第13話 王宮からの招待状は、畑の真ん中で開封されました
封筒は、
土埃まみれだった。
「……お嬢様」
代官が、
少し困った顔で
差し出してくる。
「王宮からの……
招待状、です」
(場所)
(今ここ?)
◆ 開封場所:畑のど真ん中
私は、
鍬を置いた。
周囲では――
農夫たちが
普通に作業中。
「……開けます?」
「ええ、
今で」
代官が
ぎょっとする。
「今!?」
「今が
一番いいわ」
(後で読むと
余計な感情が
乗る)
◆ 封蝋:ピカピカ
王宮の封蝋は、
やたら
立派だった。
(この畑に
似合わない)
私は、
ぱきっと
割る。
◆ 読み上げ(静かに)
「……“王宮魔法局より
領主ルナリア殿へ”」
周囲の動きが、
止まる。
畑の空気が、
一瞬だけ
静まった。
◆ 内容(要約)
特殊魔法研究に関し
関係者として
短期間の
意見交換をお願いしたく
王宮への来訪を
ご検討ください
(検討)
(便利な言葉)
◆ 現場の反応①:素直
「……行くんですか?」
農夫の一人が
聞く。
「王宮、
ですよね?」
私は、
首をかしげた。
「さあ?」
(さあ?)
◆ 現場の反応②:現実的
「行くなら
畑どうする?」
「代官殿、
任せていい?」
代官が、
即答する。
「問題ありません」
(即答)
◆ 現場の反応③:雑
「王宮って
飯、うまいの?」
「どうだろ」
「戻ってくる
よな?」
(戻る前提)
◆ 代官、耐えきれず
「……お嬢様」
「王宮の
“招待”です」
「普通は
もっと……」
「もっと?」
私は、
首を傾げる。
「緊張する?」
(してない)
◆ 王宮の想定(回想)
王宮は、
こう想定していた。
・封を切る
・動揺する
・相談する
・身構える
だが現実は。
・畑
・土
・農夫
・鍬
(想定外)
◆ 再度、文面を見る
「……“関係者として”」
私は、
その一文を
指でなぞる。
「なるほど」
代官が
身を乗り出す。
「どうなさいます?」
◆ ルナリアの結論(即)
「条件を
つけます」
代官、
瞬き。
「条件?」
「ええ」
(交渉
する気だ)
◆ 条件①:期間
「“短期間”と
あります」
「七日で
帰ります」
(王宮、
嫌がる)
◆ 条件②:同行者
「管理官エドガーを
同行させます」
代官が
目を見開く。
「王宮が
一番
嫌がる人選……」
(だから)
◆ 条件③:現場連絡
「毎日、
領地と
連絡を取ります」
「遮断は
不可」
(監視返し)
◆ 現場、納得
「……それなら」
「行っても
いいんじゃね?」
農夫が
言う。
「王宮、
見てみたいし」
(観光気分)
◆ 代官、頭を抱える
「お嬢様……」
「王宮相手に
条件を
出す方は……」
「います?」
「今、
います」
(私)
◆ 王宮に送る返事(その場で)
私は、
紙を取り、
さらさらと
書いた。
ご招待、
ありがとうございます
条件を
満たせる場合のみ
伺います
条件は
同封いたします
代官が
呟く。
「強い……」
◆ 王宮の誤算・その13
王宮は、
こう思っている。
「呼び出せば、
来る」
だが現実は。
“来るかどうか”を
決めているのは、
現場だった。
◆
その日の夕方。
王宮執務棟で、
返書が
開封される。
「……条件?」
議長が
眉をひそめる。
そして、
最初の一文を
読む。
「滞在は
七日間のみ」
会議室が、
ざわついた。
王宮は、
まだ知らない。
これは交渉ではなく、
“通知”だということを。
ルナリアにとっては、
王宮の呼び出しも
日常の延長だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本作は、この話をもって完結となります。
王宮からの招待も、
世界を動かす立場も、
この物語では「特別な終着点」にはなりません。
畑で考え、
現場で決め、
戻る場所を持ったまま外へ出る――
その選び方こそが、この物語の結論です。
呼ばれたから従うのではなく、
選んだから動く。
そして、帰る前提で世界と向き合う。
それ以上の続きは、
どうか読者それぞれの想像に委ねさせてください。
最後までお付き合いいただき、
本当にありがとうございました。
この物語はここで一区切りですが、物語を書く手はまだ止まっていません。
ほかの世界の話もありますので、よければ覗いてみてください。




