自転車しゃぼん
初めて見る大きさ!
サイクリングしていると、突然眼前に玉虫色の光を放つ巨大シャボンが現れた。直径3メートルといったとこ。
独身女性の咲子はつまんない毎日にあくびばかりし涙を零していたから、エキサイトしつつ大きなフワフワのシャボン玉に(割っちゃえ!)と言わんばかりに自転車で突っ込んだ。
だが、割れない。
咲子は自転車ごとまん丸の球体に吸い込まれ、天高く舞い上がって行った。
(あたしがいなくなっても、誰も驚かないのよね、身寄りがないからさ)
施設で育った巻き毛のツインテールの似合う咲子はカワイ子ちゃんだ。今恋人はいない。現在失業保険で何とか生活している。
オフィスで燃え尽き、毎日ボーっと(面白い事ないかな~)なんて思いつつ過ごしている。
そんな流石の咲子も怖くなった。
「え? なーに、これっ?!」
が、しかしシャボン玉はだんまりだ。
「お――い! 助けて~!」
眼下に向かい叫ぶが、誰一人見向きもしない。皆自分で一杯なのかな。
空を見上げる人も一人としておらず、皆12月をせわしなく歩いて行く。
「おーい!」叫び疲れ、心配しつつもポヨポヨするシャボンの中で自転車のスタンドを立てて降りた。穴が開くこともなく順調にお空を目指すシャボンは頑丈らしい。
お尻をおろし、シャボンの中で座り込んだ。不思議。子どもの頃に遊んだシャボン玉と同じ手触りなのに、弾力があり割れないんだもの。
(このままあたし宇宙まで行っちゃうの? そんな事にでもなったら息ができないんじゃ……)
小さな頃、どこかの子どもがうっかり手放してしまった風船をお空に見つけると、心がざわついたものだ。
けれど……(今あたしは、誰の目にも入らないのかな)
とても寂しい気持ちになる咲子。
その瞬間だ! パンッ! と柏手のような音が1回鳴り、自転車と咲子が落下していく。
ドサ! こんもり柔らかな土を沢山積んだトラックの荷台に無事咲子と自転車は着地した。土のクッションでケガ一つない。
運転手が異変にすぐ気づき車を停め荷台へやって来た。
「ン……? 君何してるの?」
金髪で華やかな凄くカッコいい人。見た目とは対照的に穏やかな口調、優しいムードだ。
咲子はその雄太という男性に事情を説明した。
雄太は咲子を信じてくれた。
その日から、咲子は退屈にオサラバした。
これから咲子は、巨大シャボンに頼らず、幸せを作っていこうとおもうのです。




