奴隷オークション
あれから1ヶ月、俺はひたすら自分を磨いた。
しかし何も成果は出なかった。悲しい。
そうしていたら、俺はついに10歳になった。
魔法を使えるようになったが、それよりも今年の誕生日プレゼントの方が重要だろう。
魔法なんて、残念だが魔道具があれば不要だ。
それに俺の誕生日プレゼントは、もう決まっている。奴隷だ。奴隷を買ってもらう予定だ。
若いうちに同年代の奴隷を買い漁り、俺に従順で有能な奴隷に育てる。そして、それらを更に強化して最強の私兵団を作るのだ。
なんて素晴らしいアイデアなのだろうか!
今育てている奴隷がピラだけなので不安だが、奴隷育成の経験不足は資金と魔道具でカバーする。
貴族専用の荒業だが、かなり有効なはずだ。
ワクワク気分で馬車に乗り、首都へと向かう。この移動時間は、思わず童心に帰ってしまう。
どんな奴隷が買えるか、とても楽しみだ。
数時間後、やっと首都に到着した。
だが親父は俺を、以前行った奴隷販売店とは違う店に連れて行った。
「父上、ここは以前の店とは違うようですが?」
「うむ、ここはオークション会場じゃ!今日は奴隷を出品中でな、お前が自分の目で買いたい奴隷を選ぶのだぞ!予算はこの袋1個じゃ、頑張るのだぞ!」
そう言って親父は俺に袋を渡した。中には大量の白金貨が入っていて、パッと見るだけでも子供に持たせるべきではないほどの高額だった。
だがオークションなら、この程度の金額はした金なのだろう。気を引き締めて挑まなければ。
「……これより奴隷オークションを開始します!最初の商品は、この狼獣人です!」
最初は普通の奴隷だ。老若男女問わず様々な奴隷が出品されて、そこそこの値段で売られていく。
特に興味を引くものはなかった。
「ではここで一旦箸休めに、訳あり商品をはさみましょう!まずはこちら、元兵士の熊獣人ですが……戦争で腕を欠損してしまっています。」
司会者は訳ありと堂々と言いながら、欠損者や感染しないタイプの病気持ちなどを紹介した。
だが大体はかなり安く、一部美人がまあまあ高めで売れていた。……それでもかなり安いが。
しかし中には意外に良さげな奴隷もいた。
獣人の子供だ。年齢は多分9歳ぐらいのその子供は、なかなかの才能を持っているようだ。
【奴隷/クラヴァス・デンテム
種族/獣人
状態/怒り
狼獣人の長の娘で、趣味は武具の蒐集。
右腕と左足を失っても、戦いを諦めない戦士。
スキル/剣術(下の上)/素手格闘術(下の中)
アンコモンスキル/獣化】
「この狼獣人は……奴隷狩りしていた冒険者が、馬鹿なことに手足を切り落としてしまったようです。五体満足だったら、前衛として使えたかもしれませんが……これでは愛玩動物にしかなりませんので、最初は3白金貨でスタートしましょう!どうぞ!」
すぐさま俺は手を上げた。手の指を3本立てて、1本曲げながら半端に立てた状態だ。
「3.5!3.5です!他にはいらっしゃいますか?……いらっしゃらないようですので、落札です!」
競りもなく、簡単に買えてしまった。
まあ顔にも傷があるし、ものすごく睨んできてるから買いたくない人の気持ちも少しはわかる。
美人の怒った顔って、怖いよね。
落札した商品は後で渡されるので受け取りに行く必要がなく、俺はオークションにまだ参加できる。
なのでもう数体ほど欠損した奴隷を買ってみた。
やはり欠損した奴隷は安い。安くたくさん買えたので、これだけでも十分すぎる結果だ。
周りは欠損した奴隷ばかりを買う俺を見て、何故か変態を見る目をしているが……実は俺には、欠損した奴隷を有効活用する手段がある。
実践はまだだが、これだけ買っておけばその手段を実用的にするためのテストができる。
だから欠損奴隷を集めたのだ。
そしてその手段とは、この魔道具だ!
【魔道具/魔道義肢
生物の神経に直接魔法陣を刺すことで、義肢として使用できるなる魔道具。
通常の体と変わりなく動かせるが、感覚はない。】
これはオートマタの四肢用のパーツを、なんとなく改造していたらできたものだ。
用途がないので実験もできなかったが、奴隷のおかげで明日からは思う存分データが取れるわけだ。
……と、今はそれよりもオークションだ。
ちょうど訳あり商品の時間が終わって、これからが本番ってタイミングだ。
「では皆様、次はお待ちかねの高級奴隷です!優秀で従順な奴隷を、ぜひ勝ち取ってください!」
わーわーと会場が盛り上がる。
その声に応えるように、屈強な奴隷や妖艶な奴隷たちが次々に紹介された。
全員なかなかのお値段で、競りであることを考えたら手持ち的に買えるかどうか怪しいところだ。
一応1回だけ買えそうだが……どれを買うのか、鑑定も含めて慎重に選ばなければならない。
こいつは……歳を取りすぎだ。
あいつは……だめだ、外見特化だ。
全員確かに優秀なのだが、俺のピラの方が圧倒的に優れている。今どれだけ優秀なのかではなく、成長の余地……伸びしろで選ぶべきだろう。
……うーん、全員20歳以上だ。しかも高い。
残念だが欲しい奴隷はいないし、オークションはそろそろ終わりの時間だ。
諦めてそう思った、その時だ。
次の奴隷は、なんとドラゴンだった。
「では!今回の目玉商品はこちら!人化を習得した、ホワイト・ドラゴンです!さあさあ、ドラゴンを初めて見た方もいらっしゃることでしょう!なので一度、パフォーマンスをいたしましょう!」
司会がそう言ったタイミングで、ドラゴンが白い息吹を壁に向かって放つ。
その息吹は魔法使いが魔法で受け止めていたが、威力は誰が見ても保証されていた。
それだけの迫力があった。
「うおおおっ!10白金貨だ!」
「なめんな、俺は11だ!」
「15!15出すざます!」
客が一斉に手を上げて、競りが白熱する。
俺も当然、全力で競りに参加した!
……まあ、無理だったんだけどね。
やはり貴族が多すぎる。俺のお小遣いでは、どう考えても勝てない額で競りは終了した。
そんなわけで今日のオークションでの戦果は、腕などを欠損した奴隷が5ど体ほだった。
「アルよ、オークションはどうだったか?儂は途中で寝てて、結果を知らんのだが……。」
「父上、申し訳ございません。いい奴隷は買うことができず……とりあえず適当に買いました。」
「そうかそうか、まあ気にするでない。そんなときくらい、たまにはあるものじゃ!」
商品を受け取り、馬車で屋敷に帰る。
今回はいい買い物ができたな。
奴隷を教育するのが楽しみだ!
特に最初に買った狼獣人はとてもいい。若く、そして戦士としての素質を感じる。
きっとこいつなら、ピラに負けないくらい優秀な奴隷になる!俺は確信していた。
馬車に揺られながら、奴隷の訓練内容を考えた。
ああ、屋敷につくのが待ち遠しい!