30年の差、それはあまりにも大きく
今日の俺は、他の領にお邪魔していた。
おぞましいことに、同年代同士でのパーティーのお誘いがあったのだ。俺の自由時間を返せ……。
まあ、13歳になったら嫌でも同年代との付き合いはあるものだ。涙をのんでこらえてやろう。
忌々しいことに招待状を渡されてその招待を断るには、それ相応の理由が必要だからな。
さてさて、このパーティーの概要だが……。
主催者はセガイラヤ子爵の長男で、領の位置は近いが辺境ではないといった位置だ。
お誘いの内容はスカスカ、皆さん一度会ってお話して友達になりましょ~くらいの内容だ。
つまり、現地に行かないとどんなパーティーかはわからないのだ。これはちょっと困る。
なので一応狐狩りとか鹿狩りの道具をピラの影に忍ばせて、ラフな格好で行くことにした。
……おっと、そろそろ屋敷が見えてきたな。
管理はしっかりできているが、子爵家らしいサイズの屋敷だ。大きいけど、貴族的には小さい。
門番に御者が招待状を見せて、俺たちは屋敷の入口付近に馬車を停めて降りることになった。
しばらくして、慌ただしい様子でお高い服を着た少年がお出向かに走ってきた。俺は辺境伯の長男なので、おそらく主催者の長男だろう。
「ようこそおいでくださいました、アルベルトフォンス様。主催者のトキマリと申します。私がアルベルトフォンス様を会場までご案内いたします。」
「出迎えご苦労。」
自分より階級の高い貴族を招待した場合、主催者が直々に案内しなければならないので大変だ。
既婚者の場合は妻に案内をさせてもいいことになっているが、それ以外に抜け道はない。
男爵とかは主催者になったら、それはもうとてもてんてこ舞いになってしまうらしい。
しかしそれでもパーティーの主催をしないと、伯爵とかの繋がりを得ることができないのだ。
トキマリが必死に領の特産とかを話しているのを聞き流しつつ、会場に割りと早く着いた。
立食式のようだ。大きめの机が並んでいる。
ふむふむ……用意してある机の規模などから、おそらく15人くらいを招待しているのだろう。
ちらほら参加者が入場してきたので料理が運ばれて来たが、その量もおおよそ予想通りだった。
しばらくして、会場には17人ほど集まった。
これで全員揃ったようで、主催者のトキマリが元気に挨拶などをする。中身は相変わらずない。
その間に俺は参加者をチェックしておいた。
大抵の場合、着ている服の色とかで生まれを察することができるようになっているのだ。
一般的なパーティーとかでは地味な色で安い服が男爵とかで、派手めかつ高級な服が伯爵とかだ。
俺も例に漏れず漆を塗ったような朱色で、指輪が悪趣味な成金のようにゴテゴテしていた。
そうして見ると男爵が6人くらい、子爵が8人くらい、伯爵や辺境伯は3人くらいだとわかる。
もちろん俺も含めて予想した人数がこれなので、俺は結構楽ができそうなパーティーだ。
しかし、ちょっとした誤算もある。
男爵家と一部の子爵家が強面な人間の男性を、そして残りは男性の獣人奴隷を護衛として連れて来たのだ。一方、俺はメイド服のピラだ。
間違いなく浮いている。ちょっと恥ずかしい。
ていうか獣人の男性は高いのだが、よく子爵が買えたな……借金しているやつもいそうだ。
獣人は強いし、名誉のある買い物なので借金する気持ちも分からなくはないが……いや、違うか。
一般の貴族家庭は借金してでも買い、余裕のある貴族が追加で安い女性獣人を買うのだろう。
うちは親父が勘違いして買って、オークションに行った時も俺がケチったからこうなっただけだ。
……仕方ない、開き直って堂々とするか。俺が堂々と振る舞えば、誰も指摘なんてできない。
……あと、もう1つ誤算があったと今気づいた。
こういう同年代パーティーって、何をどう話せばいいのかわからん。少し様子を見るか……。
……ふむふむ、皆にぎやかに喋っているな。
食事しているのはちょっと喋り疲れた人とか食事を話しのネタにしている人くらいだった。
まあ、友好を深めるためのパーティーなのだから当たり前か。口にものを入れては喋れない。
ちなみに通常の食事では音を出さないのが美徳なのだが、めでたい日やパーティーの場では違う。
「先週さ、狩りに行ったんだけどさ~!」
「見たか?最近首都で武術大会があってな……!」
「俺、婚約者がいるんだけどさ……!」
それと会話の内容はかなり若者らしい内容だ。
学術的な内容の話は誰もしていない。となると、俺のできる会話のネタは結構限られてしまうな。
とりあえず、誰かに適当に声をかけるか。
そうだな……隣にいる、推定子爵家でいいか。
「……君、名前は?」
「うお、あっ、はい。ヨーヒ・アシッパルです。」
驚かせてしまったようだが、俺の服装を見て敬語で話せるあたり普通に会話できそうだ。
「そうか、私はアルベルトフォンス・ネハンピだ。アシッパルといえば、羊が名産なシェプメー領の子爵家だったかな?そこのラム肉はいいものだ。」
「はい。あの、よくご存知でしたね?」
「当然だ。近隣の状況や名産を知ってこその、貴族だろう?特に、国境の近くではな。」
「あっ……はい……おっしゃるとおりです……。」
……なんかテンション低いな。
さっき隣で会話しているときには、普通に話しているように見えたのだが……気の所為か?
「……ふむ。君、趣味は何かな?」
「俺は、その、剣が好きです……はい……。」
「そうか、剣が好きと。剣の蒐集といえば、魔剣は邪道だと考えるものもいるらしいな。君は?」
「えっと……蒐集じゃなくて、剣を振る方……。」
俺は返答を間違えてしまったらしい、ヨーヒは肩をすぼめて小声になってしまっていた。
若者とのコミュニケーションは難しい。前世を含めて42歳のおじさんには、全くわからん。
さらに今思えば、俺は同年代と話した回数がかなり少ない。同じ貴族と話す機会がなかったのだ。
周りの12歳たちは、お互い初めて会う組み合わせもいればすでに友人同士のものもいるというのに。
なんでだ?どうやって友人になって……いや。
……悲しいことに、心当たりがあった。
親父は基本的に放任主義で、それに以前「近隣の領に遊びに行くが、アルも来るか?」という質問に対して忙しいから無理って俺が答えたからだ……。
割りと何度かこう聞かれたが、俺は魔道具の研究に精を出していたから断っていたんだ……。
だから、俺には同年代の知り合いが少ない……!
その数少ない知り合いも、変な思想の持ち主だから関わりたくない……!なんてこった……!
このパーティーで、俺は結局壁の花?になった。
壁の花は本来女性にのみ使う表現なのだが、男性版が存在しないので……いや、理屈っぽすぎる。
コミュニケーション能力、鍛えるしかない。
貴族たるもの、外交もしなければならないし……結婚もコミュ力がなければ到底できはしない。
まずはコミュニケーションについて書かれている本を探して読むか……。それ以外にあてもないし。
ああ、この時点で内助の功に頼りたい……。でも俺には内助なんてない、実質孤軍奮闘だ。
頑張れ俺、負けるな俺……人間関係は強敵だぞ!




