絡み合う未熟
俺の中で柊さんの言葉がこだまする。
『もっと君のことを知りたいな』
『君はもっと自己評価を上げないとダメだと思うな』
『ね?君のことを教えてよ』
なんでそんなに俺を気にかけてくれるんだろう。
自分のことすらわからない奴に。
「蒼介!蒼介!」
「うわっ!!なんだ祐一か。」
「僕達もいるよ。」
「悪い。で、なんだ?」
「蒼介、最近なんかあったでしょ。
ちゃんと寝れてる?」
「いや……なんもないけど」
「ほんとかぁ?
この前もなんかボーっとしてる時あったよな。
マジなんでもいいからさ、なんか話せることあったら話せよ。
俺絶対に力になるから。」
「んーと、じゃあさ、俺ってなんだと思う?」
「「「?」」」
「あっ」
驚いた。
ずっと考えていたこととはいえ無意識に口に出すとは。
「なにそれ。蒼介は蒼介でしょ。」
「うーん、もうちょっと具体的にある?」
「それが俺もわかんなくて悩んでたんだよ。」
「え?そんなの簡単だろ?
蒼介は俺らの友達で、底なしに仲間思いの奴で、困ってる人がいたら助けたくなっちゃう優しい奴!」
「っ!?」
「アハハ、やっぱこういう時のバカは役に立つね!」
「こんなの俺なら絶対言わない。」
「はぁ?事実だろうが!事実だろうが!」
………また、言われた。
『優しい』と。
そんなんじゃない。
俺は昔は暴れた反動で大人しくなっているだけの、ただの元ヤンでしかない。
(順平・浩太郎・祐一SIDE)
俺(僕)たちは蒼介が好きだ。
顔と体格のせいで初対面には敬遠されがちなところもあるけど、俺(僕)たちは蒼介のどこまでも深い優しさを知っている。
蒼介みたいないい奴にはずっと笑っててほしいんだ。
「ねぇ、順平」
「どうしたの?浩太郎。」
「蒼介はなんであんなことを俺たちに聞いたんだと思う?」
「僕もそれは気になってたんだ。
蒼介はいつも何か考えてそうで、実際何も考えてないことが多いから、あんなこと考えるような人じゃないと思うんだけど。
最近心ここにあらずなことが多いし、何かあったのは間違いないんじゃないかな?」
「うん、それはほぼ確定。
問題はその『何か』なんだけど、でもあいつ自分からは言ってこないじゃん。」
「それで、浩太郎はどうしたいの?」
「俺としては吐かせるか、後をつけてでも蒼介の悩みを知りたい。」
「それはなんで?」
「順平も俺が入学直後に喧嘩して、その物言いのせいで浮いてたのは知ってるでしょ。
俺はきつい言い方しかできないし、こんなに頑固だから喋った時はすぐ否定し合いになるんだけど、蒼介は俺を否定せずに、でも丁寧に対話してくれた。
そんな蒼介と話してたらいつのまにかこの学校の中に俺の場所が生まれたんだ。
俺がここで馴染めたのは蒼介のおかげ。
だからこそ蒼介の悩みは解決してやりたいんだ。」
「僕も蒼介の悩みはぜひ解決したいよ。
でも僕はそのやり方は違うと思う。」
「なんで…」
「浩太郎は蒼介を信頼してる?」
「そりゃもちろん」
「なら蒼介が自分から話してくれるまで待ってみない?」
「でもそれじゃいつまでも蒼介は悩んだままで…」
「浩太郎、誰にでも隠したいことや誤魔化したいことはあるし、蒼介のことだから自分が何かおかしいことにもきっと気づいてないよ。
でも僕たちは親友だろ?
大丈夫、蒼介はいつか僕たちを頼ってくれるよ。
それまで待つべきだと思う。
僕たちにあの質問をしたのがいい証拠だよ。
蒼介はちゃんとこっちを信頼してくれてる。
ならこっちがやるのは信頼を返すことだよ。」
「そっか、信頼出来てなかったのは俺の方…。
ありがとう、順平。
俺、友達とか言ってる割には全然蒼介のこと知らないんだね。」
「あはは、僕も蒼介のことは全然知らない。
でもそれは浩太郎もそうだし、祐一ももちろんそう。
僕たちは皆まだ青くて、それは当たり前のことなんじゃないかな。」
「確かにそう、そういうものかもしれない。
お前に聞いて良かったよ、順平。」
「それなら良かったよ。」
俺(僕)たちはまだ未熟で、それでも信頼しあっていたい。
誰が何を考えてるのかはわからないけど、誰かが悩んでたらそれを打ち明けられる存在でありたいし、全力で力を貸してやれる仲間でありたい。
俺たちが爺さんになっても互いに信頼し合える存在でありたいし、一緒にいて良かったと思えるものでありたい。
今の俺(僕)たちはまだ未熟で、だからこそ無償の信頼が必要なんだ。




