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散歩道にスライムの歴史あり




 11歳も半分を過ぎたそんなある日のこと。

 俺は普段通り、魔道具開発をしていた。


 研究開発以外にも、奴隷の管理とかをしなくてはならないのだが……最近は全然ノータッチだ。


 獣人奴隷の待遇改善とか、教育とか……。

 そんなことに煩わさせられる俺じゃあない。


 企画を作り、大まかな制約と権限を設定し、随時報告の義務をつけて全部ピラに押し付けた。

 なのでピラは今頃大忙しだろう。俺ならこんな仕事丸投げ上司は嫌だが、ピラには我慢させる。


 すごくのびのびと自由時間を過ごし、魔道具開発に精を出す。こんなひと時が欲しかったんだ。

 まあ、魔道具開発は順調ではないけどね。


 魔法の杖などの陳腐な魔道具を作るのも楽しいしレベリングになるので、暇があれば作っていた。

 だが新しいことへの挑戦は、なかなか難しい。


 他にも既存の魔道具を改良したりしていた。

 偶に失敗するが、本当に偶にだ。大体はこれ以上性能を上げられないことを確認して終わる。


 そもそもいい素材がないので、改造で上げることのできる性能もたかが知れているのだが……。

 マナ効率は継戦能力に影響が多いので、そこを重点的に改善させるのが今の所やっていることだ。


 魔法陣の文字数を減らしたり、文字を詰めたり工夫がいちいちちまちましたものばかりで困る。

 こういうのは全部ピラに任せたくなる。


 特に面倒なのが、文字を書き換える場合だ。

 魔法陣は基本的にインクで書くタイプと彫り込むタイプの2種類がある中、後者が主流だ。


 なぜかというと、インクで書く場合は魔法的な特殊インクを使わなければいけないからだ。

 インクは値段が高いし、経年劣化に弱い。


 普通のインクでも魔法陣は一応書けるが、効率が悪くすぐ壊れてしまう消耗品しか作れない。

 魔法のインクじゃないと、実用性はない。


 魔法のインクを使って魔法陣を紙に書けば、かなり軽い魔道具が作れるが……今はいらない。

 なので安く丈夫な彫り込み魔法陣を書いている。


 そうなると、魔道具本体に彫らなければならないので……書き換えは本当に難しいってわけだ。

 困ったな、最初から彫り直すのは面倒だ。ピラを使いたい……と思って、そこで閃いた。


 そうだ、加工用のオートマタを作ろう!

 書きたい文字の形で金属を彫る、いわばタイプライターの親戚みたいな使い方だ。


 オートマタは音声認識機能がある。

 前世だったらかなり高度な技術だが、音声認識は魔法陣の基本機能だ。簡単に組み込める。


 そんなわけで、完成品がこちらだ。


【魔道具/魔法陣彫師


音声入力に従い、魔法陣を対象に彫ることができる魔道具。あまり魔法陣の形に融通が効かない。】


 一先ずはこんなものか……こいつは複雑な魔法陣は作れないが、量産型のものならたやすく作れる。

 魔法陣の書き換えなんて繊細な作業はできない。


 つまり、しばらく出番はない。倉庫の中で腐ることが確定、作るのが早すぎたんだ……。

 俺はなんて微妙なものを作って……。


 少し前に奴隷の装備支給は終わったし……もう少し早く作ればよかった……いや、また新しいものを支給するときには活躍すると俺は信じる……!


