第6話 王宮から“管理官”が来ました。現場の空気が一瞬で死にました
その日、
領地の空気は――
目に見えて重くなった。
理由は単純。
「王宮管理官、
ただいま到着しました」
(来た)
(来ちゃった)
◆ 王宮管理官・第一印象
現れたのは、
三十代半ばほどの男。
背筋は一直線。
服は完璧。
書類の束が、
やたら分厚い。
「王宮管理官、
エドガー・ルーヴェンだ」
名乗りが、
すでに硬い。
「本日より、
この領地の運営を
“補佐”する」
(補佐、
ね)
(その目、
監督官)
◆ 王宮側の本音(視察後)
――少し前、王宮。
「視察団の報告では
“主導者不明”だそうだな」
「統治しているのに、
していないように見える」
「危険だ」
そう結論づけられた。
だから送られた。
管理できる人間を。
◆ まず出たのは「書類」
「現状把握が先だ」
エドガーは、
淡々と指示を出す。
「業務一覧」
「許認可書」
「予算配分表」
「決裁フロー」
次々に並ぶ単語。
市場の商人たちが、
遠巻きに
こちらを見る。
(あ、
嫌な予感してる)
◆ 現場、静かに止まる
「……今日は
何をすれば?」
農夫が、
不安そうに聞く。
「指示が出るまで
待て」
エドガーが答える。
――待った。
市場の手が止まり、
倉庫の修繕も止まる。
(あ)
(止めちゃった)
◆ 代官、胃が痛くなる
「……お嬢様」
代官が、
小声で言う。
「空気が……」
「ええ」
(死んだ)
(完全に)
◆ 管理官の疑問
「不思議だな」
エドガーは、
帳簿を見て
眉をひそめた。
「命令系統が
存在しない」
「統治構造が
曖昧だ」
「だが……」
数字は、
改善している。
(王宮式だと
理解不能)
◆ ルナリア、何もしない
「領主殿」
エドガーが
私を見る。
「改革案は?」
「ありません」
「新制度は?」
「ありません」
「……では、
何を?」
私は、
正直に答えた。
「止めただけです」
エドガー、
固まる。
◆ 王宮管理官の内心
(そんな馬鹿な)
(統治とは
管理することだ)
(管理せずに
成果?)
理論が、
崩れ始めていた。
◆ マリアの一言(追撃)
「……人、
疲れてます」
マリアが、
小さく言う。
「今の指示、
“待て”が多いです」
エドガーが
眉をひそめる。
「秩序のためだ」
「……秩序は、
壊れてません」
(正論)
◆ 数時間後
夕方。
帳簿の数字が、
少しだけ
悪くなっていた。
ほんの少し。
だが、
確実に。
◆ エドガー、焦る
(おかしい)
(私が来てから
停滞している?)
それは、
王宮では
あり得ない発想。
◆ 王宮の誤算・その6
王宮は、
こう考えていた。
「管理すれば、
正体が見える」
だが現実は。
管理した瞬間、
現場が止まった。
そして、
それを
誰も
望んでいなかった。
◆ 夜、代官の本音
「……お嬢様」
「このままだと、
数字が
戻ります」
私は、
静かに頷いた。
「ええ」
(試験、
次の段階ね)
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