第二話 村田皓
「おっは~!カナデっち♪」
「おはよ~」
はじめはテンションが高かったり、妙に馴れ馴れしかったりしたため反応に困っていたのだけど
今では登校してきた友達とハイタッチできるようにまでなっていた。
今までの高校はどこも慣れるのに時間が掛かったけど、ここの場合は慣れるというよりも染まるというのが正しいかもしれない。
そんな風に思う。
「今日、雨降るってさ」
「え、マジ?」
雨雲があるかとベランダに出て空を見上げるが雲ひとつ無い青空が広がっている。
雨が降る気配など微塵も感じられない。
文句の一つくらい言おうと振り返ると『彼』がいた。
別に私がいたからというわけではない。
その証拠に『彼』は空を見上げたままこっちを見ない。
だが、私はそんな『彼』を見ていた。
恋愛感情などでは当然無い。
初対面の男子に一目惚れしてしまうような人間ではない。
確かに笑った顔には見とれてしまったけど・・・・・
でも、私が彼のことを見ているのは彼を見ているとなぜか・・・懐かしいような感じがするから
「カナデっち?何村田のこと見てんの?」
話しかけてきたのは一番速く仲良くなった加奈
「村田?」
「あいつの名前だよ。知らなかったの?」
「う・・・うん」
『彼』の名前は村田というらしい
クラスメイトの名前は全員覚えたつもりだったが彼の名前だけはまだ知らなかった。
「村田って、いっつも何考えてるか分かんないんだよね。暗いってわけじゃないけど、なんか人と距離置いてるって感じ?あたし、去年からクラス同じだけどあいつが誰かと仲良さそうにしてるの見たことないんだよね」
「ふ~ん」
人と距離を置いてるのか・・・・よし!
「私、話しかけてみる!」
「え?」
ポカンとしている加奈をその場に残して私は村田くんに話しかけた。
「村田くん。何見てるの?」
「・・・・・空」
「そうじゃなくて」
「・・・・今日は雨が降りそうだね」
「え?何で?」
空を見上げるが雲ひとつ無い青空が広がるばかりで雨の降る気配など無い。
再び彼に視線を戻すが彼はおらず、教室に入ろうとしていた。
彼は入る前に顔をこっちに向けて笑った。
「森さんって、将来絶対詐欺とかに引っかかると思うよ?」
「・・・・嘘つき」
思わず言ってしまった。
だって彼の笑顔はバカにしたように見えたから
「俺が嘘つき?そんなの・・・・・・昔から変わってないだろ?ナデちゃん?」
「・・・・・・・・!?」
彼は笑いながら教室へと入っていった。
・・・・ナデちゃん。
その響きが懐かしい
・・・でも、思いだせない
何か大切なことのはずなのに
「ねぇ知ってる?最近ここら辺で噂のグループ」
「知ってる知ってる!『デビル・ロード』とかっていう暴走族でしょ?」
「違うよ。そんなのじゃなくて『学校』って言うグループ」
「『学校』?」
「そう、けっこうヤバイらしいよ?何でもリーダーは【校長】とかって呼ばれてて、白い髪に赤い眼なんだって」
―――――――物語は動きだす
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