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午後の授業




 昼食を食べ終え、次の授業へと向かった。

 次の授業の内容は、軍学だった。用兵や戦術だけではなく、戦略や軍事法も含む学問だ。


 しかしこの授業の先生は、話が迂遠で面白みがあまりないな……内容も、微妙に初歩と応用の間だ。

 難しいには難しいが、俺でもわかる程度なので前の授業ほど必死になれないし……退屈だ。


 こういうときには教科書を読むに限る。授業が簡単なら、先取り学習しても問題ないだろう。

 授業よりわかりやすい教科書も偶にあるし、前世でも授業が聞きたくないときはこうしていたな。


 ページをペラペラめくり、大まかにどんな感じなのかを見ておこう。どれどれ……。

 絵も描いてあって、注釈も結構あるな。いい教科書だ、目についたページから読もうかな。


 用兵のページは長めだな、後回しにしよう。戦術のページは……うんうん、なかなか面白そうだ。

 ……おっ、軍事法のページは短めだな。じゃあこれから最初に読むか。最初は……戦時国際法?


 意外なことにこの世界でもしっかり戦時国際法があり、禁止されている兵器などもあるようだ。

 禁止されている兵器には魔法なども含み、広範囲の汚染や自滅の危険性が高いものが多いようだ。


 そして捕虜の扱い方や過度に敵へ攻撃しないことの重要性などが、厳密に書いてあった。

 いたずらに敵兵に苦痛を与える兵器や魔法は、最高指揮官の許可がいるとも書いてある。


 しかしよく見てみると、戦時国際法は人間同士で行う戦争のみに有効だと書いてあった。

 獣人やエルフの類は、むしろ積極的に苦痛を与えて士気を削ぐべきだと書いてある。


 なんというか……中世的な倫理観だ、自分に近しい民族以外への厳しさがすごく強い。

 だが亜人奴隷は国の経営の要だ、その亜人を確保するために全力なのはまあ分からなくもない。


 それに士気を削がなければ人間よりも屈強な亜人を捕らえることは、かなり難しいだろう。

 だからこそ、亜人に価値があるのだから。あの屈強さは並大抵の人間には真似ができない強みだ。


 家で獣人を飼っていたから、あのうんざりするくらい高いタフネスには本当に覚えがある……。

 そして思い出した。俺も最初に獣人を従わせた方法も、模擬戦で心をへし折るって形だったな……。


 他には……戦争前での取り決めの仕方などが書いてあるな。こういうのは読んでいて飽きないな。

 次のページは……と授業を忘れて教科書を読んでいたら、いつの間にかに授業が終わっていた。


 そして次の授業は……白兵戦の授業らしい。

 つまり体育的な感じか?魔法の授業をやったときのように訓練所へ行くらしいし、多分そうか。


 訓練場に向かい、そして今度は剣や槍などの武器が入った箱が中央に置いてあった。

 その箱の隣にはムキムキなおっさんがいて、多分白兵戦の先生なんだろうなと見た目でわかった。


「うむ、これより白兵戦の授業を行う!なんの武術も知らぬものは手を上げろ!」


 一部の生徒がおずおずと手を上げた。手を上げたのは多分、20人に届かない程度の人数だろうか。

 それを見て先生は、満足げにうなずいた。


「うむうむ!恥ずかしがらず手を上げてくれて、先生は嬉しいぞ!手を上げた生徒は、隣にある別の訓練所へと向かうように!場所はわかるか?」


 なるほど、つまり逆説的にはここに残った人は全員何かしらの武術を嗜んでいるってことだ。

 んで……別の訓練所へ向かった生徒には、他の先生が初心者向けに武術を教えるのだろう。


「よーし!では残った諸君には、これより模擬戦を行ってもらう!各自この箱の中から、1個好きな武器を選んで使うように!よーい……始め!」


 その瞬間。一斉に箱に生徒たちが群がって、我先にと押し合って武器を取りに行っていた。

 俺は剣しか使えないから、剣が残っているといいのだが……ふむ、一応聞いてみるか。


「先生、武器を取るのに従者を使っても?」


「ん?ええ、どうぞ。従者の力も、主人の力ですので。暴力以外の方法であれば、お使いください。」


