友達1人、できるかな?
……さて、自由時間だが……誰と話せそうなんだ?
まず……すでに会話の輪を作っているやつは除外しよう、輪の和を乱すだけになってしまう。
そして次に、ガッツリ勉強しているやつもだめだろうな。話しかけても邪魔にしかならず、コネどころか敵を作ってしまうだけだろう。
そして庶民もあまり望ましくない。コネを作りたいのに、庶民と仲良くなっても意味はない。
かなりのコミュ強ややり手の商人の一族ならいいかもしれないが、事前に調べたり鑑定を使わなければそんなこと俺にはわからない。
俺が成長すればするほど、何故か鑑定をしたときに威圧感が出るようになったのは本当に謎だ。
弱体化しなければガンガン鑑定できたものを、何なんだこの謎の威圧感……邪魔すぎる……。
別に友好関係がいらないなら鑑定を使い放題なのだが、こういうときはめちゃくちゃ不便だ。
この威圧感を無効化できる手段があればいいんだがな……今はそんなないものねだりはできない。
とりあえず目視でわかるくらい、話しかけちゃダメなやつを先に選別しておかなければ。
あいつもだめ、あいつらもだめ……と除外し続ければ、1人くらいは話しかけれるやつがいるはずだ。
……だがとりあえずで選別した結果、残った候補は0人だった。皆喋っているか、勉強をしている。
確かにこの学校で初めての自由時間だし、暇そうなやつはなかなかいないだろうな……困った。
こうなったら会話中のやつに話しかけるしかないのか?他にまともな選択肢は思いつかない。
だが、俺はコミュ力が低い……高確率で下手をして火傷する未来が、くっきりと見えてしまう。
……こうなったらもう、玉砕覚悟だ。誰でもいい。とりあえず近くにいるやつに、話しかける!
俺はもう、一切合切何も考えないで……隣の席で喋っているやつに、話しかけるぞ!
「失礼、話に混ぜてもらってもよろしいかな?」
よし!話しかけた!あとは受け入れてくれるかが問題だが……相手は少し考えてから、返事を言った。
「ええ、どうぞ……お名前を伺っても?」
「私はアルベルトフォンスだ。よろしく。」
よしよしよし!あとは流れでなんとかしよう。
……ふむ、会話に参加している人は元々5人か。俺を入れたら6人、結構多めの人数だな。
そして傾向としては全員、女子……そして子爵家以上の生まれの貴族たちか……。
会話に混ざる難易度が高そうだ。だが俺ならできると、根拠もなく考えて挑むしかない。
「……ヘルミーナ様、よろしいのでしょうか?」
「ええ。むしろ、何か問題がありまして?」
ヘルミーナ……俺が話しかけた女生徒が、どうやらこのグループのリーダー格のようだな。
それと女子同士の話し方などから、入学前からの知り合いっぽい感じがするな。特に普通に格下の家の子が、普通に名前を読んでいるところとかな。
そう、バッチを見るとヘルミーナの家は侯爵家のようだった。辺境伯と同格の貴族だ。
よし、わかって来たぞ……分析完了だ。
「ヘルミーナ様。良い油を見つけましたので、香水を調合してみましたの!いかがでしょうか?」
「ええ、少し分けていただきます。……良い香りですね、これはエスタ・ローズの香りでしょうか?」
ヘルミーナが香水を少しだけ嗅いで、材料を薔薇だと言い当てていた。渡した子も嬉しそうだ。
だが、足りないよな?この香水は結構上等な質のようだが、少し惜しいところがある。
「エスタ・ローズの柔らかい香りもいいが、これにはレア・タイムを混ぜているだろう?」
「は、はい、よくおわかりになられましたね?」
「ふん、まあな。それよりも……この香水にはレア・タイムが多すぎて刺激が強くなっている、長めにつけているとあまり肌に優しくないぞ。」
「えっ、そうなのですか!?……あの、レア・タイムの代わりに何を入れたらいいと思われますか?」
「目的にもよるが……薔薇を強調させたいならカモミールをおすすめしよう、その中でも……」
いい具合に会話をできている……!この調子で、うざすぎない程度にちょいちょい会話に混ざるか。
幸いそこまで難しい話はしていないようだし、これなら俺でも話題についていくのは簡単だ。
「まあ!アルベルトフォンス様は香水にお詳しいのですね。殿方はあまり美容に興味のない方が多いと思うのですが、アルベルトフォンス様はどのように香水に興味を持たれたのですか?」
「私は実家でハーブを栽培していてね、ハーブ類の用途を一通り知っているだけさ。」
うまいこと興味を持ってくれたようで、向こうからも質問をだんだんしてくれるようになったな。
それならこっちも話しやすい、自分から話すよりも返事をする方が空気を悪くしにくいからな。
「そうだな……もし興味のある方がいるなら、少しハーブを分けてあげよう。」
「はい、ぜひいただきたく思います!」
ハーブを持ち歩くのは、鮮度などの関係上難しいのだが……俺のピラはそんなのお構いなしだ。
なんと影の中にそのままプランターをしまうことで、ハーブを新鮮なまま保存できるのだ。
日光が入らないから枯れそうなものだが、影の中は時間がかなり遅いらしく……定期的に日光浴をさせてやれば植物が枯れることはないようだ。
ついでにいうと温かい料理とかも、数日もの間ほっかほかの状態でしまうことができるのだ。
重量も無視できるなど、不思議な影だ。闇魔法の力とはどのようなものなのか……実に興味深い。
何度も研究をしたが、未だに謎は多く……いや、今は関係ないことだ!思考が脇道にそれてしまった。
とりあえずプランターがいきなり現れたことで驚かせてしまったが、ハーブそのものは好評だ。
ちなみにこのハーブはソケイだ。前世にも同じ名前の花があるが、それと全く同じだ。
このハーブを発見した人物が命名したらしく、別にこの世界で素馨がいるわけではないらしい。
十中八九、命名者は地球人だろうな……。
「……話し込んでいたら、そろそろあたりが暗くなり始めてしまいましたね。名残惜しいですが、そろそろ解散いたしませんか?」
「おっと、たしかにもうこんな時間だ。君たちと話ができて、楽しかったよ。では失礼……。」
よし、パーフェクトだ!とりあえず、これで俺の名前を覚えるくらいはしてくれるだろう。
……ふう。なんだか久しぶりに、人間と会話した気がする。気が抜けたら、一気に疲れてきた。
これからもちょっとずつ友好を広めるためにも、今日はいいスタートをできたと思う。
少なくとも、悪くはないはずだ。初日に知り合いが1人もいないと、確実に孤立するからな。
だがまだ安心はできない、友達と言えるほど仲が良くなったわけではないのだからな。
それに……嫌な話だが、勉強もしなければならないだろう。友好の維持に専念することはできない。
夕食を食べたら、ピラと2人で勉強会だ。
1人ではできないことも、きっとピラを全力活用すれば簡単なはずだ……俺はそうだと、信じている。




