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俺の、癒やしの魔道具




 6歳になった。剣術が下の中になった。

 スキルをレベルアップさせるよりも、スキルを習得する方が難易度が高いらしい。


 今思えば、鑑定はあっという間に中の上になってたからな。そういうものなんだろう。


 そんなわけで、俺はクグチョと剣を振る訓練をしていた。しんどいけど、少し爽やかな気分だ。


「ご子息様は筋がいいですね。剣術LV2位ならば、既に習得されていそうです。」


 流石新米兵士を常日頃から訓練させているだけあって、俺がLV2だと直ぐに気づいた。


 実は俺がLV2に成れた理由は、筋がいいからではない。泥ん子を遠征させているおかげだ。


 たまに中継機が紛失して動かなくなるが、泥ん子は剣術を実戦で試すのにうってつけだ。

 俺の動きをトレースさせて、ゴブリンをボコボコにボコす訓練は一石何鳥か分からない程良い。


「いや、私の才能ではない。剣の道の知識と教養、そして何より貴公の指導の賜物だ。」


 ゴブリンをボコしていることは一応隠して、謙虚っぽいことでも言っておく。


「その心構えこそ、ご子息様の才能です。並の6歳は、謙虚ではいられません。」


「では、図に乗っておこうか?……やいクグチョ!俺と勝負だ!勿論俺が勝つ!」


「ブフッ!……失礼。ええ、一度は人相手に剣を振ってみることも良い経験だと思います。ではご子息様、何処からでもどうぞ。」


 わざとらしく図に乗った俺に、クグチョが笑う。


 笑いを堪え何時もの調子を取り戻してから、クグチョが剣を抜いた。……マジでやるの?


 目の前に真剣を握った騎士が居ることに、今まで感じたことのない緊張を感じた。

 ゴブリンと戦った経験がなければ、今頃ちびって腰を抜かしていただろう。


「でぁああああっ!」


 剣を振るう。畜生しかボコしたことしかない、粗末な振り方だった。当然、防がれた。


「……私と対峙しても立ち続け、剣を振るうことにも一切躊躇がない。6歳とは思えませんね。」


「すまないが、これが私の全力だ。これ以上なく、私は全力だったさ。6歳相応だよ。」


「そうですか。……では、今日はここまでです。次回からは、本格的な剣術の指導を開始します。」


 その日から俺の訓練は厳しくなった。

 剣を振って敵を叩くための訓練、マジ辛い。


 剣をにぎにぎしてた頃の爽やかさを返してくれ。




 そんな俺の癒やしは、魔道具だけだった。


【魔道具/ゴブリンズ・ソウル


ゴブリンの魔石を繋いで作られた、冒涜的な魔石。

この魔石は、自動でマナを回復する。

名前や作成方法に反して、時々ゴブリンの苦しむような鳴き声が聞こえること以外は無害。】


 書かれていることがヤバい魔道具だが、これのおかげで俺は魔道具を使いたい放題になった。


 ゴブリンの魔石を30個も使った甲斐がある。

 回復速度は遅いが、優秀な魔道具だ。


「ゴブゥ……ゴボボ……ゴバッ……ゴブ……。」


 地味に五月蝿いが、マナが切れると静かになる。

 なので普段は魔石充填器に装填している。


【魔道具/魔石充填器


魔石を装填した状態で魔石を箱の中に入れると、マナを移動させることが出来る。】


 この魔道具も俺が開発した。

 やはり魔道具は癒やしだ、理想が形になる。


【魔道具/卓上喧嘩舞台キット


魔石を入れた人形をセットすると、人形同士で戦わせることが出来る魔道具。

人形の知能は低く、基本的には殴り合うだけ。】


 これも開発には苦労したが、脳ある魔道具という本を参考に作ったらなんとか形になった。


 魔道具開発は困難だが、俺には頼もしい本や身近なサンプル、鑑定スキルなどがある。

 魔道具開発が、とてもイージーモードだ。




 

 数ヶ月経ったある日。


「団長閣下、森の件についてですが……。」


「魔物の不審死についてだな?少し待て。」


 クグチョの元に、ある報告が上がった。

 やべぇ、十中八九俺が犯人のやつだ!


「ご子息様。大変申し訳ございませんが、本日の剣術は中断させていただきます。お許し下さい。」


「あ、ああ。構わんよ、行き給え。」


 しばらく森に泥ん子を向かわせられないな。

 うーん、そうなると暇な時間が増えるな……。


 俺は日課が減って、ちょっと持て余した気分になっていた。ゴブリンをボコることには慣れたし、何も問題無いと言えばそうなんだけどね。


 魔石もゴブリンズ・ソウルがあるから十分だし。


 ……よし!本格的に自立型ゴーレム作るか!

 俺は早速、自分の秘密工房へと向かった。


 秘密工房は、俺のお小遣いで買った魔道具作成用の器具が安置されている場所だ。

 この工房の存在は秘密なので、入り口に偽装用の魔道具を置いてある。


【魔道具/カモフラージュ・カーテン


使用すると近くに設置したペンキを消費して、使用者の望んだ柄に変化するカーテン。

好きな柄に変化する能力の維持にマナは必要なく、一度適用されると魔法として扱われない。】


 魔法として扱われない、というのは解呪の魔法や探知の魔法に無視されるという意味だ。


 それだけ聞くと凄そうだが、この魔道具はただ単にペンキを使って染色しているだけだ。

 魔法の効果で色を変えているわけではないので、魔法の現象として扱われないのだ。


 そうじゃなければ、ゴーレムで建築した家に解呪が有効じゃないとおかしい。


 さてと……俺は魔道具を開発する時、まず最初に図面を描く。子供の落書きレベルの図面だ。


 しかしこの図面にも意味がある。描くことによって、俺のイメージがしっかりするのだ。

 イメージは大事だ、特にファンタジーでは。


 次に、図面に合わせた魔法陣を書く。

 本で見た魔法陣を、コピペしまくって練習したら俺でも魔法陣を書けるようになっていた。


 文字を書いて、その文字に接続詞をつける。

 その後ろに文字を書いて、また接続詞を書く。


 その文章の役割が終わったら終止符を書き、改行をして新たな文字を書く。


 効率は悪いが、簡単で確実なやり方だった。


 全ての文章が出来上がったら、それを縁取って円形にしてからお洒落な模様を描く。

 ……このお洒落な模様も、必要パーツだ。


 お洒落な模様は言うなれば、ガイドラインだ。

 これがあると、魔法陣を書き間違え難い。


 魔法陣が出来上がったら、魔道具に取り付ける。

 大体は金具で固定すれば問題ない。


 最後に名前をつけて完成だ。


【魔道具/低知能型ゴーレムコア


この魔道具を埋め込まれて作られたゴーレムは、簡易的な自立行動が出来る。

知能は野犬並み。】


 実はこれを作るのに、しれっと1ヶ月かかった。

 かなりの自信作だ。今度ゴーレムを作る機会があったら、是非試してみたい。


 目標は、人並みの知能を持った巨大ゴーレムだ。

 夢は大きく、されど歩幅は小さく頑張ろう!




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