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8歳のお披露目会




 俺は何の対策もなしに8歳になった。

 ついにお披露目会の時が来たのだ。


【辺境伯の長男/アルベルトフォンス・ネハンピ

種族/人間

状態/緊張


奴隷の半巨人を異常なほど酷使している。

最近お気に入りの枕がないと眠れない。


スキル/鑑定(上の下)/魔道具作成(中の下)

剣術(下の上)/土魔法(下の下)/栽培(下の下)】


 うーん、落ち着かないな……。

 ピラでも見て落ち着くか……?


【奴隷/ピィラム

種族/半巨人

状態/平常


アルベルトフォンスが昼寝をする時と夜に寝る時、彼の抱き枕にされるので体臭には気を遣っている。

それ以外の時間では常に過酷な労働か修行をしているが、そのことを異常だと思えたことはない。


スキル/火魔法(中の下)/剣術(中の下)

隠密(下の上)/雑務(下の上)/雑学(下の中)

素手格闘術(下の中)/土魔法(下の下)


ユニークスキル/急速回復/効率的な作業】


 ……うーん、相変わらず酷い文章だ。

 ひょっとして鑑定君は俺のことが嫌いなのかな?


【ユニークスキル/効率的な作業


休みを最低限しか取らず、常に自身の限界を超えた作業を行ってきた者のスキル。

能動的に使用することで、半日で24時間分の作業を行うことが出来る。】


 これを使用して日に30時間分の作業という矛盾を解決しているらしい。化け物かな?


 俺が作ってしまったこの悲しきモンスターが、俺を憎んでいない事実にホッとする。

 どうかこのまま能天気であってくれ……!




 俺はパロディネタを言いまくってホームシックになりながら、両親と一緒に馬車に乗る。


「アル、ちゃんと挨拶の順番や仕方は覚えたか?儂を外では父上と呼ぶのだぞ?あと奴隷を持っていくなら、ちゃんと首輪は着けたか?」


「はい、父上。抜かりなく。」


 親父は若干不安がっていた。しかし無理もない。


 実は今回のお披露目会は、殿下が参加するのだ。

 より具体的に言うと、第1王子殿下が同年代の子供に招待状を送ったので、俺達は招かれたのだ。


 主催が王家の長子となるとそれはもう一大事だ、王家はこの国の全てより優先される存在だ。

 機嫌を損ねたら、即日処刑される。


 トップオブ権力だ。




 会場についたが、やはり皆緊張している。

 俺も勿論緊張している。


「皆、よく集まってくれた。私がブブズズ王国王家第1王子のハルトハルト・ケウオだ。」


 金髪のイケメンが爽やかに、力強く挨拶する。


 男子も女子も見惚れる爽やかさと威厳だ。

 俺も三十路じゃなかったら憧れていただろう。


【王子/ハルトハルト・ケウオ

種族/人間/王の血を引く者

状態/緊張(弱)


ブブズズ王国の第1王子にして王太子。

高いCHAとMAGを持つ麒麟児。

婚約者のジョレーヌと上手くいっていない。


スキル/剣術(下の上)/指揮(下の中)

光魔法(下の下)/政(下の下)


