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狼獣人




 屋敷に到着したので、早速奴隷とご対面だ。


 自分の乗っていた馬車じゃない方の馬車から、俺の買った奴隷たちが降りて来た。

 年齢はバラバラだが、全員20歳未満だ。


 ひい、ふう、みい……全部で8人、全員女性だ。

 俺が買った奴隷が全員女性な理由には、獣人たちの種族的な特徴が関係している。


 獣人は全員戦士で、通常は男性の方が強い。

 しかし男性の出生率は低く、レアなのだ。


 男性の獣人は他の獣人に守られていて捕まえることも難しく、奴隷としては高く売られるのだ。

 たとえ欠損していても、法外の値段だった。


 何より獣人のブリーディングは人気なので、結果的に男性の獣人は競りがえげつなく加速する。

 俺は流石にブリーディングにはまだ手を出さない予定なので、男性の購入は見送ったのだ。


 まあ、その話は置いておいて。

 俺は自分の奴隷たちを見渡した。


 怯えるもの、媚びた笑みを浮かべるもの……三者三様の反応をしているが、共通して緊張していた。


 さっきの反応だけなら二者二様だが、1人だけ俺に殺気を飛ばしているから三者三様であっている。


 殺気の発生源はクラヴァス……狼獣人の少女だ。


「そこの君、名を名乗れ。」


「……。」


「返事しないとは、いい度胸だ。だがな、ここでは私が君の主だ。名を、名乗れ。」


 鑑定を使いながら、俺はクラヴァスを見る。


「ッ!……貴様に名乗る名など、ない……!」


 答えはしなかったが、俺にやっと返事をした。

 鑑定は何故かこういう場面でも有能だ。


「そうか、まあいいだろう。……君たちにプレゼントを用意してある。これを見たまえ。」


 そう言って、俺は魔道義肢を奴隷たちに見せる。

 奴隷たちは見たこともない魔道具に興味を示しながら、恐る恐る魔道義肢を観察し始めた。


「あれは……なんだ?人形のパーツか?」


「これは君たちの新たな腕と足だ。失った手足と同じ場所に、この魔道具をつけたまえ。」


 当然、全員が訝しんでいた。

 ただのマネキンの手足にしか見えないそれを、一体どうして新たな手足と思えるのか。


 だが足を失った奴隷たちはもう一度自力で歩けることを諦めきれず、腕を失った奴隷よりも先に魔道義肢を失った四肢に装着した。


「うぐッ!イギギッ!ぐああっ!」


 最初、神経に直接伝わる痛みに悶える奴隷。

 だが足が動いたら、痛みを忘れて呆然とした。


「……え?なんで、あたし、立ってるんだ……?」


「私、痛みで幻覚でも見ちゃったかな……わっ!?あ、足が動いたっ!本当に動いた!」


 足を動かせることに、自分の立場を忘れて奴隷たちは喜んだ。それを見て、腕を失った奴隷も痛みを承知の上で我先に魔道義肢を装着した。


「い、痛い、けど!腕だ!腕があるよ!」


「ああ!諦めてたのに!ありがとうございます!ありがとうございます、ご主人様!」


 獣人共はさすが畜生なだけあって、クラヴァス以外全員あっさりと俺を信用した。

 こんなのだから、奴隷として人気なのだ。


「……では、次はこの書類にサインをしてもらう。これは魔道具の契約書であるため、内容に違反することはできない。よく読んで、サインしろ。」


「「「はい!わかりました!」」」


 獣人たちが、書類を読み込む。

 この書類は俺のお手製の契約書だ。


【魔道具/強制の契約書


この魔導具にサインを書いた存在の体内に、契約書が転写される。

契約書を転写された存在は契約書に逆らえないが、生理的なものを抑制することはできない。】


 生理的なものを簡単に言うと、感情の発露や無意識の行動、生きるのに必要な行動だ。

 逆にいうと、それ以外は制限できる。


 これに書いてある内容はだいたい機密保持のためのものなので、直接的に獣人へ被害を与えるものではない。危険性を見抜けない獣人たちは、哀れにも速攻で契約書にサインした。


 残るはクラヴァスだけだ。


「君もサインしたまえ、名を名乗らぬ少女よ。」


「……断る。」


 ……困ったな、どうやったらこいつにサインさせることができるのだろうか。

 一応、獣人に命令するのには力量差を見せつけるのが有効だが……手足を失った状態で倒しても、絶対に納得だなんてしないだろう。


 奴隷契約は、実は命令の強制などはできない。

 今出した契約書と違って、奴隷契約は所有者を法的に認めるだけのものだ。


 だからさっき、わざわざ奴隷たちに契約書を渡してサインさせたのだ。

 しかもサインは心から同意しつつ書かないといけないので、強制的に書かせることはできない。


 ……どうしたものか。


「……そうだな、私と勝負しないか?お互い武器は1つずつ、先に戦えなくなった方が負けだ。」


「ふん、私に手足がないのが見えないのか?」


 侮辱されたと思ったのか、俺を睨むクラヴァス。


「君は元々、優秀な戦士だったのだろう?なら、私が作ったこの手足をつけて戦えばいい。普段使いもできる、私の自信作だ。」


「そんなものをつけて戦うなど、冗談ではない。どうせ貴様が勝てるように、罠でも仕込んであるのだろ?人をなぶることが好きな、人間の習性だ。」


 ここで、俺は一旦煽ることにした。

 さっきの反応で、こいつはなかなかプライドが高いことがわかったからだ。


「そうかそうか……臆病者め。期待外れだ。戦士だと思ったのだが、所詮ただの愛玩動物か。」


「なんだと!私が、愛玩動物だと……!」


「ありもしない罠に怯え、戦いから逃げ……こんなものが、戦士であるわけがないな。違うか?」


「ぐっ……!言わせておけば、貴様……!ならば貴様の心臓を貫き、私が戦士であると証明しよう!」


 よしよし、挑発に乗ったな。そそくさと義肢を装着して、すっかり戦うつもりになっていた。


「ここの武器から、好きなものを選べ。残った武器から、私も選ぼう。いいな?」


「直剣、刀、曲刀、なまくら……なら、私はこの直剣を選ぼう。貴様もさっさと選べ!」


「では、私はこのなまくらを使うとするか。」


 このなまくらは、クラヴァスの選んだ剣に対して相性のいい剣だ。先に武器を選ばせたのは、公平性を考えたのではなく……まあ、ありもした罠だ。


「なめるな……!その油断が、貴様の命を奪う死神と知れ!首元に鎌を当てられ、それでも笑うのか!」


メメント・モリ(死を忘れることなかれ)……かな?忠告、感謝しよう。だが私は、死を忘れたことなど一度もないよ……。」


 哀れな獣と俺が向き合う。

 さて、初めての真剣勝負だ。


 やばい、待って……緊張してきた……。

 俺、死ぬのか……?ストレスで吐きそう……。


 痛いのは、嫌だなぁ……。




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