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ペンシル  作者: 人知らず
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第一話 転校生

・・・・何でこうなっちゃったんだろう?


少女はひどく悩んでいた。

今の状況を打開するための方法を考えているのだがまったく思いつかない

もう時間はあまり無い

座り込んでいる彼女の後ろの扉

その向こう側に広がる空間

彼女はその中にいなければいけないはずだった。

しかし、彼女は中にいない

それこそが彼女の悩んでいる原因だった

この場をはなれれば楽になれるかもしれない

だが、それは最後の手段だ。

とにかく今しなければいけないのは後ろの扉を開け、中へと入ること

そう中へ・・・・・・教室のなかへ

彼女・・・・もりかなではこの学校に今日始めて来た。

つまり転校生なのだが・・・・転校の当日に遅刻してしまい、今にいたるというわけである。

職員室に行き、遅刻のことを告げたので中に入っても大丈夫なはずだ。

それが出来ないのは奏が恥ずかしがり屋な為である。

教室に入ればそれで終わるはずだ。

今まで何度も転校をしたので注目されるのは慣れている。

その中に今回のような転校当日に遅刻というパターンは無かった。

遅刻という気まずい雰囲気の中で注目される。

考えるだけで嫌になる。

それでも、何とか中に入ろうと教室の中をのぞく。

教室の中では教師が黒板に文章を書き、生徒達がそれをノートに写している。

教科は国語だろうか?

それとも文章の所々に英語の混ざっているところを見ると英語か?

だが、数字や科学記号まで混ざっている。

・・・・・奏はそれ以上考えるのを止めて教室を見渡す。

奏の視線が一番後ろの列までいった時、奏の目は一人で止まった。

窓際の一番後ろの席

教師の目が最も届きにくく、日差しが暖かい最高の位置

そこに彼はいた。

他の生徒のようにノートに黒板の内容を写しているが途中で別のノートを取り出して何かを書いている。

その様子が気になったのかも知れないが、彼のことをしばらく見つめていた。

すると、彼と目線が合った。

まずい!

慌てて隠れようとするが彼の次の行動で私の動きは止まった。

彼が・・・・・笑ったのだ。

けなすような感じでもなく、馬鹿にするような感じでもなく微笑むような感じで

その笑顔に何故か引かれた。

それが何故なのかそのときの私には分かっていなかった。









「お前、そこで何してる?」


声は後ろから聞こえた。

恐る恐る振り返るとそこには白と黒の混じった特徴的な髪色の教師が立っていた。

教師と分かったのは彼が白衣を着ていたからだ。

年は若く見える。


「え・・・え~と・・・」


「とにかく教室に入ってから話しようか?うん?」


「・・・・・はい」


仕方なく扉を開けて教室に入る。

同時に教室内の視線がいっせいに私に集まる。

・・・・・だから嫌だったのに

遅すぎるがもっと早めに入っておけばよかったと後悔した。

いつの間にか先に来ていた先生と交代したさっきの教師が私の隣に立つ。


「は~い、全員注目~」


全員注目してるって!


「こいつが朝言ってた転校生の・・・・誰だっけ?」


忘れるなよ!

まあ、いいか

教室に入ればこっちのもの!


「おはよう!こんにちは!初めまして!今日から転校してきた森奏で~す!字は森の熊さんが楽器を奏でるって書くから。遅刻しちゃってテンションがいまいち上がんないけど元気印でがんばりま~す!容姿端麗にして彼氏無しのお買い得物件なんで男子のみんなはどんどんアタックしてきて頂戴ね~。当然、女子のみんなも仲良くしてね」


クラスのみんなは唖然として見ている・・・・と思ったのだが


「奏ちゃ~ん。俺と付き合わない?」


「だめだよ奏ちゃん。コイツかなりの女たらしだから」


「転校する前ってどこの学校だったの?」


「髪の色が茶色っぽいけどそれって地毛?」


クラス中が騒がしくなる。

今までの高校ではなかったパターンだ。

さすがというかやっぱりというか・・・・

ある意味さすがだな・・・赤月高校

県内屈指の問題校

噂通りな気がする。


「お前等うるさいんだよ。頭に響くだろうが」


「先生また二日酔いかよ!」


「酒臭いんだけど~」


「黙れ、お前等にはこの痛みがわかんないんだよ。いてててっ」


・・・・・本当に問題校だ。


「あ~えっと森の席は・・・・・村田の隣だな」


「村田?」


先生の言う席の隣にいたのはさっき笑っていた彼だった。

彼はこっちを向いて笑っている。

下心のまったく感じられない笑み

彼はその笑みをずっと私に向けていた。

私がその笑みの理由を知るのは少し後の話だった。


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