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自己強化の極み




 俺は今、精神を鍛えようとしている。


 ピラを買ってから、精神的に虚弱になっている気がするからだ。というか、確実に弱くなっている。

 前世の俺なら、ピラにちょっと拒否されただけで泣くなんてありえないはずだ。


 精神力は、この世界では間違いなく必要だ。

 なぜなら魔眼は精神的な衝突で勝つと、相手を操れるらしいからだ。最近思い出した。


 そうだ。俺は精神力がピラにすら負けている。

 だから魔眼でもピラの心を読めないのだろう。


 そうとなれば、早速修行だ!

 俺は最初にクグチョに聞いてみた。


「精神修行の方法……ですか。そうですね……経験を積めば、自ずと精神は強くなると思います。」


 当たり前のことだった。

 うーん……経験……。経験値……?


「……そうだ!クグチョ、私は魔物と戦いたい!」


「危険ですので、おやめください。たとえご子息様がご自身でゴーレムを操縦できても、です。」


 やっぱりだめだった。しかもゴーレムのことがバレている。あの兵士共、チクりやがったな?


 となると、他にいい手はないものか。


 ……いや、あるじゃないか。1つ、いい手が!

 胎児の頃やっていたアレ、瞑想だ。


 俺は早速、自由時間に瞑想をした。


 ……。


 ……瞑想して、精神って鍛えられるのか?

 瞑想じゃなくって迷走している気分だ。


 だが、己を信じなければならない。

 己を信じることこそが、精神が強くなれる方法かもしれない。絶対そうだと、信じたい。


 ……落ち着かないな。胎盤の中では、とても安らいでいれたのに……とても落ち着かない。


 ……あ!魔道具のアイデアが思い浮かんだ!

 こうしちゃいられない、すぐ作るぞ!




 ……って、ちゃうわアホ!

 なんで瞑想やめてんねん!本格的に迷走しとりますやん!俺は関西弁の漫才師か!


 まずい、今猛烈に錯乱している。

 鑑定したら【状態/混乱(弱)】だった。


 精神が安定するハーブ吸うか?ヤバい薬にしか見えないが、一応まともなハーブだ。


【植物/ロックフラワー


灰色の硬い花。常にうねうね動いていて、コツンコツンと他のロックフラワーに当たって音を出す。

煎じて摂取すると鎮静や発汗作用、一時的な防御力の増加などが見込める。生食は危険。】


 いや、ハーブに頼るのもなんかなぁ……。


 ハーブ……そうだ、ゲームなんかではハーブや種で永続強化とかできたけど、この世界にはそういったドーピング植物はあるのだろうか?


 一応図鑑を見て、探してみるか。


【書物/ハーブ大全


主に有名なハーブを紹介している本。

香り、風味、効能など細かく書かれている。】




 ……ふむふむ。


 結論から言うと、ドーピング種みたいなステータスを直接強化するハーブは書いてなかった。


 しかし栄養素がたっぷりなハーブや、俺の求めていた精神力をバフするハーブはあった。

 家にはなかったので、買ってきてもらった。


【植物/シャープクロー・オリーブ


きれいな葉っぱの内側に、鋭い棘が生えている木。

葉に隠れた果実は良質なオイルが絞れて、果実そのものもとても健康に良い。

知恵と富の象徴でもある。】


 これは木を取り寄せて、庭に植えた。

 うちの庭師にはいつも世話になっている。


【植物/ホーリーマザーハーブ


傘のような見た目の白い花。りんごの香りがする。

煎じて飲むと疲労回復や苦痛の軽減、一時的な精神力の増加が見込める。

光剣の勇者に付き添った聖女は、この花で作った茶を愛飲していた。】


 これは素晴らしい。栽培がしやすく、香りも書いてあるとおりにりんご風で美味しい。

 当然種も買って、庭に植えた。


「おい、ピ……じゃなくって!なんでもない!」


 ピラに頼むのではなく、自分で茶を淹れてみた。


 ……微妙だ。スキルの差はないはずなのに、どうしてこうも風味が落ちるのか。


 結局ピラに頼むと、美味しい茶になった。

 ピラにあれこれ頼みすぎたせいか、自分で何かをする力が衰えている気がする。


 これが精神力の衰退した結果なのだろうか。

 今思えば、俺は茶の淹れ方なんて知らない。


 ……いや、待てよ?俺が弱くなったのではなく、そもそもピラが高スペックな気がしてきた。

 あいつ、何でもできるし……。


【奴隷/ピィラム

種族/半巨人

状態/平常


火の巨人と人間のハーフな少女。

アルベルトフォンスから成長するように命令されたので、スキルのレベル上げに勤しんでいる。


スキル/火魔法(中の下)/剣術(中の下)

隠密(中の下)/雑務(中の下)/雑学(中の下)

素手格闘術(下の上)/土魔法(下の中)

鑑定(下の下)/精神攻撃耐性(下の下)


アンコモンスキル/身体炎上


ユニークスキル/急速回復/効率的な作業】


 成長しすぎだろ!習得が困難なLV4(中の下)のスキルが、なんで5個もあるんだ!

 しかも精神攻撃耐性と鑑定、それに新しいアンコモンスキルまで獲得していた。


【アンコモンスキル/身体炎上


火の精霊や巨人が使うスキル。体に火をまとい、自身の身体能力を向上させることができる。】


 やっぱりこいつのスペックが高すぎるだけだ。

 ピラのステータスと俺のステータスを見比べて、焦りを感じる必要は多分ない。


 ……スキルの差はないと思っていたが、もしかして雑用系スキルは茶を淹れるのにも効果があるのか?


【スキル/雑務


雑用の上位スキル。料理や掃除などの様々な雑務をより上手く行うことができる。】


 本当に万能だな……。


 しかもピラは今も普通に立っているだけで、一見何も訓練しているようには見えない。

 だが、実は今も隠密スキルを使っていた。スキルを発動したまま維持するのは、本当は大変だ。


 それをピラは常に行っていたから、こんなにスキルレベルが成長しているのだ。

 俺には真似できない鍛え方だ。


 ……俺にはできない?……そうか!わかったぞ!

 俺にできる、究極の自己強化が!


 俺が強くなれないなら、俺の配下を強くすればいいだけじゃないか!富裕層専用のやり方だ。


 そして俺はどっしり構え、圧倒的な外付けカリスマで安定した命令をすればいい。

 これだ、この手に限る。これに加えて自分も地道に強化すれば、どっちが失敗しても問題ない。


 早速親父に相談した。


「父上!新しい奴隷が何体か欲しいです!」


「いいぞ。お前の奴隷は、そのへんの兵士より強いじゃろう?お前には奴隷マスターの才能があるのかもしれんな!儂は応援するぞ!」


 二つ返事だ、ありがたい。


 そんなわけで、10歳の誕生日プレゼントは奴隷を買えることになった。誕生日が待ち遠しい。


 ピラに負けない高スペック奴隷を、3体以上は欲しいが……まあ、期待しすぎずに欲張ろう。




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