彼女と日常
短いです
それから数日後、早稲泉に対する嫌がらせは減っていった。きっと、いじめっ子には扱い辛い私がいるからだろう。
『能天気で平和ボケして素直な私』は何を言い出すか分からない。いじめという現況にあって、いじめということを理解せず怒るのだ。早稲泉はそんな私の反応が新鮮なのか、それとも今まで自分が受けていたものを分かち合う人ができたためか、以前より明るくなった。いじめられて暗く沈んでも、すぐにいつも通り笑えるようになった。
その点、久田條二の選択は間違っていなかったかもしれない。私は、彼の望んだ通り『忠犬』になってしまったようだ。
私と早稲泉は、図書館で一緒に勉強するようになった。私がテスト前になっても自発的に勉強しないから、それを見かねた早稲泉が私を誘うのだ。私にはそれを断る理由がなかった。それだけのことだと思っていたけれど、早稲泉はそれを楽しんでいるのかもしれない。一緒にいる相手が、今まで一人しかいなかったわけだから。
けれど、二人だけというわけではない。たまに久田條二も一緒にいる。最初は、監視しに来ているのかと思ったが、どうやら、ただ単に私の方が邪魔者だったようだ。どうやら、早稲泉にずいぶんと気に入られてしまったらしい。二人の時間にも、私も誘ってくるなんて。
このメンバーに内心笑いを覚える。
笑える原因は私自身だ。どう考えても二人の時間に割り込んでいる私が異質なのだ。
なのに、早稲泉は楽しそうに笑って、久田條二もそれを見て嬉しそうで。
この空間は、居心地がいい、と思う。
面倒くさいことの方が多いのに、私はこの中で異質で、邪魔者なのは分かっているのに、何故そう思ってしまうのか。
目の前の小さな幸せを見ていたいと、私はこの場に居座りたくなっている。
これから先にある面倒くさいことより、今はこの幸せを見ていたいと、思っているのだ。