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ユニコーンの毛で作る物




 野営訓練が終わり学校に戻って、数日間は生徒たちが俺をわいわいがやがやと囲んでいた。

 が、それも1週間経過しないうちに終わった。若者の興味とは移ろいやすいものなのだ。


 そもそも単純にユニコーンからたてがみを分けてもらった男子、というのがレアケースだったから一目置かれた……たったそれだけだったからな。

 そんなに長続きしないのはわかっていた。


 なのでその数日間はコネを増やすことに注力することで、俺は少し男子の知り合いが増えた。

 今までルームメイトくらいしか男子と話をする機会がなかったからな……とても喜ばしいことだ。


 だが、ユニコーンのたてがみの恩恵は交友関係をただ広げるだけで終わったわけではない。

 ユニコーンのたてがみ……それは非常に優秀な魔道具になり得る、超高級レア素材なのだ!


 つまり俺はこのたてがみを使って、何を作るか考えなければならないということだ。

 メジャーな使い方といえば、やはりこの毛を糸にして魔法陣を服とかに縫い込む使い方だろうか。


 あと最近聞いた話では魔法に使う杖の素材に使うのもいいらしいが……杖を使う予定はまだない。

 そもそも杖を魔法に使うメリットがわからないからな、実家でも杖を使っている奴はいなかった。


 調べたら杖は魔法の安定化とか威力の向上に使えるらしいから、普通は使った方がいいと思う。

 だがそれも魔法をダイレクトに使用した場合の話なので、魔道具や魔法陣メインの俺には合わない。


 それらを使わないときは咄嗟に魔法を使いたいときなので、杖はむしろ邪魔になるだろう。

 そうなれば杖以外の用途、魔法陣がいいだろうと思った……が、魔法陣もあまりピンとこない。


 今どうしても作りたい魔法陣もないし、いずれはもっといい魔法陣が作れるという確信もある。

 なのでどうしてももったいない気がしてしまう。


 じゃあ温存して後ほどするという考え方もできるが、魔法的な効果のある素材にはこれはもう厄介な特徴があるのでそれも難しい。


 魔物とかの素材が主にそうなのだが、体から離れたり本体が死んだりした素材は消えやすいのだ。

 低級の素材だと1週間も保たず空中へ光になりながら消え、上級素材でも1ヶ月後には消える。


 そしてその素材を保持するためには魔法を使ってコーティングする必要があるのだが……。

 コーティングしたらもうコーティングが剥がせないので、再加工ができなくなってしまうのだ。


 魔石とかの魔法的な効果を持たず、ただ魔力が強いってだけの素材なら大丈夫なんだがな……。

 ユニコーンの毛には治癒の効果とかがあるので、コーティングしなければ消えてしまう。


 うーむ、どうしたものか……。


「おう、アルベルトフォンス。何悩んでんだ?」


「ん?……ブオムか。ユニコーンのたてがみの使い道を考えているだけだ。」


 ルームメイトのブオムが声をかけてきた。

 そこそこ話をする仲ではあるが、ブオムはBクラスだから基本的には寮の部屋の中で話している。


「ほー、これが噂のユニコーンのたてがみか!結構長いんだな、丁度1フィートくらいかな?」


「ああ、本数も結構あるし消費先で悩んでいてな。しかしもったいない使い方はしたくない。」


「ふむふむ、なるほどな~……そうだなぁ、余った分を誰かにプレゼントするのとかはどうかな?」


「そうするにしても先に自分用の使い道を考えたいし、そもそも余るかもわからん。」


 1フィート(約3 0 c m)あるし長さはいいんだが……量のほうが、帯に短し襷に長しって感じだ。


「んー、それじゃあ……あ、それならミサンガとか編んでみたらどうかな?そしてそれを、君の従者にプレゼントするとかいいんじゃないかな。」


 ピラをちらっと見て、ブオムがそう言った。

 ミサンガ……確か願いを込めながら編むと、自然に切れたときに願いが叶うとかいう腕輪か。


 この世界には呪術があるし、こういった願掛けもおそらく実際に効果があるだろう。

 そしてピラがより強くなってより忠誠を誓うように願いを込めて渡すと、なかなかいいアイデアだ。


 よし、今度図書室で調べるとしよう。


「なるほど、ミサンガを作るのもありだな。」


「だろ〜?あとただプレゼントするだけじゃなくって、お互いに作って交換するのもいいと思うぜ!」


「……なんでだ?」


「なんで、って……そりゃあ、お前の従者ちゃんはお前の『アレ』だろ?間違いなくそうだろ。」


 ……あれ、とは?右腕的なポジションとか、そんな感じのってことか?無駄にあやふやだ。

 『お前のアレ』っていう単語で思い浮かぶのは愛人とかだが、まさか13のガキがそんなゲスの勘繰りをするわけ……いや、クソガキならするか?


