第2話 これはきっと意味なんてないお話なんですよ。
これはきっと意味なんてないお話なんですよ。
たまごが大好きな美しいお人形みたいな哲学者
哲学者は死にふれたことがある。
だから哲学者は死についてみんなよりも少し早くに考え始めるのだと思う。
哲学とは死について考えることだと思うから。
えみはまるでお人形さんみたいだった。美しい黒髪が綺麗で、肌は白くて、顔は小さくて瞳は大きかった。
学園の水色のりぼんと真っ白な制服を着ていて、白い靴下をはいていて、ぴかぴかの学生靴をはいている。いつも同じまっすぐな姿勢で、いつも同じ喫茶店の席に座っている。
すいも同じ学園の水色のりぼんと真っ白な制服を着ている。靴下も靴も同じものだった。すいはえみの前のテーブルを見る。そこには厚手のトーストとゆでたまごとホットココアがある。
それはえみのいつもの朝ごはんだった。(たっぷりとバターを塗ったトーストには一口かじったあとがあった)
えみは白い月をつまむ指の形のままで手を動かして、銀のたまご立ての上にのっているゆでたまごを今度は本当につまんだ。
それからこんこんと銀のたまご立てにたまごをあてて殻にひびを入れると丁寧に殻を剥いて、それからなにもつけないままで、つるっとした美味しそうなゆでたまごを口に運んで一口食べた。
ゆでたまごはえみの大好な食べものだった。
もぐもぐと口を動かしながらえみは満足そうににっこりと幸せそうに子供みたいに笑っている。
すいはテーブルにやってきたメイド服姿の清楚で綺麗な店員さんに、自分もいつものように朝ごはんを注文した。
厚手のベーコンと目玉焼き。それからチーズとハムのサンドイッチ。飲み物はミルクをたっぷりと入れたアイスコーヒー。
それがいつものこの喫茶店ですいの注文する朝ごはんのメニューだった。
「あいはまだきていないんですか?」
注文したメニューがテーブルの上にそろったところで、銀のカップに入っているアイスコーヒーを飲みながらすいが言った。
「はい。遅刻です。きっとまだ寝ているんだと思いますよ。昨日は夜遅くまで起きていたみたいですから」
と初等部の生徒みたいに、ほほを膨らませて不満そうな顔をしてえみは言った。




