第1話 王宮に呼ばれたと思ったら、試験で草原に捨てられていました
このお話は、
『悪役令嬢ルナリアの破滅回避ラブコメ学園生活(通称:ルナラブ)』
の続編です。
……ですが、ご安心ください。
前作を読んでいなくても、
ルナリアはちゃんと困りますし、
ちゃんと巻き込まれます。
学園で破滅フラグを避けきった結果、
「優秀」と誤解され、
なぜか王宮に目をつけられ、
気づいたら草原に立っていました。
ええ、
王宮に行く予定だったはずなのに、です。
この物語では、
前に出ない悪役令嬢が、
「何もしていない」と言い張りながら、
なぜか領地を立て直していきます。
もし、
・学園でのドタバタラブコメを最初から楽しみたい方
・ルナリアがなぜ全力で目立ちたくないのか知りたい方
は、ぜひ
『悪役令嬢ルナリアの破滅回避ラブコメ学園生活』
からどうぞ。
もちろん、
「とりあえず今の話から」読んでも問題ありません。
それでは、
学園の外で始まる
前に出ない悪役令嬢の静かで騒がしい日常を
ゆるっとお楽しみください。
まず、はっきりさせておきたい。
私は――
異世界転生者である。
前世は、
ブラック企業で
「調整役」「尻拭い」「責任だけ重い係」
を担当していた社畜OL。
そして今世では、
よりにもよって。
――悪役令嬢。
◆ 悪役令嬢の末路は、だいたい悲惨
学園生活では、
破滅フラグを回避するために
目立たず、騒がず、前に出ず。
その結果どうなったか。
「優秀」
「冷静」
「信頼できる」
……やめて。
(褒めないで)
(それ、全部
フラグだから)
◆ そして、王宮に呼ばれた
「これは……来たわね」
王宮からの召喚状を見た瞬間、
私は悟った。
――評価されすぎた。
この世界の王宮は、
優秀な人材を
放っておかない。
使えるなら使う。
邪魔なら遠ざける。
そして――
試す。
◆ 王宮会議という名の「柔らかい罠」
「形式的な任地ですから」
「経験として」
「失敗しても問題ありません」
そう言って、
重臣たちは
全員、にこやかだった。
(あ、これ)
(完全に
“試験”だ)
しかも、
失敗したら
静かに評価を落とされるタイプ。
(点数、
つけられてる)
◆ で、今ここ
「では、
ルナリア・ヴァレンティーナ様」
王宮の使者が、
爽やかに一礼した。
「こちらが
貴女の任地となります」
私は、
前を見た。
草。
草。
草。
(……)
(王宮、
どこ?)
◆ 僻地という名の“現場”
「人口、
約三百名」
(少なっ)
「主な産業は……」
使者は、
一瞬、黙った。
「……特にありません」
(正直)
(そして
ひどい)
◆ 理解した瞬間
(なるほど)
(これは)
(“王宮に来させない”
ための試験)
しかも条件は、
・資源なし
・人手不足
・失敗しても王宮は困らない
(完璧な
地雷原)
◆ 代官の一言が重すぎる
「……お嬢様」
代官は、
深く頭を下げた。
「この領地は、
立て直しが
ほぼ不可能です」
(言い切った)
「ですので……」
彼は、
少しだけ
声を落とした。
「どうか、
無理を
なさらないでください」
(優しい)
(そして
諦めてる)
◆ ルナリアの結論(前世込み)
私は、
深く息を吸った。
(前世でも)
(無理な改革で
潰れる現場、
たくさん見た)
だから――
「分かりました」
私は、
静かに言った。
「まず、
何もしません」
「……はい?」
◆ 何もしない=放置ではない
「改革もしません」
「立派な計画も
立てません」
「英雄にも
なりません」
代官が、
完全に混乱している。
(大丈夫)
(“何もしない”
のが
一番効く
局面もある)
◆ ただし(重要)
「税の取り立ては、
一旦止めてください」
「不要な書類仕事も、
全部停止で」
「人が休めるように」
(……あ)
(これ、
“何もしてない”
判定、
ギリギリ)
◆ 王宮サイド――静かな会議室にて
王宮の奥。
重厚な扉の向こうで、
数名の重臣が円卓を囲んでいた。
「――で?」
年配の貴族が、
指先で机を軽く叩く。
「ルナリア・ヴァレンティーナは、
本当に王宮に呼ばなくて
よいのか?」
その言葉に、
別の男が静かに笑った。
「呼べば、
手に負えなくなります」
◆ “優秀すぎる”という問題
「学園での評価を見ましたか?」
「対立を生まず、
命令もせず、
だが結果だけを出す」
「……非常に、
扱いづらい」
別の貴族が、
苦々しげに言う。
「忠誠を誓わせる前に、
自分の立場を
作ってしまうタイプだ」
(それは、
王宮にとって
危険)
◆ 試す理由
「だからこそ、
“試す”のです」
中央に座る男が、
淡々と告げた。
「王宮に置く価値があるか」
「それとも、
地方で静かに
埋もれてもらうか」
「――あるいは」
わずかに、
口角が上がる。
「失敗してもらうか」
◆ 僻地という名の安全装置
「任地は?」
「資源なし」
「人手不足」
「王宮にとって
影響ゼロ」
「失敗しても
問題は起きない」
誰かが、
満足そうに頷いた。
「成功したら?」
「……それはそれで、
面白い」
(成功すれば、
利用価値がある)
(失敗すれば、
評価を下げて終わり)
◆ 王太子の沈黙
その場で、
ただ一人
発言しない人物がいた。
王太子レオンハルト。
「……彼女は」
ようやく、
口を開く。
「失敗するような
人間ではない」
一瞬、
場の空気が
張り詰めた。
◆ だが、決定は覆らない
「だからこそです」
重臣の一人が、
静かに返す。
「王宮の管理下に
置くか」
「それとも、
王宮の外で
力を持たせるか」
「判断するには、
現場を
見せる必要がある」
結論は、
最初から
決まっていた。
◆ 会議の結論
「――では」
「ルナリア・ヴァレンティーナを
試験任地へ」
「期限は未定」
「評価基準も、
未公開」
書記官が、
静かに記録する。
◆ 最後の一言(皮肉)
「……彼女が
“何もしなかった”
場合は?」
誰かが、
冗談めかして
言った。
だが。
誰も、
笑わなかった。
◆ 王宮の誤算
王宮は、
こう思っている。
「彼女は、
戸惑い、
何か派手な手を打ち、
失敗する」
だが現実は。
異世界転生者で、
現場の怖さを知っている悪役令嬢
だった。
◆ 夜、独り言
簡素な部屋で、
私は天井を見上げる。
「……試験、
ね」
(受けるけど)
(王宮の
思い通りには
ならないわよ)
外では、
風が草を揺らしていた。
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