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7歳児へのプレゼント




 俺が7歳になった、その日。


【辺境伯の長男/アルベルトフォンス・ネハンピ

種族/人間

状態/多幸感


魔道具とゴーレムをこよなく愛する貴族。

本の虫だが、実は本が好きなわけではない。


スキル/鑑定(上の下)/魔道具作成(下の上)

剣術(下の上)/土魔法(下の下)】


 何でかは知らないが、超スピードで成長した。

 特に鑑定は凄い。上レベルにようやくなれた達成感で、しばらく放心してしまったくらいだ。


 ……いかん!まだちょっと放心してるな。


【スキル/鑑定(上の下)


対象を問わず、鑑定することが出来る。


サブスキル/言語理解/鑑定妨害】


 念願の鑑定妨害を手に入れたぞ!

 スキルの鑑定結果からサブスキルを見れる成長が、これ以上なく嬉しく感じた瞬間だ。


【スキル/魔道具作成(下の上)


魔道具を手際よく作成出来る。】


 残念ながら鑑定以外にサブスキルを習得したスキルは無かったが、落ち込みはしなかった。




「7歳おめでとう、アル!」


 部屋から出ると、親父が早速祝いに来た。

 普段はあまり会わない母も一緒だった。


「お前が7歳になったからには、お前はスキルを習得したはずだ!鑑定士は既に呼んである、早速お前の成長を見に行くぞい!」


 親父が俺を引っ張って、鑑定士の前に連れて行った。俺は、鑑定士を逆に鑑定してやった。


【鑑定士/アーケスッケ

種族/人間

状態/平常


長年貴族の子供を鑑定してきた、LV5鑑定士。

人間観察が趣味だったが、歳を取って丸くなった。


スキル/人物鑑定(中の中)/説得力(下の中)

雑学知識(下の下)/水魔法(下の下)】


 スキルレベル……たったの5か……ゴミめ……!

 何となく、心の中で言ってみたかった。


「お前のいい評判は聞いているぞ、鑑定士。今日は儂の息子の鑑定を頼む。」


「はい、今から鑑定しますからね。失礼します。」


 俺を見て、紙に文字を書く。

 多分、鑑定結果を書き写しているのだろう。


「お父様……スキルが無かったらと思うと、なんだか不安な気持ちです。」


「なあに!アル、お前なら剣術スキルを持っているはずだ!LV1かLV2か、気になるのう!」


 その反応を見て、俺は安心した。

 他の7歳を見たことがないから、スキルレベルが何の位あるのが普通か分からなかったのだ。


 なので、鑑定結果はこれだ。


【辺境伯家長男LV1(MAX)/

アルベルトフォンス・ネハンピ

7歳/男性/カナイリナカ領所属

種族/人間


魔道具をこよなく愛する少年。

最近ハーブ栽培を勉強している。


STR5/DEX5/END5

CHA6/INT12/MEN7/MAG6


スキル/剣術LV3】


 スキルを剣術以外非表示にしただけで、それ以外は一切弄っていない。


「おお!もう剣術LV3なのか!素晴らしい!」


「私は今まで10年以上、7歳のお子様を鑑定しましたがこれ程高いINTはなかなか居ませんよ!」


 凄いステータスらしい。元三十路のINTを、バッチリ引き継いでいるので天才児扱いだ。


 長男LV1(MAX)は無視されているので、上限レベルが常に1のものなんだろう。

 長男のレベルってなんなんだ……?


 しかし今の鑑定士の言葉を聞いて、長男LVよりも気になったことがあるので質問してみた。


「なかなか居ない、ということは他にINTがこれくらいの子供も居たのか?」


「はい!7歳でINTが12ある方は、今まで6人位鑑定しましたね。私は1000人以上鑑定したことがあるので、割合的に1%未満の才能ですよ!」


 意外と居た。だが、親父はより一層上機嫌になっていた。母と手を取って踊っている。


「グハハハハ!シンセ、儂の息子は天才だぞ!」


「オホホホホ!素晴らしいですわ、貴方様!」


 ……あまり元三十路に期待しないで欲しい。


 俺は神童とか天才がとても嫌いだ。

 十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人、っていう諺もあるしな。


「お父様、あまり喜ばれても困ります。私は、天才という存在が……えっと、天才と呼ばれても!」


 衝動的に言いかけて、子供は天才が嫌いとか普通は言わないだろうと踏み止まる。


「何っ?お前は、これでも足りないと思っているのだな!アル、儂は感動したぞ!」


 およよ、と擬音語が付きそうな泣き方をしながら俺の肩をバンバン叩く親父。

 親父の認識では、俺は意識高い系男子らしい。


「少し早いが、お前のお披露目会をするぞ!」


「お披露目会、ですか?」


「うむ!お前は立派な子だ、8歳になる前にお披露目会をしても何の問題もあるまい!」


 いや、お披露目会って何だと聞きたいんだけど?

