第1話 死を思う。いつか死んでしまう君のために。愛している君のために。
哲学者のたまご 君と世界を救うために。愛している君のために。
死を思う。いつか死んでしまう君のために。
えみ 少女 十六歳 哲学者 考える人
すい 少女 十六歳 運動好き 動く人
あい 少女 十六歳 お金持ちのお嬢様 お金を出す人
道を見失うときがある。道がなくなってしまうときがあるのだ。それだけじゃない。自分がばらばらになってしまうこともある。どこまでも深い闇の中に落っこちていくときもある。心が真っ暗になってしまうこともある。
そんなときに、私はいつも君のことを思い出します。君は光だから。
朝のお嬢様学園でのお茶会
えみと会うときはいつも決まって、えみの大好きな静かで高級な真っ白な喫茶店だった。お嬢様学園の敷地の中にある、生徒たちからとても人気のあるそのお店の決まっている席に、いつもえみは一人で座っていた。
緑色のテラスにある光の差し込んでいる、真っ白な丸いテーブルと背もたれのある豪華な椅子のある、絵本の中に描かれているおとぎ話の中に出てくるような美しい席だった。
すいが早起きして、朝、ハーフパンツのランニングウェアを着て、いつもの道を走ってから学生寮の自分の部屋でシャワーを浴びて、制服に着替えて、ゆっくりと朝のお散歩をしながら喫茶店にやってくると、そこにはえみがいた。
えみはどこか遠い空を見ていたのだけど、すいがやってくるとすいをみてにっこりと笑って、可愛らしい小さな手をふってすいにおはよう、と声を出さないで小さな口を動かして言った。
すいはにっこりと笑うと、えみに手をふって、口だけを動かして、おはようと言って、それからすぐにえみのいるところまで歩いていった。
すいがいつもの自分の椅子に座ると、えみは可愛らしい白いゆびを動かして空に向けた。
青色の美しい空。
その空の中には小さな白い月が浮かんでいる。
「月ってまるで小さなたまごみたいじゃないですか?」
青色の美しい空に浮かんでいる小さな白い月を見ながら、その小さな白い月を片目をつぶって、遠近法で、自分の小さな指でつまんで持つようにしながら、嬉しそうな顔をして、そんなことを(まるで大発見をしたみたいにして)えみは言った。




