「けむり」 「なにもない」
「けむり」
マッチを擦って火を付ける
ライターはどこかでなくした
マッチをつまんだ指が熱い
人間が自分の手で火を点ける理由
タバコ、放火、料理、
咥えたタバコに火を付けた
窓の外に向かって燻らす
揺れる煙越しに見える風景
寒風に自然と体が震える
煙が風に絆され流れていく
どこへ行く?
煙を追う視線の先には既になにも見えない
「なにもない」
なにもない
言葉もない
からっぽだ
無
本当になにもない
“無”という言葉だけがある
けれどその実なにもない
虚飾すらできないほど見事になにもない
なにもないところから言葉は生まれるのか
なにもないところから人は生まれてきた
なにもない虚空を重ねてなにが生まれるのか
それを見てみたい