彼女と友達
面倒くさいのが嫌でこんな性格を演じていたのに、どうしてこんな面倒なことばかり起こるのだろう。おかしいなぁと首をひねるが、今更どうしようもない。
まず最初に、早稲泉のノートと一緒に私のノートもボロボロにされた。いつものパターンだ。逆に、これしかできないのか。
私は怒って、
「バケツの水でも零したのかな・・・こんなところに置かず、ちゃんと言ってくれればいいのに!」
と、全く見当違いなことを言ってのける。
ショックを受けていた早稲泉は、それにクスリと笑った。
私が九条霧子に目をつけられたことで、私の友人達は、私とあまり接触しないようになった。
けれど『私』はそんなことに気付かない。彼女たちは、それを内心苦々しく思いながら、表面上いつもと同じように過ごす。
早稲泉も、その輪の中に時々入るようになった。それは、私が連れてくるからだ。
そうすると、ますます彼女達は苦い顔をする。けれど、『私』は気付かない。早稲泉は、それに気付いている。
だから、ひどくよそよそしくする彼女に、彼女たちはますます気を使うのだ。
私は、言った。
「さっき、ノートが濡れて、使えなくなっててさ。だから、今度の休み、誰かの家で写させてくれない?」
私が拝むようにそうお願いすると、彼女たちの顔色が悪くなった。
けれど、悪いようにも出来ないため、苦肉の案を出す。
「あ、だったら、私のノート貸すから、写しておいでよ」
私は大げさに喜ぶ。ノートを受け取り、「月曜日には返すから」と言う。
そして早稲泉に、
「明日うちに来れる?」と尋ねれば
「早川さんの家どこにあるか知らない」と申し訳なさそうに言われ
「あ、そうか。じゃあ、街の図書館で写そう!」と言えば
早稲泉の表情は明るくなり、「うん」とうれしそうに頷いた。
面倒なことばかりだ。人間関係も、人の感情も。