【下ネタ注意】突如発生したTS病(仮称)に付いての報告
下ネタが交じっておりますので、苦手な方は回避をお願いします。
――――本日は、2ヶ月前に突如発生が確認された性転換事案、仮称TS病についての報告会に参加して下さって、ありがとうございます。
――――現在もこの謎の症例は世界規模で拡大しており、原因の解明・研究・対策の確立は急務となっております。
――――今回は世界規模の会合に先駆けて、国内向けにこの症例研究の第一人者から、現在判明した事柄をここで報告し、国内での拡大対策の下地にしていただければ最良です。
――――では、第一人者である星天画 希の登壇です。
「あ、ども。ご紹介になった星天画希です。 研究者の皆さんは、恐らく内心で『このエセ研究者め』なんてお思いかと思います」
演説を始めていきなりブチかます希に、鼻白んだり、小さく吹いたり、真顔のままだったり、頷いていたり。
それはもう色々なリアクションを示す参加者達を見て「だよねー」と気のない同意を希自身がする。
「だって大学の医学科に在籍した記録も、独学で医療知識を得た訳でもないのが、なんで第一人者になるんだよって俺自身でも思いますもん」
このカミングアウトには、誰も反応しない。 周知の事実で、何を今更ってやつなので。
「ホント、なんで第一人者に担ぎ上げられちゃったんでしょうね? 俺はただ、動画投稿サイトで俺自身の性癖であるTSについて、現実で突如人類が性転換してしまう奇病が発生したら? って妄想語りをしていただけの変態投稿者だっただけなのにね」
こう自嘲して苦笑する希に、研究者達も釣られて苦笑。
そんなトークをカマしている希の容姿だが、総合的に見て地味である。
街行く人々に埋もれる地味チノパンに白シャツにヨレた地味ネクタイに太いフレームの地味な丸眼鏡、それとボサボサの髪。
目立つ部分と言えば、よく見ればビックリするほど整った顔立ちと、一部のグラビアアイドルでしか見ないような特大ロケットおっぱい。
「アレかな? 現実では絶対に起こらないと思ってた妄想みたく、俺自身もTSしちゃったのを動画でネタにしたのが偉い人に見つかって、誰も研究出来なかった分野で妄想だろうと知識が大量にあって旗頭にしやすかった……とか?」
この発言に研究者達は一斉に首をひねる。
ひねっているが、この会場の目立たない隅っこの方にいる研究者らしくない誰かは、満足そうに大きく頷いている。
「まあ挨拶はここまでとして、皆さんもご存知でしょうが、まず発生直後からの状況確認をしましょうか」
そう言って一度台から降りて目立たない所へ移動し、進行の人が朗読。
まず発生した国が公表され、どう変化したかの確認。
男女で発生数や、発生率。両方とも同じでどっちの性別が発生し易いとかは無いと確認。
それから短期間で研究出来たことの羅列。
それが終われば、希が再び台に。
「改めて。 俺みたいな医学知識も無い特殊な癖の者の音頭に応じて、検体の募集に沢山応じてくれてありがとう。 おかげでTSしたのは俺だけじゃないし、異性の体になって変わった部分への対応も出来るようになった」
私的なネタも含めて、深く深く頭を下げる希。
頭を上げた頃には、いつも通りのちょっと無気力な顔になっている。
「では、まずTSした後の遺伝子はどうなっているのかから。 結果は、遺伝子や染色体は性別や容姿に合わせて変わったけど、遺伝子そのものは血の繋がった両親のものであると判明しました」
ほう、と関心する声が漏れる。 一部はその漏れた声を聞いて満足そうに笑む研究者がいたが、恐らくその遺伝子を検査した関係者なのだろう。
「民間のじゃなく国家予算で潤沢に使った最新鋭の検査機でこの結果だね。 ちなみに俺のTSする前の顔はブサイクだったんだけど、TS後はかなり良くなって……普通な顔の両親の遺伝子に、こんな美形になれる遺伝子があったんだね」
自虐ネタに失笑する研究者達。
「俺の両親の話はおいといて、遺伝子そのものは民間の検査会社に依頼した人の話があるから、それが公的に認められたって報告になるね」
民間ではなく、国が出資している公的な場所でも同じ結果が出たのが大きいのだ。
「あ、民間の検査と言えば、TSした人の母親が遺伝子検査を強く拒否したり、父方と遺伝子が合わないって騒動がチラホラ有ったね。 アレは驚かせてくれたよね。 TSで遺伝子が大きく変わったのかと思ったら、実は託卵でその不倫男性と親子判定されて離婚騒動になったってオチの」
ちょっと脱線する希のトークに、ゴホッゴホッと咳きが多方面から飛んでくる。
極一部だが、目を背けている人もいる模様。
それを察知して希が少し慌てる。
「ああいや、これを言ったのにはわけがあってね。 この騒動で家にいられなくなって、飛び出したTS病の人が路頭に迷いそうになったけど、政府が検体になってくれれば生活を保障するよって言って保護してくれた事にTS病になった同じ患者として礼を言いたかっただけなんだ」
ちょっと頭を下げる希。
「じゃあ次の分かったことを発表しようか。 現段階では元の性別に戻れる手段は見つかってないです」
「だよなぁ」なんて落胆する様な声が研究者達から聞こえる。
「TS病になった人の容姿だけど、良くなる人と変わらない人と悪くなる人とがいたけど、その変化する条件と見られる傾向が発見されたね」
「おおっ!」なんてどよめく。
どよめきとは別に、希が「ちょっと言いたくないんだけど……」なんて少しためらってから。
「発症前にいわゆる性行為を人とシてない人間の場合に容姿が良くなり、常識的なお付き合いをしたり真っ当な結婚生活をしている人間の場合は容姿に大きな変化が無くて、相手や法律を軽視してケダモノみたいに好き放題していた素行の良くない人間は悪くなる傾向がとても強いとデータが出たね」
これを聞いた研究者達のリアクションは何とも言えないものだった。
確かにTSして容姿がどう変化したかって話は聞いているが、その条件らしきものが性生活に直結しているかも知れないなんて、口にするのも恥ずかしい。
リアクションが微妙になるのも、そりゃあ無理はない。
「ああこの報告で思い出しましたが、性別を戻す手段として色々試しましたね。 創作作品はこんな非常事態には、本当に参考になるものだよね」
なんて前置きしてから、希がちょっと顔が赤くなってから発言を続ける。
「アレな漫画で異性の体になった原因として、元の性別の要素が欠乏したから、なんてオカルトじみた戯言がある」
研究者達は一様に首を傾げる。
そりゃそうだ。 これから言う事は、トンチキ極まる実験結果なのだから。
「つまりTSした元男がTSしてない男やTSした元女と性行為をして生中◯しされたら、元に戻る説を1週間位俺自身の身体も使って試し続けましたが、ご覧の通り意味が無かったですね。
これはTS病が粘膜接触で感染するのかの実験も兼ねていましたが、潜伏期間がもっと長いのでなければ粘膜接触では感染しない。 そんな結論になりました。 もちろんまだ経過観察中です」
急に落とされた特大の爆弾。
それで会場中が騒然とするが、希はそれに構わず。
「次の実験ですが――――」
発表会は、まだ続く。
TSする原因って結構ありますけど、直す方法としてヤッてみるって凄い発想ですよね。
年齢制限がある漫画だからこそと言うかなんと言うか。