 だが見ての通りピラには奴隷の証である首輪がちゃんとついているし、半巨人だし……。

 貴族的にそういう相手としては見ないのが普通だと思うんだが……いや、そこはどうでもいい。


「……どちらにしても、とりあえず図書室で作り方でも調べることにするよ。」


「おう、いってらー!」




 というわけで図書室で調べ物をして……。




 ……よし、ミサンガについて大体わかった。

 ミサンガは願いを込めながら編めば、その願いを叶えれそうなときに発動する呪具らしい。


 願いを叶えるために多少の幸運増加の効果と全体的な能力や集中力の向上が主な効果だ。

 そして発動後、切れて外れる。おおよそ聞いていた通りの効果があるようだな。


 さらに言うと普通の糸だと平凡な効果しか発揮できないが、魔法的効果のある糸だと明らかに発動したとわかるくらいには効果があるらしい。


 しかも祝福や聖別をされた糸では、装備者にとって不都合な形では効果が発動しなくなるとか。

 ということは、ミサンガを作ることに一切合切の不都合はないということだ。素晴らしい!


 ちなみにミサンガなどの願い系の呪具は、自分用よりも他人用に作った方が効果が強くなるらしい。

 理由はともかく、ブオムが言っていた通りにピラと交換するように作った方が良さそうだ。


「では、ピラ。私とピラで願いを込めながらミサンガを作って、交換するぞ。いいな?」


「はい、ご主人様。私の全霊を込めて、ミサンガを作らさせていただきます。」


 そんなわけで、数日間かけて俺とピラはちまちまと、願いを込めながらミサンガを編んだ。

 よほど集中していたのか作成中ピラは火が出ていたし、俺も時間があっという間に過ぎた気がした。


【呪具/祝福されたミサンガ


ユニコーンのたてがみで作られた、少し粗いがしっかりとしたミサンガ。

『緊急時に全力で俺を守れ』というアルベルトフォンスの願いが込められている。】


 そしてできたのがこれだ。発動するタイプの呪具なので、わかりやすく強めの願いにした。

 ピラが俺を守ることがピラにとって不都合な状況だと意味がないが、まあそのときは死ぬだけだ。


 本当におまけというか、保険的な願いだな。


【呪具/祝福されたミサンガ


ユニコーンのたてがみで作られた、とても丁寧な作りの上質なミサンガ。

『■■■で■■を■■い■■■■』というピィラムの願いが込められている。】


 そしてこっちはピラの作った分だ、相変わらず何故か伏せ字になっている。何故隠すんだ……。

 だがピラに頼むどころか命令しても伏せ字になるので、もう仕方ないと思うようにした。


「ようやく完成したな。ピラ、早速交換するぞ。」


「はい、ではお手を……失礼します。」


 ピラが俺の右腕にスッとミサンガをつけたので、とりあえずピラの右腕にも付けて、これでOKだな。

 つけてしばらくピラはチラチラ見たりちょいちょいいじっていたが、まあ慣れてもらうしかない。


 で、残りの毛は少ないし適当な小さい魔道具でも作っておくとして。これで全部使用できたな。

 あまり派手な物は作らなかったが、ミサンガは魔除けの装飾としても有用らしいしこれでいい。


 ……まあ、まさか本当にユニコーンの毛が手に入るとは思わなかったので魔道具とかを作る用意や計画がなかったのもミサンガを作った理由だしな。


 今度こういう魔法効果のある素材をいきなり手に入れたときに備えて、設計図とかも必要だな。

 流石にすぐまたこういう素材が手に入るとは思わないが……そう思っても手に入る可能性はある。


 設計図くらいは作ってもいいだろう。まずは、この余った毛を使った魔道具の設計図からだな。

 そう思って、俺はとりあえずあれがいいかなだとか、こっちもいいかなとか悩むことにした。




 ……そして1週間後。悩みすぎた。

 目の前で、余った毛が無情にも……消えた。


 とりあえず……ちょっとだけ、俺は泣いた。




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