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召喚されたら聖女でした(笑)  作者: 吉田ルネ
第二章 砂漠の民
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VSカマキリ



「風刃の舞っ―――!!!」

 浮足立つトリさんの背中で、わたしは必死に扇を振り下ろした。2回、3回。よくブライアンに当たらなかったものだ。

 いや、うまく避けてたのか。


 が、戦闘要員でもないわたしの攻撃など役にも立たない。いや、いちおう一瞬止めるだけはできた。

 その隙にジャックがカマキリの首に飛びついたのだ。


「ジャックーーー!」

 首だってトゲトゲだ。そこに迷いなく飛びついた。

 灰色の毛並みが血に染まっていく。

 ジャックはヘッドロックをかます。カマキリは苦しがってのけぞった。

 キシャーーーー!


「ジャック! もう放せ!」

 ブライアンは一瞬の隙をついて鎌を切り落とした。カマキリ、暴れる暴れる。レジーは体勢を立て直した。


「脚よ! 脚をもげば動けなくなる!」

 レイラが叫ぶ。そりゃあそうでしょう。人間だって脚をもがれたら動けなくなる。殺すより残酷じゃない?


 ゴキベキボキッ。

 嫌な音がした。え? な、なんの音かな?カマキリの首がゴトンと落ちた……。


 ひええ。素手で頭落としたのか。まあ、昆虫のつなぎ目なんて脆いものだけど。

 瞬殺だね。

 うん、たとえ魔物でも苦しみもがくのは見たくなかったからよかった。

「ジャ、ジャック……」

 ジャックはカマキリの胴体をポイッと放り捨てた。どすん! 軽い地響きがして砂煙が上がった。

 まあ、巨体のカマキリですから。


ジャックは自分の血と、カマキリのどす黒い体液でひどい有様だった。


「ち、治癒。治癒治癒……」

 わたしは両手をかざした。が、ジャックはひざから崩れ落ちた。

「あー、ヤバい。しびれる。力が抜けていく……」

「ええっ? なんで?」

「ど、毒だ……」

 レイラがつぶやいた。

「あのトゲトゲ、毒がある!」


 マジか。

「とりあえず、死骸から離れよう」

 レジーが言った。流れ出てくる体液もヤバいかもしれない。マリアが魔法でジャックの巨体を持ち上げた。


「ど、どこかに寝かせて。治療しないと!」

 ジャックはとうとう意識を失ってしまった。息が浅い。焦る。

「は、は、早く」

 砂漠のど真ん中だけれども、一刻を争う。ほんとうはオアシスまで行って養生させたいところだが。

マリアはいったんジャックを下ろすと、四次元バッグからタープを取り出した。


 ふたたびジャックを持ち上げて、タープの下に移動する。

 トリさん移動する。


 レジーが血まみれ体液まみれのジャックの服を切り裂いた。

 すばやく傷を確認する。

「トゲは残っていないようだ。切り傷と刺し傷がひどいな」

 毛皮に覆われているので、傷が見にくいが。

 浄化をかければ、だいぶきれいになった。でも次から次へと血が滲みだしてくる。よほど傷が深いんだろう。血が止まる気配がない。


 たぶん体液にも毒があるんだと思う。ほんとに厄介。

 傷の治療と解毒を同時に行う。レジーも吹き飛ばされた弾みに、打撲やら擦り傷やらを負っていた。ブライアンも切り傷が多数。毒の影響もあって、手足が少々しびれると訴えている。


 このふたりの治療はマリアに任せた。

 しばらく続けるとようやく血は止まり、ジャックの息遣いも安定してきた。解毒もうまくいっているようだ。

 ただしびれがきえるには、少し時間がかかるだろう。それに出血が多かった。未だ意識は戻らない。


「レイラ」

 治癒をかけながら呼ぶと、レイラはぎくりとした。すでに涙目。胸のところで両手を組んでおろおろしていた。

「ちょっとおいで」

 右手でジャックに治療を施しながら、左手でわたしの前の地面を指す。

「そこへすわって」

 レイラは素直にそこに律儀に正座した。


「マリア」

 レジーの肩に治癒を施していたマリアは顔を上げた。

「あなたもここにすわって」

「……はい」

 マリアも素直にレイラと並んで正座した。当然レジーもついてくる。

 なんか、変な並びだな。横たわるジャックをはさんで、わたしとレイラ、マリア、その横にレジー。

 治療の終わったブライアンは後ろでおろおろしている。


「どうして察知が遅れたの?」

 なるべく冷静に、とは思ったけれどついつい声が鋭くなってしまう。


「えっと……。ちょっとぼーっとしてて……」

 下手な言い訳だ。

「あなたがちょっとぼーっとしたせいで、ジャックが死にかけているんだけど」

「そ、そんなつもりはなくて……。わ、悪いと思っているよ?」


 あたりまえだ!


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