 気分転換に、散歩でもするか……。




 きれいな空気に、土が少し混ざった匂い。前世の東京では、一度も嗅いだことのない田舎臭だ。

 そんな空気を味わいつつ俺が散歩をしていたら、目の前にぷるぷるした魔物が現れた。


【魔物/ゼリー・スライム

状態/殺意


ぷるぷる震える、ゼリー状のスライム。成人男性をも骨折させることができる体当たりを得意とする。

1人で出歩いた人類の子供が、このスライムによって年間10人前後殺害されている。】


 見た目はRPG序盤の雑魚だが、こんなのが草むらから飛び出したら大人でも殺されるのだ。

 猪とは比にならないほど凶暴な害獣で、前に読んだ図鑑によると主食は畑の野菜と農家らしい。


 そんなことを考えていると、スライムが一瞬だけ縮み……一気に伸びて、俺に飛びかかった。

 だが、壁にぶつかったように弾かれた。


 俺は常に結界装置を身につけているからな。

 スライム程度では、怪我の原因にもならない。


 剣をそっとスライムに刺して、その剣を思いっきり蹴り上げれば……魔石摘出完了だ。

 すると、魔石のないスライムは死んだ。


 魔石はマナの源だ。それを引っこ抜いて死んだのなら、おそらく死因はマナの枯渇だろうか。

 人間もマナが枯渇すると死ぬし、この世界の生物はマナに依存しているようだ。


 まあ、それはともかくとして。

 スライムか……この地域ではゼリー系が多いようだが、他の地域では色んな種類がいるらしい。


 アメーバ系のスライムが著名的で、他にはブロブ系やらホイップクリーム系が存在するのだ。

 中でもホイップクリーム系は、魔物使いと呼ばれる者と友好的な関係を築くこともあるのだとか。


 あと、アメーバ系は意外な使い道が有名か。

 なんとアメーバ系は、洞窟に住むタイプの魔物や山賊がトイレやゴミ箱に使ったりするのだ。


 マイナーなスライムの話をすると、プディング系スライムもユニークな存在だ。

 鉄をじわじわ溶かす程度の酸性を持つそのおとなしいスライムを、古の冒険者は乱獲したのだ。


 なぜなら、プディングは分裂するからだ。

 分裂したプディングの死体を、古の冒険者たちは己の信仰する神々に捧げ続けたのだ。


 さらにプディングは極稀にだが、かなり上質なアーティファクトを持っていることがあった。

 そんな美味しい魔物を飼育しない理由はなく、プディング牧場が世界中で流行りに流行った。


 だが神々は毎日毎日執拗なほど捧げられ続けるプディングに、もう飽き飽きしていた。

 神々は敵味方関係なく全員で協定を結び、捧げ物としてプディングを認めなくなったのだった。


 それ以来、プディングはスライム界でもマイナーな魔物になった。誰も狩らなくなったのだ。


 ともかく、スライムには色々な活用法がある。

 故に新たな活用方法を研究するべく、スライム博士になる人も世の中にはいるのだとか。


 スライム……魔道具に活用できないものか。

 俺は散歩道でスライムをツンツンし、結局特に活用方法を思いつくことなく帰路に着いた。


「おかえりなさいませ、ご主人様。」


「ただいま、ピラ。」


 手を洗い、うがいをする。

 手洗いうがいはこの世界では存在しない習慣なのだが、俺は前世から手洗いうがいは続けている。


「ご主人様、お体が少し火照っていらっしゃるご様子ですので……アイスを召し上がりますか?」


「……せっかくだし、頂こうかな。」


「はい。しばらくお待ち下さい。」


 そう言ってピラはスッと影に消えて、すぐさまアイスを持ってスッと現れた。


「お待たせいたしました。こちら、コールドスライムのバニラアイスでございます。」


【料理/コールドスライムのバニラアイス


コールドスライムの体を丁寧に洗浄処理して、バニラを使って味付けをした氷菓。

体温が上昇しすぎることを防ぎつつ、体を冷やしすぎない効果がある。夏場で人気のお菓子。】


 スライムのアイスか。恐る恐る食べてみると、アイスクリームみたいにクリーミーな食感だった。


 スライムは資源としても害獣としても有名で、良くも悪くも人類の生活に近い魔物のようだ。

 俺も、スライム研究とかしようかな……。


 魔道具だけではなく魔物も研究した方が、きっと俺の見識が広がるだろう。

 専門分野だけではなく、より多くのものを知ってこそ専門分野の活かし方もわかるだろうしな。


 俺はアイスを食べて、ぼんやりそう思った。




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