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一石二鳥の考え




 今日で俺も12歳、あと1年で13歳だ。

 そんな俺がもらった今年の誕生日プレゼントは、山のような参考書だった。


 親父ぃ……こりゃねぇだろうがよぉ……!

 パブリックスクール入学前だからって、誕生日プレゼントにこれを出すのは悪鬼羅刹の業だぞ!


 俺が本当に12歳なら暴動ものだ。玩具でもでかい図鑑でもなく、こんな頭痛の種をくれやがって。

 社会人でも嫌だよこれ、資格勉強はもう嫌だ。


 まあ、俺は温厚だし?転生者だからな。

 文句の10つや20つで我慢してやろうか……?


「おお、アル!どうだ、誕生日プレゼントは気に入ったか?勉強が好きなお前にピッタリじゃろう!」


「……?勉強が好き……ですか?」


「うむ、前からお前は難しい本をねだっていたからな!今も学者が読むような本ばかりを読んでいて、それでお前は勉強が好きだと気づいたのだ!」


 そんなはずは……と言いかけて思い出した。

 俺の最近の愛読書は、どんな本だったか。


【書物/土地とマナの関係性の調査結果


ブブズズ王国王宮魔術師フールマンの著書。

土地がマナを生み出すのではないかという仮説に着目し、調査した結果をまとめたもの。】


【書物/粘体生物の解剖記録


スライムなどの粘体生物を解剖して解析し、学術的にまとめたもの。挿絵付き。

非常にグロテクスかつ難解な書物であり、勤勉な魔物使いでもあまり読むことはない。】


 ……うーん、学者の卵かな?

 いや待ってくれ、違うんだ。俺は実際にこの本の中身はそんなに多く理解しているわけではない。


 ピラに読ませて、理解しやすいようにまとめてもらってから俺はこの本と一緒に読んでいる。

 だから俺は学者並みに頭がいいわけではない!決して、勉強好きというわけではないんだ。


 ……だめだ、外から見たらガリ勉野郎だ。

 ……親父、俺が間違っていたよ……。


「……参考書、ありがたくいただきます。」


「ガッハッハ!気に入ったようで何よりだ!」


 とりあえず参考書はピラに丸投げだ。

 ピラならあの山を豆本サイズにできるだろう。


 いや、流石に物理的に無理か?……無理と決めつけるのはピラに悪いな、信じて任せてみよう。

 ピラを指パッチンで呼び、目を見る。すると魔眼も使っていないのにピラが参考書を回収した。


 影の中にドバドバと吸い込まれる参考書は、まるでナイアガラの滝のような光景を見せてくれた。

 1立方メートルはある山が幻のように忽然と消え、それをしまったピラも涼しい顔で消えた。


 主の影と闇魔法を組み合わせた運搬方法だ。このコンボのお陰で、どんなに重くとも楽に運べる。

 影、だけにお陰……なんちゃって。


 ……ゲフンゲフン!ダジャレはともかく。

 パブリックスクール……一応調べるか。


 いざ入学したっていうときに、俺のわからないことだらけだと不便で困るからな。

 下調べはある程度しておくべきだろう。




 ……そんなわけで、しばらく調べた結果。

 ある程度この世界の学校に詳しくなった。


 まず最初にパブリックスクールは、金持ちが13歳の子を大枚を叩いて入学させるエリート学校だ。

 この国には何校かあるが、その中でも1番有名で俺も入学予定の学校が王立ネノカダム校だ。


 設立当初は難しい受験などもあったが、今ではすっかり簡単になってしまい大金さえあれば入学できる場所になったのだとか。腐敗の気配を感じる。


 そんなネノカダムだが、ただの箔付け施設ではなく普通に何人かの高名な賢者の出身校でもある。

 そいつらがただ天才だったってだけではなく、そいつらは学校があったから高名になれたのだ。


 校内の研究室で発見や発明をして、論文にしたり在校中の王家に直接アピールしたり……。

 ネノカダムの強みを全力で使い、賢者は自身の出自では得ることのできない実績を得たのだ。


 その実績を利用して王家の後ろ盾を得たことで、研究に没頭できて賢者になれたってわけだ。

 その影響もあって課外活動等が豊富なので、実績を作る機会が多いのがこの学校の長所だ。


 俺には関係ないけどね、辺境伯だし。

 箔も実績もいらない、高位貴族様だぜ?


 じゃあなんで入学するのかというと、嫁探しと他の貴族とのとっても面倒なコネ作りだ。

 嫁探しはまあおいておくとして、コネ作り……コネ作りなんて、やりたくねぇなぁ〜!


 派閥とかの関係に注意して、より上の貴族に頭を下げるなんて……俺のプライドに傷がつく。

 異世界転生したのに、人間関係なんて考えたくなんかないね俺は。前世で十分に苦しんだよ。


 頭下げたくないなぁ~、派閥とかやだな~。

 だが親父には相談できない。階級が最優先のこの世界で、高位貴族に頭を下げないのは自殺だ。


 自殺行為でも自殺願望でもなく、端的に自殺だ。

 なので頭を下げるのは必須としても……媚なんか売りたくないし、頭もできれば下げたくない。


 だったら何が必要か?第1候補は逆玉の輿だが、俺は長男なので残念だが一生辺境伯のままだ。

 なら第2候補……やはり実績で黙らせるか。


 実力実績そして階級、これがあれば寡黙な男でも過酷な社交場を生き残れる可能性がある。

 実際にかなり偏屈で外交や社交パーティを一切合切せずに、偉大な発明をした人もいるらしい。


 その人は嫁すら取らなかったが、俺は誰かと政略結婚して外交を任せる方針で真似してみるか。

 偉大な発明のハードルが高いし在学中はある程度人間関係に気を使わなければならないが、成功すれば卒業後圧倒的に楽になるはずだ。


 ネノカダムの長所が、実績作りの機会が多いことなら……その長所をありがたがることにするか。

 一応今の研究も続けて、あわよくば実績を今のうちに作れたらいいな位の感覚で頑張るとしよう。


 さて……オートマタは正直実績としてはインパクトが薄いし、研究対象は何がいいのだろうか。

 やはり高火力で派手な魔法がいいかな?得てして愚者とは、演出だけに目を向けるものだ。


 よし、なら魔法の効率化の研究をするか。

 今までもちょいちょいやっていたが、これからは少し本腰を入れて効率化を目指すとしよう。


 SD……なんちゃらみたいな、持続可能な資源をうんぬんかんぬん的な御大層な目標ではない。

 ちょっとマナが長持ちする程度でいい、それを突き詰めれば最終的により大きな魔法を使える。


 高効率とは、すなわち高火力と同意義。

 高火力とは、結局効率がいいことなのだ。


 それに高効率ってインテリ受けがいいしな。

 愚者と賢者をどっちも狙えて一石二鳥だ。


 二兎を追う者は一兎をも得ずとも言うが、兎は1羽2羽と数えるので鳥類と言っても過言ではない。

 じゃあ、一石二鳥で大丈夫だ。QED!




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