ユニークスキル/王家の命令】


 スキャンダルが書いてあった。怖っ。


「皆には是非楽しんでいただきたい。乾杯!」


 殿下の挨拶が終わり、ジュースを片手に個別で挨拶をする時間になった。

 俺はまず最初に殿下に挨拶をしに行った。


「お初にお目にかかります。アルベルトフォンス・ネハンピと申します。」


「ネハンピか。親と違って細身なのだな?」


「はい。私は食が細く、剣術の鍛錬をした後でも全く食べ物が喉を通らないもので……。」


 軽く雑談をして、割とそこそこの長さで他の人の挨拶する時間のためにその場を退いた。


 次は公爵家と侯爵家(どっちもこうしゃくけ)に挨拶をした。

 これで格上には挨拶し終えたので、今度は逆に挨拶され待ちになった。


「ご、ご機嫌麗しゅうございます、わ、私は……えっと、ま、マリア……」


 しかし男子も女子もバリバリに緊張していた。


 ご機嫌麗しゅうは別れの挨拶だし、ございますは要らないしで初っ端から滅茶苦茶だった。


 俺だって日本にいた頃は礼儀作法とか文法とか、全く分からないし知るか馬鹿と思った。


 しかしそれが許されたのは、そこが日本だったからだ。そしてここは貴族の社交場で、公の場だ。


 マナーのなっていない挨拶を俺にするのは、公的に俺を無礼ているのと同意義だ。

 わざとだとしたら、一族郎党皆殺しだ。


 しかし本当に挨拶を知らない者なのかもしれないし、挨拶の仕方を渋々教えてやることにした。


「君は……ああ、イッパシ家の子だったね?」


「っ!!わ、私をご存知でしたか……?」


「君が挨拶出来てないからね。私が代わりに挨拶をしてあげよう……よーく聞き給えよ。

『お初にお目にかかります、私はマリアン・イッパシと申しますわ。』

『……はい。趣味はお友達とのおままごとでして、あちらのミリアーナ様と仲良くさせていただいていますの。』

『……はい。ネハンピ様の御口に合うかは分かりませんが、ホトホ領の名産茶葉をお持ち致しましたの。是非お楽しみくださいませ。』

『……まあ、もうこんなお時間ですわ。』

『はい、ご機嫌麗しゅう。』……どうかな?」


 完璧な挨拶を見せてやる。相槌は適当だが、俺が仮に話していたらこういう流れだっただろう。


 格上の貴族相手に渡す用の手土産も合っているはずだ。鑑定では見えないが、俺には分かる。


 無言だが、感動して涙でも流しているかな?


 ……何故か顔が青ざめていた。失礼な奴だ。


「……何故恐怖している、マリアン?折角のお披露目会だろう……。ほら、笑え笑え……。」


「ッ……!!ぃ……っ!!」


 俺がちょっとイラっとしながら宥めようとしていたら、見かねた親御さんが助けに来た。


「ね、ネハンピ様!私の娘が御無礼を働いてしまい、誠に申し訳ございません!この無礼は必ず償わせますので、何卒お許し下さい!」


 貴族なのに頭まで下げて、余程娘を大事にしているのだと伝わってくる。頭の下げ方もさり気なく、周りの注目を集めない下げ方だ。


「娘の躾はしっかりしなきゃな?ボコウノン男爵。今回は貴公の誠意に免じて許してやろう。」


 何とか場は上手く収まった。

 挨拶の順番待ちしていた男爵子息も青ざめていたが、まあ無視してやるだけで済ませておいた。


 さて、格下との挨拶が終わったら次は同格だ。

 こっちはちゃんと会話出来た。


 相手が萎縮しないのは本当に助かる。


「君も大変だったろう、特に男爵達は緊張で挨拶を間違えなかった者はいないくらい酷かった。」


「え?俺の方ではそんなことなかったけど……。」


 あれぇ?おかしいな……。


「……なら私相手の時だけ緊張していたとでも?……それはおかしい、緊張する理由がない。」


「いや、威圧感があるからだと思うよ?声も振る舞いもかなり堂々とているし、目も怖いし。」


 ……兎も角!8歳のお披露目会は『何事もなく』無事に終えることが出来た。

 友人も出来たと思うし、十分な結果だろう。


 それと、俺に威圧感はないと思う。

 ないない。絶対無いね。威圧感なんて。




「ご主人様に威圧感を感じたか、ですか?……はい。ご主人様の眼はまるで私の全てを見通しているかのようで、7歳の頃の私はその眼差しだけで殺されてしまうのかと愚考してしまいました。」


 嘘だと言ってよ、ピラぁ……。




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