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魔道具開発と、その成果




 魔道具開発が最近楽しい。


【魔道具/自走式地雷粘土


粘土に魔石を埋め込んで作られた地雷。

一定範囲内で生成されたマギカに、飛びかかって自爆する危険物。】


 これは魔法を使おうとすると爆発する、つまり魔術師対策の兵器だ。

 使う予定はまだ無いが、こういう変な魔道具を作っているだけでも楽しかった。


 ……庭に焦げ跡が出来たが、仕方ない。

 庭師が泣いていたが、必要な犠牲だった。


【魔道具/即席兵士・泥ん子


泥にこの魔道具を埋めると、簡素な泥のゴーレムを作ることが出来る。

操作可能範囲は狭く、耐久度は低い。】


 こっちは一般的なゴーレム生成の呪文を参考に、出来る範囲で作った魔道具だ。

 この世界ではゴーレムは自立駆動させるのではなく、手動操作する方が一般的らしい。


 普通のゴーレムは3マイル程離れていても操作出来るが、この泥ん子は2ヤードしか動かせない。

 ヤード・ポンド法は異世界の単位だったらしい、というのは置いておくにして。

 メートル換算で4.8㎞と1.8m程の差がある。


 そんな短すぎる射程の解決手段が、これだ。


【魔道具/ワイヤレスコントローラー


受信機を装着した魔道具を遠隔操作出来る。

壁が間に存在する場合、使用不可能になる。】


【魔道具/マナ遠隔操作中継機


魔道具ワイヤレスコントローラーの遠隔操作可能範囲を、拡張させることが出来る。

別のマナ遠隔操作中継機を中継して、遠隔操作可能範囲を更に広げることも出来る。】


 この魔道具組み合わせで、俺は泥ん子の射程を実質的に無限にすることに成功した。

 ……中継機が増えるとロスも増えるので、消費マナと操作の遅延が大変なことになるけどね。


 ゴーレムはマナを供給させている限り、その視界や一部感覚を供給者に伝えることが出来る。

 このゴーレムに備わっている共通の機能を利用して、俺はちょっとした冒険をしてみたのだ。




 今俺の目の前には森が広がっている。


 勿論、俺はまだ屋敷の中に居る。

 この光景は、泥ん子が見ている景色だ。


 ふむふむ、鑑定は使えないらしい。

 鑑定したい物の内、持ち帰れる物は持ち帰ろう。


 森にはいろんなものがあった。


 謎の植物や、見たことのない石。

 そして、魔物。


 緑色で如何にもゴブリンって見た目の子供が、棍棒を振り回して泥ん子に襲いかかってきた。


「……!……!」


 ザーザーとノイズがかかって何を言っているかは分からないが、多分意味のない雄叫びだろう。


 しかし、俺の泥ん子を傷つけるなんて許せん!

 行け、泥ん子!戦え!


 リモコンをガチャガチャして泥ん子を操る。

 まず最初にお披露目するのは、お手性の剣だ!


【魔道具/簡易魔剣


製作者が魔道具だと言い張ることで、魔道具作成のスキルを転用して作られた剣。

性能は劣悪だが、非常に安価。】


 泥ん子が剣で推定ゴブリンを殴り、流血させる。


 うぇ、グ、グロテスクだ……。

 何か黄色いのが傷口から見えてるし……!


 ええい!怯むな俺!推定ゴブリンは怯んでるだろ!

 だったらやることは一つ、追撃だ!




 ……俺は何度も何度も剣で殴った。


 ゴブリンは泣き喚きながら逃げようとしたが、泥ん子がマウントポジションを取ったので、ゴブリンの筋力では逃げられなかった。


 そして気づいた頃には、ゴブリンの鼻はへし折れ顎がズレている汚い死体の完成だ。


 俺はめっちゃ沢山汗をかいた。運動もしていないのに、かなり息切れした。


 暴力って、振るう方も怖いもんなんだな。


 だが俺はラッキーだったと考えた。

 俺は親父の仕事を踏まえると、絶対に将来的には前線で暴力を振るうことになる。


 だったらよぉ!リモート操作でさぁ!

 ゴブ畜生で暴力に慣れたのお得じゃね!?


