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虫と獣人、忍者ピラ




 11歳もそろそろ終わりそうな頃。

 俺は奴隷たちの様子を見に行っていた。


 どうやら労働後の宴会中のようで、ワイワイガヤガヤ騒ぎながら料理を食べていた。

 そのメインディッシュは……虫だ。

 

 実は昆虫は、この世界では一般的な食料だ。獣人もエルフも人間も、全員虫を食べる。


 だが人間の貴族は虫を食べるのは下賤の行いだと思っているので、俺は食べたことはない。

 貴族に産まれて、本当に良かった……。こんな化け物な蜂、俺は絶対に食べたくない。


 前世で日本人だった俺には、こういう光景はとても見てはいられない。前世のデメリットだな。

 バッタや蜂、蟻などが樹液で煮てあったり揚げ物にされていたり……絵面がかなりグロい。


「おっ?ご主人様じゃないですか!どうですか、今日はデカいアカタカバチを捕まえまして……。」


「残念だが、不要だ。私は虫を食べない。」


 アカタカバチはスズメバチのような見た目だが、大きさはなんと20センチを超える魔物だ。

 雑木林などで結構見かける機会がある割には、とても強い毒を持つしかなり凶暴な害虫だ。


 しかし見た目と毒に反して、対策して捕まえに行くと意外と簡単に捕まえることができる雑魚だ。

 体がなまじ大きいので、全身鎧に弱いのだ。


 もちろん普段着で出会ったら危険だが、森に普段着で入る馬鹿な人類はほとんどいない。

 なのでアカタカバチは、魔石を抜けば即死するスライムを差し置いて雑魚の代名詞になっている。


 リョウシュバッタという巨大バッタの方が、人間からは害虫として名高いくらいだ。

 リョウシュバッタは畑を食い荒らすだけでなく、倉庫や農家そのものを食べるヤバい魔物だ。体もかなり大きく、40センチを超えている。


 巨大昆虫どもがアホほど大きく数が多いから、昆虫食文化がこの世界では一般的なのだろう。

 もし食べずに捨てたら貴重なタンパク質を摂取できないどころか、処分にとても困るだろう。


 ……俺は虫の雑学を思い出しに来たのではなく、奴隷の様子を見に来ていたんだった!

 うっかり忘れてしまうところだった。


「ピラ!」


「はい、ここに。」


 名前を呼べば、いつの間にかにスッとピラが影から現れた。比喩ではなく、物理的に。

 影から実体化するピラを初めて見たときには、驚いたが……これは隠密のサブスキルの効果らしい。


 以前鑑定したとき、こんなスキルがあったのだ。


【サブスキル/主の影


忍者のみが覚えるとされる、隠密のサブスキル。

自身の決めた主の状態を把握できる。また、影に潜むことができるようになる。】


 ピラ……お前、忍者だったのか……。

 いやまあ、とされるってだけだから……実際は忍者以外でも難しいだけで習得できるのだろう。


「奴隷たちの教育はどれだけ進んでいるんだ?」


「はい、滞りなく。現在は森などの危険地帯を探索する際の、生存技術を教えているところです。」


 なるほど、だから今日は食卓の虫が多いのか。

 スキルは座学で学ぶよりも、実践して鍛えたほうが圧倒的に習得率も成長率も高い。


 そのことは、目の前のスキル大盛り半巨人が身をもっ証明している。……どれどれ。最近ピラを鑑定してなかったし、少し鑑定してみるか。


【Oops/Not found


Undetected object.】


 ……なんじゃこりゃ?エラーコード?


「鑑定阻止スキルを解除いたします。しばらくお待ち下さいませ……解除いたしました。」


 あ、どうも。……今、心を読まれた?

 ともかく、再鑑定するか……。


【警告メッセージ/鑑定は安全ではありません。


この鑑定結果を確認した場合、呪いに感染する可能性があります。


[詳細] [キャンセル]】


 パソコンか!っていうか鑑定にはアンチウイルスとかファイアウォールの能力もあるのかよ!?

 どうせならこのファイアウォールよりも、魔法のファイアー・ウォールを先に見たかったよ!


「も、申し訳ございません!呪詛返しを解除していませんでした、お許しくださいご主人様!」


 ピラが慌てた様子で指をスイスイ動かす。

 呪詛返しって、タブレットみたいに操作して設定変更するものなのか……知らなかったなぁ……?


 ともかく、今度こそ鑑定だ。


【奴隷/ピィラム

種族/半巨人

状態/平常


No data.


スキル/火魔法(中の上)/隠密(中の上)

剣術(中の中)/雑務(中の中)/雑学(中の中)

呪術(中の中)/生存術(中の下)

素手格闘術(中の下)/土魔法(中の下)

鑑定(中の下)/精神攻撃耐性(下の上)

気功術(下の中)/闇魔法(下の下)


アンコモンスキル/身体炎上


ユニークスキル/急速回復/効率的な作業】


 相変わらず凄いスキルの数だ。

 呪術と生存術はかなり素早く習得・成長させたようで、レベルが精神攻撃耐性よりも高い。


 まだ上の下……レベル7以上のスキルはないようだが、いずれは何個も見ることになるだろう。

 逆にこれで、俺の鑑定スキルが上の下だというのは異常なほど高いということがわかる。


「……このノーデータと書いてある部分は……。」


「ご主人様、No dataは仕様でございます。」


 あ、はい。


 ……ピラに反乱されないか、心配になってきた!

 一応今すぐなんかしてくるわけではないが、内心もわからないし不安は拭えない。


 これが噂の、権力者特有の疑心暗鬼か?

 しょっちゅうこういうことを心配している気がするが、それでも心配をせずにはいられない。


 予め契約させた絶対服従の命令権を乱用するのもあとが怖いし、緊急時用に取っておくとしてだ。

 裏切られないために、気をつけなければ。


 ……普段の待遇を良くするくらいしか、俺にできることはなさそうだな……。しかしピラは、自分が何がほしいかを言わないしな……。


 ……いや待てよ、ピラはきっと俺を裏切れない。

 そもそもピラは、俺の圧倒的権力に逆らった場合の末路を想像できないような愚物ではない。


 ブブズズ王国は貴族の血を尊ぶ。

 なので俺ほど高位の貴族が亡くなれば、その事件の関係者は指名手配に絶対なるだろう。


 なので枕はちゃんと高くして寝ることができる。

 何ならピラのお腹を枕にして寝ても大丈夫。


 あの柔らかさと温かさのバランスがいい。

 枕を変えれない派の俺でもぐっすり……いや。


 ……パワハラは控えめにしよう。そうしよう。

 錯乱して殺されるのは流石にありえる。誰でもお腹に頭を置かれていい気分はしないだろう。


 恋人同士でも愛おしさより先に圧迫感で苦しくなるだろう、あまりお腹枕は良くないな。

 でもあの枕はとても気持ちいいんだよね……。


 ……そうだ、シェイプシフターだ!

 あれに人肌のぬくもりを与えて、いい具合に硬度を調整すればピラを再現するのも不可能ではない。


 早速調整しよう、あれはオートマタだしストレスを感じることなんてありえないだろう。

 過度なストレスは道具に、そうじゃないものは人類に任せる。素晴らしい役割分担だ。


 さて、どうやって温めようか……!




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