第4話 喫茶店 哲学者のたまご
喫茶店 哲学者のたまご
手を伸ばすことに意味があるんだよ。顔を見ることに意味があるんだよ。愛してるって言葉にすることに意味があるんだよ。君もそう思わない?
真っ白な神殿みたいな喫茶店の名前は『哲学者のたまご』という名前だった。
あまり気にしたことはなかったのだけど、あらためて考えてみるとどうしてそんな名前なのか不思議に思った。
哲学者のたまごはえみのお気に入りの居場所で、えみはいつも待ち合わせのときはこの哲学者のたまごで会いたいって言ったし、朝のお茶会をしようと三人で決めたときも、お茶会の場所を哲学者のたまごにしたいと言ったのはえみだった。(もちろん哲学者のたまごはとても良いお店だったので、そのことは全然良かったのだけど、えみが哲学者のたまごのことをなんでこんなに気に入っているのかは、聞いたことがなかったから知らなかった)
「ごきげんよう。とってもいい朝ですね」
と哲学者のたまごにやってきたういはにっこりと笑って、三人のことを見ながらそう言った。
ういはえみ、すい、あいと同じ学園の一年生の生徒で、きている服も三人と同じ水色のりぼんの白い制服だった。白い靴下と学生靴も同じだった。
ういは手を重ねて、まっすぐに立っている。背が高くて、腰まである長い黒髪に白いりぼんをまいている。
小さな顔で、目は大きくて、その見ているとどきどきしてしまうような可愛くて綺麗な顔はいつも笑顔だった。
ういは学園の中で有名な生徒だった。
お嬢様たちが通う学園の中で美しい人はたくさんいたのだけど、(えみやあいも、とっても美しかった)その中でもういは美しさの中では、学園で一番美しいと噂されていた生徒だった。
美しさにおいては三年生と二年生の先輩にそれぞれ一人ずつ、とっても有名な生徒がいて、一年生のういと合わせて三人の中で誰が一番美しいのか、よく学園の生徒たちの中で話されたりしていた。
その話の中では、ういが一番美しいと言われることが多かった。三年生と二年生の先輩たちは女神のように美しかったけど、すいもういのほうが美しいとこっそりと思っていた。
美の女神。
学園の中でおこなわれる学園祭の大きなイベントとして、美の女神を決める催しが行われるのだけど、今年の美の女神はういだろうって言われていた。(美の女神は美しさだけではなくて、お嬢様としてのいろいろな作法や見識が評価されるのだけど、ういの美しさは圧倒的であり、美の女神になるだろうって言われていた)
三人はういに挨拶をして、ういはあいている椅子に座った。
白くて丸いテーブルには椅子がもともと四つあった。(三人でお茶会をするときはいつも一つの椅子がからっぽのままだった)
その四つの椅子が全部誰かの存在で埋まって、えみはなんだかちょっとだけ嬉しそうにしていた。