 しかし親父はいそいそと行ってしまった。


「アル、お披露目会については私が説明しますわ!お披露目会は、子供が死ぬことなく立派に育ったことを他の貴族方に知らせる会ですわ!」


 母が突然解説したので、びっくりした。


 聞くと、どうやらお披露目会は貴族の子供同士で交友関係を広めることが主題らしい。


「お母様!それでは私は、7歳なのに8歳の子供に混ざってお披露目会をするのですか!?」


「……あらほんと!貴方様ー!お待ちになってー!」


 流石にお披露目会は、8歳ですることになった。


 13歳になったら入学するパブリックスクールで、同年代の友人が居ないのは流石に不便だ。


 ……まあ、それはともかくとしても。

 お披露目会の対策をしなきゃな……。


 元三十路が、8歳児に混ざれるわけがない。

 8歳らしい振る舞いを、覚えなければな。




 俺が8歳らしい振る舞いをシミュレートしていたある日、親父が俺を呼び出した。


「はい、お父様。ご要件をお伝え下さい。」


「アル、お前は剣術がLV3だったろう?頑張った褒美にプレゼントを買ってやろう!王都に行くぞ!」


「はい、お父様。私は本が欲しいです。」


「フフフ!本よりもいい物を買ってやる、それが何かは王都に着いてから教えてやろう!」


 俺は親父と一緒に、王都に行った。

 2度目の来訪で来た店は、小綺麗な場所だった。


「お父様、ここは何のお店ですか?」


「聞いて驚け、奴隷販売店だ!お前に奴隷を買い与えてやろうと思ってな、どうだ嬉しいか?」


 親父が満面の笑みで言った。

 ……いや、子供に買い与えるものじゃないだろ!

 犬や猫扱いなのか、この世界の奴隷は!?


「あー、そのー……いろいろと、よろしいので?」


「何も問題はない!奴隷は凡夫には高いが、儂ら辺境伯からしたら端金よ!それにこの奴隷販売店は、信用のある老舗じゃ!儂も、子供の頃ここで獣人を買ってもらった思い出があってな。」


「そうでしたか。どんな獣人でしたか?」


「うむ。勇敢な雄じゃった。奴は、戦場で散った。使える獣人故、その時は儂の采配ミスを恨んだものじゃよ。今も勿体なかったと思う。」


 しみじみと昔を思い出す親父。

 獣人を失ったことよりも、どうやら自分の采配ミスの方が気になるらしい。


「あの時はな……雨が降っていたのだから……。」


 老人の昔話は、早めに止めないと長い。


「お父様!よく分かりました!私も、よく使えるいい奴隷が欲しくなってきました!」


「それでこそ、儂の息子じゃ!では、実物を見に行くぞ!……店員、案内をしろ!」


 親父がそう言って店員を呼ぶ。

 鑑定してみたら、店員さんは子爵だった。


 貴族が店員をしているのか……。

 老舗は伊達じゃなかった。


「いらっしゃいませ、辺境伯閣下。……7歳のご子息様への、誕生日プレゼントですね?それでは、キッズコーナーへご案内させていただきます。」


「……き、キッズコーナー?」


「はい。キッズコーナーには、7歳になってスキルを覚えた奴隷が置かれています。ご子息様に長く仕える奴隷を提供致します。」


 キッズはキッズでも、商品がキッズだった。


「……7歳未満は売っているのか?」


「大変申し訳ございません。7歳未満の奴隷は、法律により販売が禁止されております。ご理解とご協力をお願いします。」


 7歳未満の奴隷は商品価値が未確定であるため、問題が起こらないように販売禁止なのだとか。


「……おすすめの奴隷はどれだ?」


「そうですね……あちらの雄の獣人は如何でしょう?剣術スキルを習得しており、STRも9とかなりの高ステータスを持っています。」


 鑑定してみたら、剣術しか持っていなかった。


「剣術以外のスキルがいい。便利なスキルを持った奴隷は居るか?」


「それでしたら、あちらの奴隷は如何でしょう。」


 紹介された奴隷はどれもいまいちピンとこない。

 半分が獣人で、残りはエルフか人間だった。


 折角だから、他の種族が見てみたいんだけどね。


 なのでおすすめ以外の奴隷を鑑定していたら、ちょっと面白そうな奴隷が居た。

 蹲っているが、それでも大きい体格だ。


【奴隷/ピィラム

種族/半巨人

状態/警戒


火の巨人に襲われた冒険者の、望まれぬ子供。

生まれた直後に、奴隷販売店へ売られた。


スキル/火魔法(下の下)】


「あの奴隷に興味があるのだが、何故私に紹介しなかったのだ?」


 10歳未満なのに火の魔法を持っているし、何でおすすめしなかったのか。レアそうな種族だし。

 気になって理由を店員に聞こうとしたら、親父が笑いながら俺の肩を叩いた。


「アル、女に興味があるのか!そこまで早熟だと、儂は少し心配だぞ!だが、買ってやる!」


 何で距離が離れた所にあるのかも気になっていたが、ピィラムが女性だからだったのか。

 確かによく見てみると、向こう側に少女が居てこっち側は少年しか居なかった。


「お、お父様!いえ、私はそんなつもりでは!」


「遠慮するな!店員、あの半巨人の雌を買うぞ!」


「お買い上げ、ありがとうございます。」


 トントン拍子で買われてしまった。


 半巨人以外に面白そうな種族は見当たらなかったので、仕方ないから問題ないことにした。


 それに。親父の前では否定したが、女奴隷にちょっと興味があるのは男の悲しいサガだった。


 俺が助平なわけではないと言いたいが、それを否定する材料は全くなかった。




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