 きっとそうだ、絶対そうだ。

 今日はもう疲れた、寝る。




 泥のように眠って、翌朝。

 昨日昼前に寝たせいで、剣術の修行をサボってしまっていたことを思い出した。


 クグチョは怒っているだろうかと不安だったが、しかしクグチョは怒らなかった。


「ご子息様、本日も散歩致しましょう。」


「……ああ。分かった」


 今日もクグチョと散歩した。


「……剣術とは、ただ単純に剣を振る術ではありません。敵に立ち向かうための術でもあります。人は武器を持った敵に近寄ることに恐怖しますから、その恐怖に抗うための杖でもあるのです。」


「確かにそうだな……。」


 棍棒を振り回すゴブリンには、目の前に居ないと知っていても少し後退ってしまった。


「……ご子息様は、本気の喧嘩などをなさったことがありますか?」


「え?いや、あー。喧嘩は、したことがないな。」


「そうでしたか、失礼しました。」


 それから黙々と歩く。

 人と話したからだろうか。昨日のショックからは早々に立ち直り、普通に散歩を終えた。


「ご子息様、そろそろ剣を握ってみますか?」


「ああ。……この木刀を持つのか?」


 渡された木刀を握り、持ち上げる。

 持ち上げることに苦労はしなかったが、腕にずっしりとした重みがじんわりと伝わる。


 ものの数分で、俺は剣を下ろした。


 俺は剣術スキルの下の下を持っていたが、実際に剣を持つのは初めてだった。


「これが武器の重みです。ご子息様は散歩をしていたため数分持てましたが、普通の子供ならば持ち上れても直ぐに下ろしてしまうものです。」


「つまり、修行の成果は出ていた。と?」


 クグチョがゆっくり頷く。


 それからしばらくは、剣を持つ日と散歩をする日で交互に修行した。

 俺がたった数日で剣をちゃんと握れるようになった時は、クグチョも驚いていた。


 不思議そうにするクグチョに剣の道を読ませてみたら、なるほどと呟き納得した。

 剣の道は全世界の剣士に読ませたくなる本だと、クグチョは言った。


 あの本屋、凄い本を置いてたんだな……。




 剣を握って数カ月後。


【辺境伯の長男/アルベルトフォンス・ネハンピ

種族/人間


鑑定妨害を習得しようとしている。

魔道具が好きで、研究のためなら庭を破壊する。


スキル/鑑定(中の上)/魔道具作成(下の中)

剣術(下の下)/土魔法(下の下)】


 剣術以外が順調に育っていた。

 庭は、まあ……うん。必要な犠牲だった。


 庭破壊のおかげで土魔法が手に入ったし……。


 俺は庭を破壊したその日、大きめのゴーレムを作ろうとしていた。何故か、庭で。


 まず最初に、作った魔道具を地面に半分埋めた。


【魔道具/ニコイチ魔石


厳選された魔石を使って作られた、歪な魔石。

使用するとマナを燃焼し、マギカを放出する。】


「魔石よ!我に呼応せよ!大地を塗り替え、我が叡智を示すが良い!オート・マジックサークル!」


 ニコイチ魔石にオリジナル魔法を唱える。

 すると、地面がボコボコと唸りを上げる。


 この魔法は、魔法陣を書くだけの魔法だ。


「魔法陣、起動!オート・マジックサークル!」


 しかし。魔法陣で魔法陣を書けば、通常では書くことの出来ない大魔法陣が書ける。


 何回も何回も、魔法陣を大きくする。


「魔法陣、起動!……星の命を拓け!深淵より出でよ!我が下僕!アニメイト・ゴーレム!」


 これも俺のオリジナル魔法だ。

 通常の呪文は、こんなに物々しくない。


 魔法陣を中心に地面が抉れて、巨人が現れる。

 ……予想よりも、かなり大きい。


 地面に体の半分が埋まっているが、掘り起こしたらきっと10メートルはあるだろう。

 俺は3メートルくらいを予想していたのに。


「は、はわわ!何じゃ、この巨人は!」


 岩盤や鉱石を身に纏った俺の巨大ゴーレムに、庭師も度肝を抜かれていた。


「に、庭師!死にたくなければ、黙れ!」


「……っ!」コクコクコクッ!


 無言で頷く庭師。ちょっと憐れだった。

 仕方なく、ゴーレムを元に戻す。


「……庭が凸凹だが、誤魔化せるか?」


「ええはい勿論出来ます誤魔化します!はい!」


 庭師は頑張って庭を元通りにしてくれた。

 これが、貴族の配下に生まれた者の悲哀か……。


 そんな事件の直後に、土魔法を入手したのだ。

 オート・マジックサークルとアニメイト・ゴーレムは、土魔法扱いだとその時知った。


 ……まあ、とりあえず。ゴーレムは、庭以外で作ろう!地面が大変なことになるぞ!


 それに。ゴーレムの消し方が『額の文字を消す』だった場合で、俺が死なないサイズがいい。

 じゃないといろいろ面倒だ。


 俺は10メートル級巨大ゴーレムを諦めてないが、初心者の内にやることではないと思った。

 何れは作りたいけどね。




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