルコースで味あわせた後、その舌が役に立たないようであるならば、これで抜いてしまいましょう」
プルチネッラは、首から下げていた閻魔=釘抜ペンチをガチガチと打ち鳴らしながら、如何に料理するかを思案している。
「細く切り裂き、唐辛子を擦り込み、細切れに切った肉を加えていため付けるのが良いか。それとも、細い先から少しずつ徐々に削り、活きたまま煮込んで骨ごと食わせるのが良いか。あえて細切りにして、そのまま釜揚げで揚げてしまうのが良いか。いや、叩き潰し、酢で洗うのも良いと聞きましたね」
注:傍から聞く分には、新手の拷問を考えているように聞こえる。だが、大真面目に金平や柳川鍋、揚げ物、叩き悪実である。(料理談義)
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その罪状は、捕虜への虐待。人間が食べる事の出来ないものを食べさせ、精神的苦痛を与えたという。常識の違いは、後に大いなる歪となって現れる。
だが、空前の和食ブームに湧いた時代。そんな事があったのだとは誰も知らず、名を替えた【悪実】を、その子孫たちは当たり前に口にする。そんないわれがあることも知らずに。
その【悪実】は、一見すると【木の根っこ】に似ているがゆえに、誰も食べ物とは思わなかった。だが、飢えたる者には救けとなる作物である。
多種多様な試行錯誤の末、和食には欠くことが出来ない、無くてはならない名脇役と称されるほどの野菜となった【悪実】。
だが、原産は西洋であることから、如何にその当事者たちが専門外のことに関して無知であったのかが問われる。
【古字:悪実=ゴボウ 現代漢字:牛蒡】 英:Burdock
=逆境や過酷な環境にも耐えうる農作物ということから、強いという意味で【悪】の字が使われたと思われる。
原産:【ヨーロッパ】
薬用として日本に持ち込まれ、食用にも改良された。
食用とするのは日本独自らしい。
食材は様々にあり、食文化もまた様々に。
犬猫を食べる文化も、犬猫をペットとしてパートナーとみなす文化も、どちらも一方的に押し付けてしまわぬよう。
牛を神聖視する文化も在れば、犬や豚を忌避する文化もあり、ネズミが神様の乗り物として狩られない文化もまた存在する。ただし、融通し合ってそれなりに折り合いをつけている場合がほとんど。
軍事裁判:捕虜虐待(ゴボウを食べさせた)容疑
BC戦犯として、各地の捕虜収容所所長ら
判決:死刑/無期懲役/懲役五年・・・(検索結果)
注意!
これはフィクションであり、事実と虚実を絡めて、それっぽく作成しております。
概ね捏造です。