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2週間の猛特訓




 運動祭に向けて、他の生徒たちを鍛えてやるために貴重な自由時間を使うことにしたわけだが……。

 俺が自由時間で合同の自主訓練をしないか?と誘ったら、結構な人数が集まって来た。


 人数的にはクラスの3分の1は来ているな、それだけ多くの生徒が本気ってことなのだろう。

 手が抜けないな、手を抜くつもりもないが。むしろ自主練の準備は万端すぎるくらいだ。


 運動祭まで4週間の内、2週間の間俺は暇な時間を使って運動祭のルールを調べておいた。

 そしてそれに合わせた訓練内容も考えたし、先生に相談して場所や道具も用意した。


 だから俺は今回の自主訓練で、運動祭までには参加者全員の戦力増強をできると思っている。

 もちろんガチで強くさせるなんて無理な話だが、運動祭で何もできない事態は無くせるだろう。


「さて諸君、この自主訓練に参加しに来てくれてありがとう。そして早速だが、今回の自主訓練の内容とその目的を話したいと思う。」


 そう言う俺に、殆どの生徒が真面目な表情で注目した。やる気十分なのはいいことだ。


「まず初日の自主練だが、諸君らには己の限界と浅はかさを知ってもらうことにした。そのために諸君らには、1日中延々と並走をしてもらう。」


 ちょっとざわめきかけたが、すぐ収まった。

 真面目だな〜、と思うが……ここは一切ざわめかずにいてほしかったところだ。


「この自主訓練で諸君らは、仲良し小好しで模擬戦やらをして爽やかな汗を流すつもりだったかもしれない。しかし実際の戦いとは剣を振って、相手に参ったなどと言わせるお遊戯会ではない。泥臭く血なまぐさい戦場で、目的を果たすのが戦いだ。」


 ちなみに運動祭では何人かの審判に見守られながら、攻撃を受けたときに参ったと言うサバゲー的な紳士スポーツ仕様だ。お遊戯会っすね。


「そうそう……1つ言い忘れていた。この自主訓練宙では諸君らは貴族や騎士の子でも従者でもないし私が上官として命令を出し、全員を平等に扱わせてもらう。耐えられぬ者は帰るといいだろう。」


 ……お、今度は結構ざわついたな。だが各々ちゃんと納得したみたいで、帰るやつはいなかった。

 運動祭は例の如く、従者も貴族の力の一部扱いで参加可能だから鍛えたかったので助かる。


「では、全員整列。水筒を受け取ったら足並みを揃えて走るぞ、分かったな?」


「「「はいっ!!」」」


「では行くぞ!ついてこい!」


 そうして俺は、最初のうちは気合たっぷりの新兵どもを連れて走り始めたのだった……が。


「1、2!1、2!……どうした、声を出せ!」


「「「1、2!1、2!」」」


 ただ並走だけをさせるつもりはさらさらない、ここからどんどん負荷を増やしてくのだ。

 例えば、ちょっと右足と左足を出す順番がズレただけで指摘をしたりとかな。


「貴様、周りを見ろ!貴様だけ足が先にでいるぞ、足並みをちゃんと揃えろ!」


「っ!?あっ、は、はいっ!」


「そしてそこの貴様!掛け声をサボるな!声を出せ!」


「はぁっ、えっ、はぁっ、いや「掛け声!貴様殺されたいか!」ひっ、いいえっ!ひぃ……いち!」


 僅かな隙も見逃さずビシッと俺が怒鳴ると、怒鳴られたやつ以外も全員ちょっと背筋が伸びた。

 普段から怒鳴るのは論外だが、こういう運動中は問答を省くためや聞きやすさ的に有効だ。


 なので別に鬼教官ごっこで無駄に怒鳴っているわけではない、ちょっと楽しくはあるけどな。


「……よし、全員水分補給しろ!」


「はぁっ……はぁっ……やっと……休憩……!」


 そろそろ水分が不足する頃だろうし、俺が水を飲むように言うと……全員が足を止めてしまった。


「馬鹿者どもが、誰が足を止めていいと言った!走りながら飲め!」


「はぁ……ひぃ……!」


 延々と走らせるというのは……延々と走らせるということだ。休憩なんて存在しない。

 普通のマラソンならこんな体を酷使なんてしないのだが、今回は普通のマラソンじゃないからな。




 ……そんな調子で、夜になるまで俺たちは走り続けた。もう殆どの生徒がバテていた。

 従者はともかく、こんな無茶な並走でバテていない生徒はよっぽどの体力バカだ。


「よく並走を成し遂げたな、ご苦労さま。正直に言ってしまうが、半分以上は逃げると思っていた。」


「ア……アルベルトフォンスくんは……な、なんでそんな、平気そうな顔している……のかな……っ?」


「ん?それは当然日々コツコツと訓練していたし、毎朝の走り込みも欠かせていないからな。……言っておくが普段は、今日みたいな走りはしないぞ。」


「えぇっ……じゃあ、なんで今日は……?」


「それは秘密……と言わせてもらうよ。なに、君たちのためになることだ。心配はしなくていい。」


「は、はぁ……?」


 そう、今日の並走の成果は明日から出る。




 翌日。俺たちは昨日と同じ時間に集合して、俺は模擬戦用の武器が入った箱を取り出した。

 かなり大きいし重い箱だが、ピラが運んでくれているので持ち運びには苦労しなかった。


「では諸君、今日はお望みの模擬戦をしようか。試合形式はとりあえず1対1でやるぞ。」


「……昨日は、模擬戦なんてしないって言ってなかったっけ?」


「いや、言っていない。武器を取りたまえ。」


 俺がそう言うとちょっと怪訝な表情の生徒もいたが、全員スムーズに武器を選んでくれた。

 そう、かなりスムーズに武器を選んだのだ。貴族とか従者とか関係なく協力し合って、な。


 しかも全員で適当に模擬戦をさせたあとは、魔法や弓を一斉射撃する訓練などをしたが……。

 全員息ぴったりで魔法とかを発射できていたし、難しい要求も文句を言わず全員で挑戦していた。


 これこそ俺の狙い、並走で無理矢理息を合わさせて一致団結させてしまおう作戦だ。

 獣人奴隷がなかなか足並みを揃えてくれないときに試した訓練方法だが、無事に成功したな。


 おかげで前列後列の連携をさせたり、前列同士でのカバーリングをさせたりもできるようになった。

 訓練としては文句なしに上々の成果だろう。


 あとは運動祭でその成果を発揮するだけだ。

 勝てば周囲から認められるし、負けてもいい思い出とは思ってくれるだろう……。


 俺にはもうできることはあまりない、勝敗は他のクラスの実力次第だ。

 ……俺はルールを読み直したりピラと作戦会議をしながら、他のクラスが雑魚であれと祈った。




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