表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

蒼い軌跡

「ここでは背理法を使って答えを導くのであるからして、√3を有利数と…」

俺の通う私立襄陽学園高等学校では、いつもの通りの退屈な授業が行われている。

俺は窓の外を見ながら聞き流す。

慣れてきた毎日の光景に、思わずため息をつく。

授業が終わったら飯を食って…その次は何の授業だ?

今日の学食の日替わりメニューを思い出しながら、そんなことを考える。

入学をして一ヶ月、この平和な日常には徐々に俺の生活の一部に溶け込んでいる。

そんな感覚はどうにも気持ちがいい。


「蒼介、今日もサッカー、するんでしょ?」

「蒼介、今日は俺と1on1。キーパーは祐一で」

「え、俺キーパーかよ…」

俺、山井蒼介やまい そうすけとこの3人、後藤順平ごとう じゅんぺい吉野浩太郎よしの こうたろう牧田祐一まきた ゆういちは入学してからよくつるむようになった。

俺は体躯や見た目からか怖がられることも少なくないのだが、3人は初対面から俺をすんなりと受け入れてくれた。

朝は挨拶から始まり、昼は一緒に飯を食って遊び、最後に一緒に帰る。

俺はこの4人の中に俺の居場所を感じている。

惜しむらくは、ここが男子校ということだろうか。


「おい蒼介、帰るぞ一緒に」

「あ、わり。

今日俺バイトあんだよ。」

「マジかよー。

お前もこの時期からバイトかぁ。

俺も探さないとなぁ。」

「いや、祐一には無理だと思うよ。

バイトって面接あるんだよ?」

「そもそも履歴書すらまともに書けないでしょ。」

「お前らぁ!」


3人と別れて俺はバイト先へ向かう。

古風な感じの漂う喫茶店で、初見で俺が思ったよりは繁盛しているらしい。

「山井くん、こんにちは。

着替えたら会計をお願いするよ。」

「はい。わかりました。」

この初老の男性が店長だ。

初バイトで緊張もあったが、この人はずいぶん俺に良くしてくれている。

「あ、蒼ちゃん!聞いてよ〜うちの男子がさぁ〜」

「仕事してください。」

榊原藍さかきばら あい先輩。

茶髪を下ろした美人で、気さくな性格をしている高校2年生。

しかし仕事中にかまってくるのは勘弁してほしい。

ほら、今だってお客さんが困惑してるだろ。

いい人ではあるのだが。

コーヒーとケーキの匂いが混じり合ったこの雰囲気は、俺を落ち着かせてくれる。

この時間がゆったりと流れていく感じが俺は好きだ。

騒がしい学校と、落ち着いた喫茶店。

この正反対のような、それでいて俺に落ち着きを与えてくれる場所。

中学の時には見えていなかった、新しい風景。

前とは違う、安心感。


そして、それとはまた違った、ずっと変わらない場所。

家では母が料理を準備して待ってくれている。

無邪気に遊んだ小学生の時、少しグレた中学時代、そして今。

ずっと変わらないものもまた、俺の中の一部として存在感を放ち続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