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種族の習性




 月日が経ち、俺は11歳になった。


 奴隷たちはなかなか強くなり、そこらの一般兵士と戦うくらいはできる強さになった。

 獣人特有の高い持久力と程よく低い知力が、兵士としての強さに効率よく作用しているのだろう。


 頭のいい兵士も、軟弱な兵士もいらない。

 ……だが、馬鹿すぎる兵士は尚更いらない。


 なので、俺は獣人に勉強をさせている。

 兵站の管理くらいはしてもらうつもりだ。


 教材は家にたくさんあるし、前世の記憶にある歴史なども形を変えて教えている。

 なので獣人たちはそこそこ賢くなった。……あくまでそこそこ止まりなのが、獣人クオリティだ。


 だが勉強と訓練だけの日々は、精神を消耗させるだろう。なので獣人たちには、自由に休日を過ごさせている。もちろん、規定の範囲内でだが。


 獣人に人気な休日の過ごし方は、何故か……賭け事だ。特に、セブンカードスタッドが人気らしい。

 ……ポーカーは賭け事としてメジャーな方だ。だが俺はファイブカードドローしかできないので、どういう駆け引きが行われているかは知らない。


 ただ獣人が楽しそうなのはわかる。あんなにツンツンしていたクラヴァスも、満面の笑顔だ。


「ふふふっ、負け分は取り返したぞ!」


「ふん、そう言ってられるのも今のうちだ!」


 お互い代用貨幣のピィ貨を賭けているのだが、余裕を持って楽しんでいるようで何よりだ。

 ギャンブルは、小遣いでやるべきだからな。


「ああああっ!このクソマシーンんんんんっ!」


 ……向こうの防音室で騒いで、壁を貫通するほどの大声で叫んでいるスロカスみたいなのは論外だ。


 スロットマシンを置いた俺が悪かったのだが、まさかこんなに熱中するなんて思わなんだ。

 防音壁を強化するのは確定として、スロットのあたり率を上げる調整もしておくか……。


 そうだ!スロットの話をして思い出したが、獣人は満月が好きらしい。月に向かって吠えながら、野を駆け回ると気持ちがいいのだとか。

 だからスロットのあたり演出で満月が出ると、えげつないくらい吠えてうるさいのだ。


 ということは、満月に似たものを出せば獣人の士気高揚に使えるってことか。実験の価値ありだ。

 ではまず、満月の定義から決めないとな。


 月といえば、太陽系に存在する衛星の1つだ。

 そして満月は、太陽光がいい角度で当たって地上でも見えるくらい光が反射している状態だ。


 しかしそうなると、なんで月じゃなければいけないのかが気になるな。太陽光が重要だったら、太陽そのものでも効果があるはずだ。

 色味が大事なのだろうか?


 まず俺は、色が月にそっくりの光る箱を作った。

 そしてそれを、目につく場所に置いてみた。


 ……目の前を獣人が通ったが、何も起きない。

 チラ見はしていたが、それも一度だけだった。


 では姿かたちが似ればいいのか?

 次は緑色の満月の模型を作って置いてみた。


 ……何も起きない。つまり、残る可能性はあと2つだけだ。総合的に月に見える必要がある場合と、形も色も関係ない場合がある。


 俺は魔眼を使い、獣人に命令を下した。


(……お前の目の前に月がある。妖しく光る満月だ。お前はそれが何に見えようと、月だと思え。)


 無茶苦茶な命令だ。だがさっきスロットで金欠になった獣人は、命令に逆らう気力も残っていない。


「……あれ?これ……ドアノブ……月……?」


 茶色い木製のレバーハンドルなドアノブを見て、それを月だと思いこんでしまう獣人。

 見た目的には、無理がある思い込みだ。


「ううう……ウウウウッ!アオオオオオオンッ!」


 しかし獣人はいきなり遠吠えをして、四足歩行で走り去った。しかも、なんか楽しそうな声色でだ。


 ……結論。獣人は月によって興奮するが、それは月光の影響ではなく本能的な行動だった。


 ふぅ、疑問を解決したらスッキリしたな。

 やはりファンタジー生物は謎が深い。


 ……そうだ!巨人族の習性も調べよう。

 ピラがいるので、検証し放題だ。


 聞いた話では、火の巨人は血を好むらしい。

 血の匂いで闘争心をたぎらせて武器と鎧を獲物の血で染めることを望み、体にまとう火で浴びた血を黒く乾燥させて化粧とする習性がある。


 だがピラはかなり温厚だ。戦いを嫌い、流血を避けて……火の巨人とは思えない人格だ。

 だが、もし血の匂いを嗅ぎ続けたらどうなる?


「ピラ、この匂いを嗅いでみろ……あっ、痛っ!」


「え、ご主人様、何をなさって……!?」


 俺は消毒したナイフで指を切り、出てきた血をピラの前に差し出した。……指がすごく痛いぃ。


「かっ!げっ!」


「は、はい……。」


 クンクンと血の匂いを嗅ぐピラ。だが特別興奮したりした様子は特になかった。

 半巨人だからなのか、デマだったのか。今は判断材料がないので、なんとも言えないが……。


「……そうだ!私の血を舐めてみろ。」


「そのようなこと、あまりにも恐れ多く……。」


「そういうのはいい、私とピラの仲だろう?」


「……では、失礼致します……!」


 ピラは顔をほんのり赤くして、俺の血をなめた。

 ……流石にパワハラが過ぎたかな……舐める前から平常状態じゃないと、検証の意味がない。


「味はどうだった?体調に変化は?」


「っ……お、美味しゅうございました……体調は、これといって変化はございません。」


「……そうか。ご苦労だった、下がれ。」


 こっちの検証は失敗だったな。そういうことも、まあ偶にはあるものだ。ドンマイ俺。


「……いや、待て。その前に面倒なことに付き合わせてしまったことも含めて、褒美をやろう。」


「……?褒美でしたら、先程血を分けていただきましたので……これ以上頂いては、分不相応かと。」


 嫌味か貴様っ……そりゃあ、日本だったら逮捕されるくらいあれなことしちゃったけども……!


「いやいや、今回の褒美は君に決めてもらうさ。何がほしい?無茶でなければ用意しよう。」


「でしたら……膝枕をさせていただけませんか?」


「金とか、ものは要求しないのか?」


「はい。私にとっては、金品ではなく……ご主人様に膝枕で奉仕できる方こそ、価値があります。」


 ……何を企んでいるのかはわからんが、とりあえず安く済んでよかった。膝枕なんて、いつも添い寝しているのと特に変わらないしな。


 ……膝枕されながら頭を撫でられてると、なんだか眠くなってきた……なんだ?呪術のたぐいか?


 だめだ……ぐっ……眠い……罠かっ……!?


 ……ZZZ……zzz……。




「ご主人様……久しぶりの、お昼寝ですね……♪」




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