 ……さっきまであんなザ・豪傑って雰囲気だったのに、俺のバッチを見た途端に礼儀正しくなった。

 ネノカダム校は階級を気にしないという建前はどこへ行ったのか……まあ、所詮は建前か。


 とりあえず気を取り直して、ピラを呼ぼうと……したのだが、その前にピラがスッと隣に現れた。

 そして俺にこっそりと、傷とかのないなかなか良さげな状態の木剣を差し出してきた。


「ご苦労。」


「お褒めに預かり、光栄です。」


 ピラをよしよししようと思ったが人目があるのでやめ、他の生徒が準備できるまで待つことにした。

 わーわーと武器を取り合い、あるものはいい武器を手に入れ、あるものは粗製を掴まされていた。


「皆武器を手に取ったな?では、今隣にいる生徒と模擬戦をしろ!一発、いい感じに当たったら終わらせるように!だがわざと怪我をさせたりはしないようにな、先生はしっかり全員見てるぞ!」


 いきなり模擬戦をすることになった。勉強ではなく実力テストとか、そういう方向性の授業か?

 じゃあ、負けられないな。隣りにいるやつが、雑魚とかだと嬉しいのだが……どうだろうか。


「……えーっと。うっす、よろしくお願いします!」


「よろしく。……始めようか。」


 うっすとか、絶対に体育会系だ。動きもブレがそんなにないし、嫌な相手と当たったな……。

 とりあえず剣を持っている相手だし、最初は小刻みに剣先で牽制しておこうかな。


「はぁっ!……くっ!?出鼻をくじかれたっ……!?」


 よし!突進を抑えた。そしたら今度は俺が前に出る番だ。しかし、ゆっくり小刻みに進もう。

 相手の防御を見据えて、癖を知り。隙を見つけたら、一気に全力の一撃!……なんてことはしない。


「ぐっ!……あれ、こな、っ!?」


 フェイントだ。こいつはどうやら重めの攻撃をしっかりガードできるらしいのだが、勢いを受け流すのではなく力で防ごうとしてきた。

 なら俺が重い攻撃を出し、当てる前に力を抜いたらどうなる?当然、相手だけが力むことになる。


 来ない攻撃を防ごうと集中している敵に攻撃を当てるだなんて、木偶人形を殴るようなもの。

 太ももあたりに思いっきり剣を当てて、膝をつかせた俺の勝ちだ。対ありGG、おつ。


 ……勝ったのはいいのだが、先生は本当に見ているのだろうか?気になって、先生の方を見てみた。

 すると、バッチリ目があった。しかも親指をグッと上げてきた!……え?ずっとこっち見てたのか?


 そう思ってしまったが、先生は今度は90度くらい素早く振り向き、他の生徒に親指を上げた。

 まじで全員を見ているのか……いや、よく考えたらピラは常に俺を見れているし、おかしくはない。


 指揮官とか教官的なスキルとかで、そういうスキルがある可能性は十分あるな。

 流石はブブズズ王国きっての学校、王立ネノカダム校……教員の質も高いってわけか。


 ……しばらくして全員分の模擬戦が終わり、それで今回の白兵戦の授業は終わりになった。

 長期戦になったせいで疲れて汗だくな生徒も多くいて、次の授業は大丈夫か?と心配になったが……。


 そこで時間割を見ると、疲れた生徒たちにとっての朗報が書いてあった。次は自由時間だ!

 朝起きてから今まで食事以外ずっと授業で、おおよそ午後5時になってようやく自由時間が来た。


 多くの生徒は歓声をあげて、他の生徒とだべったりして過ごすことにしているようだ。

 俺はどうしようかな?やることは多い、その中でどれが今やるべきことなのか……悩むな。


 ……悩んだ末、1つ決めたぞ。そう、コネ作りだ!今の自由時間こそ、コネ作りにふさわしい。

 予定を決めた俺は、意気揚々と……誰かに、話しかけようとした。誰に?ここでまた悩むのか?


 ……よし、もういい!目についたやつでいい!

 半ばヤケクソで話しかけることにして、俺は果たして……ちゃんと話せるのだろうか?


 それは、まあ……話せば分かる!多分!きっと!




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