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剣術と鑑定、そしてサブスキル




 俺が5歳になって数日後。


「アルよ、お前もそろそろ運動盛りの年頃だろう?なのでお前には剣術を学んで貰うことにした!」


 親父が俺にこう言った。

 ちなみに、アルというのは俺の愛称だ。


「剣術、ですか?」


「うむ!貴族たるもの、武術を学んでいなければならないだろう!辺境伯の長男なら、尚更だ!」


 親父は悪徳貴族そのものな小太りのおっさんだが、昔は戦場でブイブイ言わせていたらしい。


【辺境伯/イルズ・ネハンピ・カナイリナカ

種族/人間


自身の領地の防衛に尽力している。

法に触れない範囲で、私腹を肥やすことが趣味。


スキル/槍術(中の上)/領地経営(中の中)

指揮(中の中)/弓術(中の下)/剣術(中の下)

馬術(下の上)/土魔法(下の上)/交渉(下の下)


アンコモンスキル/ノブレス・オブリージュ】


 実際に多くのスキルを所持している。

 しかもどれも高レベルだ。アンコモンスキルは、聞いたこともないしレアなスキルなのだろう。


 ……上の下以上のスキルはないし、剣術を学ばせる割には槍術の方が強いみたいだが。


「お父様、何故剣術なのでしょうか?武術の中でも剣術をお選びになった理由を、お聞きしても?」


「それはだな、貴族社会では剣術LV3以上習得していることが誉でな。実際に剣術は、他の武術よりも汎用性において優れているのじゃよ。……でだ、お前に剣術を教える者は既に居るぞ。」


 親父はそう言って、手を鳴らした。


「クグチョ、部屋に入りなさい!」


「はっ!失礼します!」


 ……剣術の先生は、最近会った人物だった。

 確かに剣術のスキルレベルは高いし、部下を指導したりしているから適任者なのだろう。


「クグチョか、先日は世話になったな。」


「ん?アル、クグチョと会ったことがあるのか?」


「はい。兵士の訓練所を覗いた時、彼にふと気になったことを質問しました。土魔法を、どうやって習得したのか気になりまして……。」


「そうかそうか!魔法の習得は時間がかかるものでな、儂も若い頃は無我夢中で土嚢を作ったものじゃよ。アルは、10歳になったら魔法を毎日使うのだぞ!13歳頃に、急いで習得するのは地獄そのものでしかないのでな……。」


 やはり魔法の習得は、時間がかかるものらしい。

 親父はパブリックスクールに入る13歳に急いで習得したらしいが、その方法も少し気になる。


 聞いている限りでは、無理矢理魔法を連続使用する力技っぽいので聞かないけどね。


「まあ、今はそのことは置いておこう。アル、クグチョは儂の私兵団の団長でな。それで剣術スキルレベルは5の(つわもの)故、お前を任せることが出来る。クグチョ、息子の剣術指導を頼んだぞ。」


「はっ!このクグチョ、微力ながらご子息様が剣術スキルを習得される手助けを致します!」


 クグチョがビシッと敬礼しながら、俺のことを何気にご子息様と呼んでいた。


 実はこの世界では、貴族の息子の呼び方にもルールが複数ある。

 平民はとりあえず坊ちゃまと呼び、貴族の内その親より自身の階級が低いものはご子息様と呼ぶ。


 つまりクグチョは騎士だから、辺境伯の息子である俺をご子息様と呼んだのだ。


 1代限りだからなのか、ただの役職と思われがちだが名誉ある貴族階級の1つなのだ。




 さて、剣術の修行が始まって1週間は経った。


 しかし、一度も剣に触っていない。


「……クグチョ。ずっと歩いているが、剣は振らなくても良いのか?剣術指導をしているのだろう?」


 俺はクグチョと一緒に、毎日散歩していた。

 剣を振るだけが剣術の修行とは思わないが、逆に全然剣を触りもしないのは拍子抜けだった。


「はい、剣を振るうことも大事ではあります。しかしご子息様はまだ5歳で有らせる故に、剣を振るうことは訓練用の木剣でも難しいかと。」


「それは分かる。だが、歩いてばかりでは腕が鍛えられないだろう?このままでは、剣を振るうどころか握ることも出来ないままではないか。」


「ご子息様、剣とは腕だけで握るものでは御座いません。背中と脚も使うのです。それに、正しい姿勢で歩くだけでも腕は鍛えることが出来ます。」


 クグチョは論理立てて説明してくれた。

 部下にはあんなに熱血な指導をしていただけに、とても意外に感じた。


「完全に私の偏見だが、腕が棒になるまで剣を振るえと言われると思っていたぞ。」


「ご子息様は、急いで剣術を習得する理由も御座いませんから。腕が棒になるまで剣を振るう必要がある者は、15歳から兵士になる者だけです。」


 歩きながら、クグチョはいろいろ話してくれた。

 剣術で自身が苦労した事や、前線で手柄を立てて騎士になったエピソードなどを教えてくれた。


 そして話をしながらも、俺が少し姿勢を崩した瞬間に姿勢を正すように言われた。


「そろそろ休憩しましょうか。ご子息様の表情には出ていませんが、疲労が累積していますから。」


「ああ、分かった。休もう。」


 座って一息つくと、一気に疲れを感じた。

 クグチョの言っていた通り、自分では分からなくても疲労はしっかり溜まっていたようだ。


「よく私が疲労していると分かったな。やはり、兵士達を訓練させてきた経験の賜物か?」


「はい。兵士達を見続けた結果、コンディション管理のスキルを習得しまして。そのおかげで、他者の疲労度合いや調子の良さが分かるのです。」


「……コンディション管理?」


 そんなスキルは持っていないように見えたが。

 鑑定し直しても、見当たらない。


「コンディション管理は指揮スキルの中でも、かなり愛用しています。毎日使った結果、LV2だった指揮スキルがあっという間にLV4になった程です。戦闘で敵情を確認するという使用方法もある、とても万能なスキルです。」


「??指揮が、スキルなのでは?」


 少し混乱した。指揮というスキルの中に、更にスキルがあるとは一体どういうことだ?


「はい。スキルの中に入っているスキルは、サブスキルとも呼ばれますね。」


 クグチョが丁寧に説明してくれた。

 要約すると、例えばスキルが流派でサブスキルが技という関係性らしい。


 剣術を習得すると常に剣の扱いが上手くなる。

 スラッシュのサブスキルを習得すると、スラッシュを使用した時に剣を鋭く振ることが出来る。


 現代人的には、剣術がスマホでスラッシュがアプリという関係性で説明出来るだろう。


「なるほどな。……鑑定系のスキルにも、サブスキルはあるのか?」


「鑑定系のスキル、ですか?そうですね。有名なものでは他者に鑑定結果を見せる情報共有と、他者の人物鑑定を阻害する人物鑑定のサブスキル鑑定妨害があります。」


 鑑定妨害!

 まさに俺が警戒していて、それでいて欲しかったスキルだ。


「この2つしか私は存じ上げませんが、他にも鑑定系スキルのサブスキルはあると聞きます。」


「鑑定妨害はどうやって習得するのだ?」


「申し訳ございません、存じ上げません。」


 ……後で調べることにした。

 鑑定妨害、絶対に必要なスキルだろう。


 だって鑑定妨害が無いとプライバシーがない。

 クグチョには息子がいて、その息子に剣術を教えることが好きだと俺は知っている。


 俺は出会った瞬間から、「お前の息子は可愛いよなぁ?」とか言えてしまうのだ。


 俺はそんなことをされたくは無い。

 鑑定妨害は急いで習得するべきだろう。

 改めてそう思った。




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