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呪われていない呪いの本




 ある日の自由時間、俺は図書室に良さげな本を探しに行っていた。目的は呪術の本だ。

 昔独学で呪具を作ったことはあるが、呪術についてよく知らなかったからとても苦労した。


 本屋に呪術に関する本が置いてなかったり、マイナーな分野らしいので習得を諦めていたが……。

 ネノカダムなら呪術に関する本の1冊や2冊はあるかもしれないと思って、図書室に来たのだ。


 本当は入学して直ぐにでも探しに来るつもりだったのだが、ヘルミーナとかとの友達付き合いで忙しかったせいで図書室に来る時間が作れなかった。


 だが今日はヘルミーナたちは別の用事があるようなので、幸運なことに図書室に来れたのだ。

 ……しかし予想以上に図書室が広いので、目当ての本を探すのはなかなか苦労しそうだ。


 本棚に本のジャンルが書いてあるなら、それを参考に探してみるが……魔法……魔道具……。

 ……うーん、呪術のジャンルはないな。じゃあ一応魔法のところで探してみるか……?


 そう思ってしばらく探してみたが、なかなか見つからない。そもそも、本棚の本が多すぎる。

 ピラも探しものが得意ってわけでもないし……そうだ、司書や図書委員がいたりしないか?


 前世では図書館とかをあまり使わなかったから思いつきにくかったが、こういうときが出番だな。

 では周りの人をよく見て……よし、いた!腕に図書委員と書かれた腕章をつけた生徒がいるな。


 ……1年生は委員会とか部活動的なのがまだないので、この生徒は当然先輩だ。一応敬語で話すか?

 だがバッチ的にこの生徒は子爵家、敬語で話しかけるのはなんだか少し躊躇してしまうな……。


 ……この国では年功序列があまり重視されていないし相手の地位も低いし、タメ口で話してみるか。


「失礼、君が図書委員かな?」


「あっ、はい。何かご用でしょうか?」


「私は呪術に関する本を探しているのだが……君は呪術関連の本がどこに置いてあるか知っているか?」


「はい、かしこまりました。ではこちらへ……あそこの棚に、呪術に関する本が置いてあります。」


「そうか、助かったよ。礼を言おう。」


「こちらこそ、ご利用ありがとうございます。」


 よし、普通に話せた。この先輩がやたら腰が低いだけかもしれないが、まあ……多分大丈夫だろう。

 それはともかく、早速読む本を決めようか。……どれどれ、伝統的な呪い……魔女の大釜……。


 ……おっ、呪いと目撃者への影響!これはなかなか良さそうだ、今日はこれを読んでみるか。


 ふむふむ……まず最初の方、前書きと目次の次くらいに呪術についての簡単な概要が書いてあるな。

 この本曰く呪術は魔法と同じようなものだが、力の根源と行使の仕方がかなり違うのだとか。


 魔法はマギカと思考を使うが、呪術は感情と表現を使うという違いがあるらしい。

 具体的には書いてないが、呪術の表現とは魔法での詠唱的なものを指すのだろうか?


 答えは……3ページ後に書いてあるな、似て異なるものらしい。詠唱は必ずしも必要な訳では無いが、呪術の表現は必ず必要な行為なのだとか。


 無詠唱無動作でも魔法は理論上(ほぼ不可能だが)使うことができるが、呪術はほんの少しでも動作がいるのだとか。

 その例として書かれているのが、丑の刻参りのような呪術だった。藁人形を釘で打つ呪術だ。


 この呪術を行うには適切な装備で呪詛をつぶやきながら、藁人形を釘で打つという行為が必要だ。

 そして呪術を極めれば必要な動作が減るが、絶対に藁人形を釘で打たなければならないという。


 ちなみにこの呪術の効果は、藁人形を誰かに発見されてその存在が噂などで呪術の対象に伝わった場合に対象が呪われる……というものだ。


 そのとき釘が藁人形の心臓を刺していたら体が、頭を刺していたら思考が傷を負う。

 なるほど確かにこの方法で呪うなら動作が必要だろう、それに目撃者が必要だとは知らなかった。




 しばらく本を読み、呪術について学びを得た。

 するとなんとなくだが、以前俺が呪具を作ろうとしたときに苦戦した理由がわかってきた。


 どうやら呪術は、使われた相手がその呪術をぱっと見で呪術だとわかる見た目が必要らしい。

 そうでなければ呪術は十分な効力を発揮せず、そしてそれは自身を使った場合でさえも同様だ。


 だから呪物などはとてもおどろおどろしく、いかにも呪われたものですよ~という見た目なのだ。


 少し違うかもしれないが、確かに俺が以前作った邪眼対策の呪具は見た目にとてもこだわった。

 魔除け効果がある布生地を魔除けの花で着色し、魔除けの刺繍をあしらいようやく完成したのだ。


 そしてそのときに選んだ模様が目のような模様だったからこそ、邪眼のお守りとして機能した。

 実験用に使用人に持たせたとき、その使用人がお守りと邪眼を無意識的に関連付けできたからだ。


 ……そう、呪術とは魔法と違い意識的に使うものではない。無意識で発動してしまうものなのだ。

 だから呪術を使われた者がその呪術に説得力を感じたら、どんな呪術でも成立してしまうのだ。


 なので例えば必勝祈願にカツ丼を食べた人が、その必勝祈願を信じれば本当に勝率が上がるのだ。

 当然普通のカツ丼程度では効果は薄いだろうが、具材で呪術アピールすれば十分効果はあるだろう。


 逆に言えば、理屈でものを考える学者系の人物には呪術の効果は薄くなるということでもある。

 なので俺みたいなやつには残念ながら、呪術の効果は薄いということだろう。おせちとか嫌いだし。


 俺が呪術を使うときは、呪われる側ではなく呪う側で行使するべきだろう……いや、待てよ?

 逆に俺ではなく俺以外に呪術を使わせて、俺じゃないものにかければいいんじゃないか?


 例えば俺の服に呪術を使わせて、それを俺が着ればその恩恵を間接的に得れるかもしれない。

 この場合は多分、呪具のお守りのように他者からの攻撃を防ぐ防具になってくれるだろう。


 よし、そうなれば他の呪術の本……特に呪具に関する本をもう少し読み込むとしようかな。

 そう思って呪術系の本棚に近寄ったら、俺以外の人がいた。……見覚えがある、ジョレーヌか。


 そういえばあいつは呪われているんだったな、鑑定で盗み見たから俺は知っているが……。

 呪いは認識が大事ということは、当然呪われた本人はその呪いをある程度は知っているのだろう。


 少し話しかけてみるか?……やめておこう。俺もまだ呪いについて知らないことが多い。

 だが、そうだな。王家とのコネのためにも、しばらくは呪術を重点的に調べるとするか。


 自分のための呪い対策にもなるし、一石二鳥だ。そして元々呪術に興味はあったから、一石三鳥だ。

 ネノカダム以外では簡単なおまじないの本しか見つからなかったので、できれば卒業までに十分なレベルが欲しいし……重点的に鍛えるべきだろう。


 なんていうスキル名になるかも知らないが……とりあえず中の下より上を目指してみるとするか。




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